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「戻ったよ…って何をしているんだ」

父上が部屋に入ってきて見た光景に驚いていた。
現在私はソファの上でアデライトに組み敷かれている状態だ。

婚約者としての話が決まっていて、その婚約者同士がこんな状況であれば父上が驚くのは致し方がないと思う。
私はさっさと上から退いて欲しいんだが。

そんな意味を込めて私はアデライトの腹を蹴っている。
婚約者とか家格が高いとかどうでもいい。

さっさと私の上から退いてほしい。

「アデライト殿息子の上から退いてもらえるかな?」

「おや、伯爵子息の夫君ではありませんか」

アデライトは漸く私の上から退けて、私の前にあるソファに腰掛けた。

「ホロ私から話たい事がある」

父上に起こされながら私はソファに再度座り直した。

「婚約の件だが大凡精霊から話を聞いていると思うが、なかった事や延期にする事ができなかった」

「理由を聞いても?」

「アデライト殿の種族が原因なんだ」

アデライトの種族が?
だがアデライトは見た目では種族的特徴が全く見当たらない。

「アデライト殿は純粋な魔族なんだ。ホロは純粋な魔族と普通の魔族の違いを知っているかい?」

「純粋な魔族と普通の魔族の違い?そもそも純粋な魔族という存在を知らない」

「ホロにも知らないものがあるんだ」

アデライトは横入れを入れるんじゃない。

「普通の魔族は人間族よりも能力値が少し高い程度なんだ。だが純粋な魔族は普通の魔族の三倍以上の能力値を持っているんだ」

あのアデライトが父上がいう純粋な魔族?
だがただ能力値が高いだけでなぜ血の番よりもこの婚約が優先されてしまうんだ。

それどころか血の番の片方である私の意見すらも受け付けない。

「私の様な純粋な魔族は他種族としか交配が行えないんだ」

種族が異ならないと交配ができない?
交配って…母上と父上が私たち子供を作る為にしたあの事か?

「もう一つの理由は単純に君の事が気に入ったからだ」

手の甲にキスをされた時と同じ様にゾワっとした感覚が背筋に走った。
本能が完全にアデライトを拒否している。

「アデライト殿の一考でこうなったが、私の息子を悲しませればどうなるかわかっているだろうな」

「私の婚約者となるのですから、今後は私のホロを悲しませる事はしません。家族になるのですから仲良く致しましょう」

笑顔なのに全く笑っていないアデライトと、同じく笑顔なのに全く笑っていない父上。
その二人が握手を交わしている姿はなんとも言えない光景だ。

「待たせたな。アデライト、ツェーリア侯。そしてツェーリア侯の令息」

リリーシア公爵が部屋に入ってきた。
姿はアデライトをそのまま大きくした様な感じだ。

体ががっちりと逞しく鍛えられており、流石は王国の騎士団長という感じだ。
顔付きはアデライトの胡散臭い感じは全くなく、表情は硬いが整った顔立ちをしている。

「ふむ…母方に似たのだな。それにしても…なぜ、あの人がこの体に入っているんだ?」

あの人?
一体誰の事を指しているんだ?
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