子悪党令息の息子として生まれました

菟圃(うさぎはたけ)

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ここに来たのが失敗だったと目の前にいる人を見て余計に感じた。
私は父上と一緒にリリーシア公爵家に来ていた。

「そこまで表情を出されますとショックですね」

優雅に紅茶を飲みながら私の表情を指摘してくる。
今日は全く表情管理ができてない。

アデライトの前にいる時は表情管理が上手くできていな気がする。

「失礼しました。表情を管理できるよう邁進致します」

「そういう訳ではありませんよ。嫌な表情ではなく楽しそうな表情を見せて頂きたいだけなのです」

楽しいわけではないのに、楽しい表情をしてほしいなんて。
引き攣った笑顔にならないようにするのに精一杯だ。

「そういうのを望んでいるわけではないのですが…」

アデライトは悲しそうな表情をしているが、本心から悲しんでいるのか分かりにくい。

「お父上を連れてこられた様だが、私から逃れられる訳がないだろう?」

アデライトの変わりようが酷い。

「そう言えば今回君のお父上が私の父上に婚約の延期を申し出に来たようだけど、その延期は通ることはないよ」

私はアデライトの言葉に言い返そうとしたが、イディと私の二人の問題なのだからと口をつぐんだ。

「何も知らないと思っていたか?君たちは兄弟なのにも可変わらず血の番なのだろう?」

我が家でしか知らない事をどうしてアデライトが知っている?
お祖父様がまだ現役なのにどこかに影かスパイでも潜ませているのか。

「兄弟同士で血の番なんて凄いね」

発言をすれば認めてしまうだけだ。

「いつまで黙っているつもり?それとも…君の弟に君の事も全て話そうかい?」

「イディに何を話すつもりだ。ふざけた事を言い続けるのであれば私は容赦しない」

イディに手を出すのなら絶対に許さない。

「今の君の姿が本来の姿なんだね。ああ、本当に私と似ていて惹かれるよ」

「何を言っているか分からないな。私はお前との婚約なんぞ一切望んでいない。婚約なんぞ他の貴族として仕舞えば良い」

アデライトがカップをソーサーに音を立てながら置いた。
先程まで貴族前としていたのに、急な荒い行動に私は驚いてしまった。

「私がそんな事を許すとでも?」

目から光が失っていて藍色の瞳は暗く深い色になっていた。

「私はお前の所有物ではない!他の貴族と婚約するのは私のーーー」

全てを言い切る前に私はソファに押し付けられた。
両手も封じられ、腹に足を乗せられ動きを封じられた。

「それ以上無駄口を叩くのならお前の弟の噂話を流してやろう。兄に懸想するから卑しい弟であるとな」

「ふざけるな!イディは何も関係ないだろう!」

「関係あるだろう?私と君の婚約を阻む障害の一つなのだから、その障害を退けるのが当たり前だろう?」

アデライトの目は完全に座っている。
どうやら本当に私を逃す気はないのだろう。

「イディを障害だと言っている時点で私を手に入れる人として相応しくない。私を手に入れたいのであれば、イディを無碍に扱わない事だな」

イディが貴族社会で生きていく為なら私は自分を犠牲にしよう。
私の犠牲を持ってしてもイディを守れないならば逃げる。

それぐらいの覚悟で私はその発言をした。
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