子悪党令息の息子として生まれました

菟圃(うさぎはたけ)

文字の大きさ
上 下
26 / 120
1

26

しおりを挟む
「ホロ一緒にお風呂入ろう」

「イディの授業はどうしたのだ」

ぎゅっと私を逃し舞と抱きついてくる。

「お父様に今日の分は終わったって言われたから、ホロの匂いを追ってここまで来たんだよ」

私にだけ向けられる笑顔が普段より暗い。
父上から母上と同じような事を聞いていない事を願うしかない。

「そ、そうか…一緒に風呂にでも入るか?」

「うん!」

普段通りの笑顔に戻ってくれて少し安心した。
母上が言っていた父上と同じ状況になれば私はイディから逃れる事ができなくなるだろう。

家族としての情がある分どうしてもイディに酷い態度を取る事ができない。
だから手篭めにされて仕舞えばあっという間に私は番として生きていくことになる。

だが、イディには普通の貴族としての生活を歩んで欲しいから血の番等に縛られる事なく、普通の生活と普通の恋愛をして欲しい。
私の我儘であることは重々承知しているが、家族同士で結婚するのは良くない…。

小さな頃からしているお互い体を洗い合って、二人で入ってもまだ大きいバスタブに二人でゆっくりと浸かった。
二人が入ったことで量が増してゆっくりと座ると顎下までお湯が来ていた。

私よりも大きいイディは肩ぐらいでそこまで深くはないようだ。
成長が遅い私では少し滑ってしまうと溺れてしまいそうな感じだ。

「ホロとこうしてゆっくりとお風呂に入るの久々だね」

「そうだな」

私とお揃いの真っ赤な瞳なのにどうしてここまで粘着質な感じがするのだろうか。
それを追求して仕舞えばここで何をされるかわからない。

だから余計な話をする事ができず、イディに会話の主導権を与えるしかない。

「今日は血の匂いがしないね。いつもは血の匂いをさせているのに」

「話すことはできないが、今日はそういう授業がなかっただけだ」

「そうだね。お母様もホロがどんな授業をしているか教えてくれないから知ることができなくてショックを受けてる」

本当にショックを受けているのか怪しい表情を私の前でしている。
ショックを受けているのであればもう少し悲しい表情をして欲しいものだ。

そして父上は何時になったらイディを回収しに来てくれるんだ?
私たちは一応血の番という存在であるのだから一緒の場所に居てはいけないだろう?

「でも…僕がお父様の試験を通過出来たらホロと同じ授業を受けることが…」

「ダメだ!」

「ホロ?」

イディにあんな残酷な授業を受けさせる?
そんなのは絶対にダメだ。

あんな残酷で、醜悪なものを受けさせる訳にはいかない。

「絶対にイディにはあの授業は受けさせない。私がそれを許さないっ…!」

「ホロ痛いよ」

イディの声ではっとして私はイディの肩をかなり強く掴んでしまったようだった。
肩には私の手形がくっきりと残っている。

「あ、ごめ…」

「いいけど…、僕がホロと同じ授業を受けちゃダメなの?僕はホロと一緒に居たいだけなの」

「内容はどうしてもいうことができない…。でも、イディにはあの授業を受けて欲しくないのが私の本心だ」

イディは私の言っている事に納得がいってないようだ。
でも、本心で私はあの地獄の授業を受けて欲しくない。

本当に受けて欲しくないんだ…
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。

柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。 そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。 すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。 「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」 そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。 魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。 甘々ハピエン。

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

伯爵家のいらない息子は、黒竜様の花嫁になる

ハルアキ
BL
伯爵家で虐げられていた青年と、洞窟で暮らす守護竜の異類婚姻譚。

聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。 三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。 そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。 BL。ラブコメ異世界ファンタジー。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。 生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。 地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。 転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。 ※含まれる要素 異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛 ※小説家になろうに重複投稿しています

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

処理中です...