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『恥ずかしがらなくても大丈夫ですわ。イディ様と私は最近婚約所に一緒にサインをしたではありませんか』

この言葉を聞いた公爵夫人は続きを聞く事もなく、ピンクの所に向かっていった。
私達はその場に残されたままで、公爵夫人の行動を見守る事となった。

「ホロ…よく録音していたね」

母上の憔悴しきった声は私に行動が筒抜けになっていた事へのショックが表に出ていた。

「見た目で忌避されるからな。酷い時は大人が私を貶めようとしてくるから、証拠を残す癖がついたんだ」

「そうだったのか。その証拠が残っているのなら私の所に持ってきたら、全ての貴族に対して対処を行おう」

父上が真っ先に反応して対処をしてくれる事を約束してくれた。

「ありがとう。でもその証拠は弱みとして残しておきたいから、まだ対処しなくてもいい」

「そうか」

父上との会話も終わったから、ピンクの方を見れば公爵夫人が真顔でピンクを見ていた。
ピンクを庇うように公爵がピンクを抱きしめながら、公爵夫人を怒鳴りつけている。

あのピンクがあそこまで高慢で、馬鹿な考えを持つようになったのは公爵のせいなのは明らかだ。
礼儀作法を身につけても、常識が身に付かなければあそこまで非常識な存在になるんだろう。

母上も父上も可笑しな考えの持ち主であるが、常識も礼儀も身につけているのが心底安心した。

「女だから怒鳴りつければ怯えて許しを乞うと思っているのかしら?私が貴方と離縁をすれば貴方はただの伯爵令息に戻るだけだと理解していないのかしら?」

「私と離縁すればもう角の立つお前と結婚する奴など居らぬぞ!」

「結婚なんて不要ですわ。後継者はこの子が更生すればそのまま後継者として育てます。この子が更生しないのであれば系列の家紋から後継者を引き取りますわ」

まさか子を見捨てる事も視野に入れているとは…。
公爵夫人はどうやら貴族としての考えが強いのだろう。

「お母様は私の事を捨てるの?」

ピンクこいつは本当に何を聞いていたんだ?
更生しなければ後継者として育てないと言っているだけで、捨てるとまでは一切言っていないだろう。

「ユーフェミア人の話はしっかりと聞きなさいと何度言ったらわかるのかしら?お友達のご両親からもかなり苦情を頂いているのに、どうして貴方は話を聞かないのかしら?」

「子供の前でする話ではないだろう!お前こそ私の話を!」

公爵が話している途中で公爵夫人がセンスで公爵の頬を打った。
あまりにもの光景に全員が黙った。

かくいう私もこの状況を招いたとはいえ、まさか手が出る状況になるとは思ってすらなかった。

「私達離縁致しましょう。国に離縁書を申請いたしますので、届き次第サインをお願いいたしますわ」

離縁の話を持ちかけた公爵夫人を公爵が絶望した表情で見ている。
お互い合意の上で離縁を行なった場合は、再婚に影響はでないが一方的に離縁をされた場合、された側は再婚がほぼ不可能と言われいている。

された側の理由にもよるが公爵は完全に再婚は難しい側だと言える。
公爵は爵位の高さからして離縁を行うのはかなり難しいが、この大勢の場で離縁を申し立てられたらせざるおえなくなるだろう。

公爵夫人が思い立って行動するとは思えないから、元々離縁する事を考えていたが行動する事ができなかったんだろう。
今回ピンクが起こした事と、その出来事を公爵が権力によって握り潰そうとした行動を公爵として相応しくないとして離縁を突きつけたんだろう。

こんな状況をただ私は見ているだけになった。
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