子悪党令息の息子として生まれました

菟圃(うさぎはたけ)

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「それほど弟の事が大切なのか?」

「当たり前だ。イディは私の半身であり、私の最も愛おしい家族だ。そんなイディの事を貶めようとするのであれば、私はお前が死ぬまで呪ってやる」

「ふふ…あはははは!!」

私の発言で急に笑い出すアデライトが不気味すぎる。
呪詛に近い言葉を吐かれたのにも関わらず、アデライトは笑い続けている。

「呪詛は禁忌とされているし、使い方も解明されていないのにどうやって私を呪おうというんだい?」

馬鹿にしたような発言だけど、目は今も光が差してなくて目のせいで全く笑っているように思えない。
こいつは本当に楽しんでいるのか楽しんでいないのか、その差が全く分からないせいで対処すらもか考えつかない。

「でも、君に呪われるのならそれも本望だね。死んでしまうから掛かってあげられないけど」

アデライトの拘束は全く緩む事がなく、未だに拘束を振り解く事ができない。

『ほろ…』

精霊が弱々しい声で私に話かけてきた。
聞いたことのない弱々しい声に、父上に何かがあったのかと不安になった。

今は公爵であってもそれでも元皇族であるから、気分一つで父上に罰を下す事ができるぐらいだ。
その公爵が支持を出せば父上は簡単に捕まってしまう。

そんな嫌な事が頭の中にいっぱいになりかけたが、頭を振って嫌な考えを振り払った。

「精霊に結果を聞けばいい」

私のすぐそばにいる精霊が見えている。
精霊眼を持っていないのに精霊が見えている。

精霊眼を持っていなければ精霊の姿を目で捉える事ができないのに、アデライトは精霊眼を持たずして精霊の姿を捉えられている。

「結果は…?」

震えた声を抑えながら精霊に問いかけた。
精霊が言葉を一瞬詰まらせながらも結果を教えてくれた。

『はきもえんきもだめだった』

吸血鬼の血の番の重要性を公爵が知らない訳がないだろ?
それを上回る何かがあるって事なのか?

「ほらね、私が言った通りだったでしょう?」

アデライトの嬉しそうな声。
私は何も発言をしていなくて精霊しか話していないのに、精霊の声が聞こえているようで精霊が持ち帰った結果を聞いて笑っている。

本当に私の本心は何も考えていない様だ。
少し前の自分本位な私を見ている気がする。

「これで名実共に君と私は婚約者同士だ。婚約破棄は絶対に許されない、それは覚えておくように」

私の拘束があっさりと解かれて、アデライトは私の上から退いた。
漸く圧迫感も無くなって大きく息が吸える。

私よりも頭のおかしいこいつが私の婚約者なんて認めたくない。
こんな奴の婚約者として過ごすぐらいなら、死んだ方がマシだ。

「必ず呪い殺してやる」

恨み言の様に言葉を吐いてもアデライトは堪えてない。
それどころか私の恨みの言葉をおもしろそうに聞いている。

こちらとしては全く持って面白くもない。
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