子悪党令息の息子として生まれました

菟圃(うさぎはたけ)

文字の大きさ
上 下
22 / 120
1

22*

しおりを挟む
「本当に?」

「本当だ」

ホロは僕に対して嘘を言ったことはない。
だから僕はホロの言葉を信じる。

「良かった」

嬉しさのあまりにホロに抱きつくと、ホロが姿勢を崩しかけたから僕の方に引き寄せて倒れないようにした。

「二人とも危ないから座りなさい」

お父様にホロを取られてむすっとしてしまった。
僕のホロなのに…

「仲が良い事はいいが状況を考えて動くんだ」

「はい」

「分かった」

「とくにホロはこのお茶会ではその話し方をしてはいけない。血筋だけで言えば今回のお茶会では一番高貴な存在になるが、家格だけで言えば上の家格の貴族も集まっている。今の様な話し方をしてはいけない」

「分かっている。だが、どうしてもという時は良いか?」

「どうしてもという時だけにはなるが許可をしよう」

お父様とホロの話している事が良く分からない。

「ホロの喋り方ってダメなの?」

「いい話し方ではないよ。でも、家にいる間だけは、家族と一緒にいる間だけは自由に話して欲しいんだ」

「そうなんだ。僕はホロの話し方は聞いてて落ち着く事ができるからとても好きなんだ」

「イディはいい子だね。でもみんながイディと同じ優しい考えをしているわけではないんだ」

お母様の言っている事が分からない。
だって喋り方だけでダメだと言われる事が何がだめなのか良く分からない。

ホロはどうなんだろう。
ホロもお母様と同じ考えなんだろうか?

「ホロもお母様と同じ事を考えてる?」

「そうだな…貴族の世界で生きていくと決めたのだから、母上の考えに同意できる」

「ホロがそう考えているなら…」

納得できない。
だってホロはホロなのに普段の話し方が受け入れられないなんてそんな酷い事があり得るなんて。

大人の世界って…貴族の世界ってこんなに酷い世界なんだ。
でもいつかはそれが僕も理解できる日が来るんだろうか。

モヤモヤとした考えをしながら僕はお茶会会場にたどり着くまでずっと考えていた。
いっぱい考えていつかわかるその考えで一旦思考を停止させて僕は、お茶会会場に到着した馬車からお父様に抱っこされながら降りた。

馬車から降りるとお母様から教えてもらった今回のお茶会会場の提供者の伯爵ご夫妻が出迎えてくれた。

「ツェーリア伯爵子息ご夫妻ようこそいらっしゃいました」

伯爵ご夫妻はニコニコしていて僕たちを歓迎してくれている様に見える。
伯爵は僕たち以外にも迎えがあるからと言って、伯爵夫人が僕たちをお茶会会場まで案内してくれた。

到着したお茶会会場は僕が見てもわかる程露骨な嫌がらせをされているのが分かった。
日差しに弱い種族である僕がいるのに日除の為の場所が用意されていなかった。

お父様の血筋を受け継いでいるからある程度は日差しに耐えられるけど、お父様みたいに日に対しての完全耐性があるわけではないからどうしても弱体化してしまう。
ここで何かがあれば僕は力を出す事もできずに死んでしまう。

そんな場所を今回お茶会会場として提供されていた。
ホロの表情を見れば普段通り真顔をだけど、眉間に皺が寄っていて機嫌が良くないのが目に見えてわかる。

僕が分かっているとバレたらホロも楽しめないと思うから、知らないフリをして過ごすことにした。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。

柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。 そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。 すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。 「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」 そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。 魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。 甘々ハピエン。

伯爵家のいらない息子は、黒竜様の花嫁になる

ハルアキ
BL
伯爵家で虐げられていた青年と、洞窟で暮らす守護竜の異類婚姻譚。

聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。 三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。 そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。 BL。ラブコメ異世界ファンタジー。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。 生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。 地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。 転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。 ※含まれる要素 異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛 ※小説家になろうに重複投稿しています

信じて送り出した養い子が、魔王の首を手柄に俺へ迫ってくるんだが……

鳥羽ミワ
BL
ミルはとある貴族の家で使用人として働いていた。そこの末息子・レオンは、不吉な赤目や強い黒魔力を持つことで忌み嫌われている。それを見かねたミルは、レオンを離れへ隔離するという名目で、彼の面倒を見ていた。 そんなある日、魔王復活の知らせが届く。レオンは勇者候補として戦地へ向かうこととなった。心配でたまらないミルだが、レオンはあっさり魔王を討ち取った。 これでレオンの将来は安泰だ! と喜んだのも束の間、レオンはミルに求婚する。 「俺はずっと、ミルのことが好きだった」 そんなこと聞いてないが!? だけどうるうるの瞳(※ミル視点)で迫るレオンを、ミルは拒み切れなくて……。 お人よしでほだされやすい鈍感使用人と、彼をずっと恋い慕い続けた令息。長年の執着の粘り勝ちを見届けろ! ※エブリスタ様、カクヨム様、pixiv様にも掲載しています

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...