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「あの人とは一体誰の事だ。先ほどから婚約の話も濁すようにして、無理矢理決定してしまったではないか。従兄弟であってももう流石に見逃す事はできない」

公爵がため息を吐くだけで、父上の質問に答える素振りを一切見せない。

「ハルト!」

「そう叫ばないでくれ。そう簡単に話せる内容ではないんだ」

「アデライトお前は何か知っているのか」

「そうだね。私が君を選んだのは君に一目惚れしたってのあるけど…もう一つの理由は君の中に存在している人だよ」

私の中にもう一つの存在がいる?
私は精神を支配して母上に憑依した存在だ。

その私よりも上位の存在なんてこの世界では存在しない筈なんだが…

「父上お話してもよろしいかと。今のホロが存在できる期間は長くないのですから、その期間だけでも穏やかに過ごさせないと可哀想ではありませんか」

私が私として存在できなくなる?

「何を言っているんだ。私がいなくなるとでも言いたいのか?」

「そうだよ。ホロの中には魔王の意識が存在しているんだ。魔族にとって魔王とは尊敬に値する存在だから、その魔王がホロの中にいると知って体中が歓喜に打ちし挽かれたよ」

魔王?
私の事を言っているのか?

それならば私は消えるどころかそのまま存在し続けるが?

「世界の破壊を望んでいる訳ではないから、魔王が権限した後は真綿に包んだように優しく、何も知らない無垢な存在として私の婚約者としてい続けてもらう予定だ」

いや、もう魔王はここにいるのだが…。
母上によって魔王としてではなく、ただのエルフとして産み落とされたんだが。

「はぁ…なんだその事か」

父上が指パッチンでこの部屋全体に消音の魔法を結界として展開させた。

「ホロ話てもいいかい?」

「構わない。もう私もこれに隠す気はなくなった」

「ラグザンド急に魔法を使うなんて…、せめて私に一言でも話してくれれば良かったものを」

「申し訳ないが、今から話す内容は一級の国家機密に当たる。例え元王族のお前であっても是が非でも飲んでもらう必要がある手段だ」

「ホロ君についての話なのに国家機密?一体何を今まで隠していたんだ!」

父上が私に目配せをしてきたから話ても良いという意味で頷いた。

「ホロの精神は既に魔王だ。だからアデライト殿が言っている魔王の復活はかなり前に終わっている」

「は?」

父上の発言で公爵がかなり間抜けな表情を晒している。
アデライトの表情を見ればこちらも同じく間抜けな表情をしている。

血の番も私が魔王になれば自動的に消滅するかもからと考えた上で、私とアデライトの婚約の話が強行されたんだろう。
まさか既に魔王が降臨していたとは夢にも思っていなかったのだろう。

「まさか君が…魔王だったのかい?」

「ああ。母上が絶望に陥った時に私が魔王として憑依した。力は母上の中で吸収され既に有していないが、私の精神は魔王そのものだ」

「では君はずっとそのままという事か?」

何も知らない子供の方が操りやすいだろうが、生憎私は私のままで今後も存在し続ける。
そうなればきっと操りにくく…

「そんな良い事があるというのか!?」

は?
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