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「休憩をしようか」

「あ、はい…。集中できなくてごめんなさい…」

この一ヶ月ずっとこの調子だったんだろう。
イディは項垂れた状態で父上に謝った。

「来なさい」

父上に呼ばれてすぐ側に行ってようやくイディに私の存在を気がついて貰えた。

「なんでホロが…授業の時間の筈じゃ…」

「イディと同じでずっと授業に集中できなかったんだ」

話しながら私はイディの隣に腰を下ろした。
イディは私から離れようとしたが、腕を捕まえて離れられないようにした。

私に怪我をさせるのが嫌なようで、振り解く事もなく大人しく椅子に座り直してくれた。

「二人で話し合っておいで。終わったら精霊で知らせてくれ」

気を遣ってくれた父上が大図書館から出て行った。
二人きりは気まずいのかイディは私の方を向いてくれない。

「一ヶ月程時間は空いてしまったが、考えは少しでも整理できたか?」

私の質問には中々答えてくれない。
無理矢理聞きたくもないから、イディの腕を捕まえたままの状態で私は何も話さずに隣でいる事にした。

父上が出てから体感一時間程経過した。
イディは全く話さず、私にも顔を向けてくれない。

逃がさないようにと思って腕を掴んでいたが、そろそろ腕が限界で手を離しそうだ。

「…ホロ」

「どうした?」

なるべく優しく、イディに負担を感じないよう努めた。

「ずっと、ずっと考えたけど…やっぱり…」

次の言葉を紡ごうとしたのだろうが、怖いのだろうか何度も口を開いては閉じてを繰り返していた。
イディが話してくれるのを待った。

「やっぱり、僕は…イディと、血の番になりたい…」

一人で考えた結果なんだろう。
ずっと一人で悩んで悩んだ結果イディは答えを出してくれていた。

私と血の番になりたいその気持ちは、気持ちが全く変わっていないから私に話すのが難しかったんだろう。
話し終えてからイディはぎゅっと目を瞑って私の返事を待っている。

「イディ話してくれてありがとう。私と血の番になりたい気持ちは変わらないんだね」

怖がりながらもイディは小さく頷いた。

「それならいいんだ」

ようやくイディが私の方に顔を向けてくれた。
私からの返答が思っていた叱責ではなかった事に驚いたんだろう。

「イディが考えた気持ちを否定する訳がないだろ?イディは私がそんな事をする人だと思うかい?」

「そ、そんな事ないよ!ホロは僕の事を考えてくれるからとっても優しいの!ホロ自身でもホロの悪い事は言っちゃいけない!!」

真剣な眼差しで話してくれるイディ。
そんな姿がどうしようもなく愛おしくて、ぷっと吹き出してしまった。

「な、なんで笑うの!?」

「イディが可愛くて仕方がなかったんだ。どうして私の半身はこんなに愛おしいんだ」

本心からの言葉にイディの顔が真っ赤になった。

「イディ?」

「本当にホロはずるい!!」

イディが大声で叫んで掴まれている腕を振り払い、大図書館から出て行った。

「ははっ!イディも恥ずかしる事があるんだな!!」

笑いが止まらなくなって、私は大図書館から中々でる事ができなかった。
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