子悪党令息の息子として生まれました

菟圃(うさぎはたけ)

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「イディ…」

「近づくな。血の覚醒中は色々とリミッターが外れるから私でも対処する事ができない事があるからな」

イディに近づくことを禁じられ、それ以上足を進める事ができなかった。
父上が言った早すぎる血の覚醒。

もしかして侯爵夫人がイディに盛ったナッドというのが原因なのか?

「今日から数日はイディを借りていく」

別にイディを連れていくのに私の許可は要らないのだが…
一応頷いておけば父上はイディを抱えて寝室から出ていった。

父上が出ていったすぐ後に母上が寝室に入ってきた。

「ホロ無事だった?」

母上が私に近づき、頬を撫でてくれる。
そこからは私の体中を触られどこも怪我をしてないか確認をされた。

「怪我はないようだね。イディが毒草で体が弱っていたから、ホロでも対処できたんだね」

「母上はイディにあんな事が起こるって知っていたのか?」

「そうだね…イディにあんな事が起こる事は知っていたよ。でも、イディが血の覚醒が始まる前にはホロと部屋を別にして血の覚醒の対処をしようとしていたんだ」

「イディの今回の血の覚醒は…毒草が原因で早まったって事?」

「そうなるね。あまりにも早い覚醒だから私もラグも簡単に対処できなかったの。だからホロを危険な目に合わせたいとかそんな事は考えてないからね。僕達にとってどちらも大切な子供なんだから」

大切にされている事はわかっている。
大切にされている中で外部によってイディが苦しい思いをしているのが嫌だ。

「ホロ聞いてほしい事があるの」

「なんだ?」

「イディが苦しんでいる所で申し訳ないけど、お父様とお母様の仕事について話したい事があるの」

今このタイミングで話す事なのか?

「どうしてって思うよね。でも今日話す予定だったんだイディを除いてね」

「なんで今…」

「うん、分かるよ。でも賢いホロが話を聞いたらイディに聞かせたくない内容なのを理解してくれる筈」

聞かせたく内容。
お茶会でも私だけ残されて父上の仕事の内容を見させ続けられた。

「ここではあれだからソファに座ろっか」

母上に抱き上げられ、ソファに優しく下ろされた。
その隣に母上が一緒に座った。

「イディに聞かせたくない内容とはなんなのだ。父上の仕事に関係する事なのか?」

「そうだね、お父様の仕事は見たでしょ?あの仕事を継いでくれる人が僕達の子の中から選ばなければいけなくなったんだ」

母上の悲しそうな表情。
本当は私たちの中からこの仕事を引き継がせたくないのだろう。

優しいイディにあの仕事ができるかと考えればその仕事を遂行できる姿が見えない。
そうすれば私に話が渡ってくるのは必然だ。

「イディにあの仕事はできない」

「そうだね…ごめんね」

「何故謝るんだ?私はあの仕事に何も感じないし、イディにあの仕事をさせるぐらいなら私が喜んでその仕事を継ごう」

「ごめん、でもありがとう…」

母上にぎゅっと抱きしめられる。
この仕事を私にもイディにも継がせたくなかったのが、抱きしめられる力でわかる。

体も震えも私に伝わってくる。
何かをしてあげたい、その思いで私は母上の背中に手を回してぎゅっと抱きしめた。

少しでもこれが慰みになるようにと。
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