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授業自体はつつがなく進んだ。
この授業中に私の傷は三箇所程増えたと言っておこう。
「先生少しお話を宜しいでしょうか」
「如何なされましたか?」
教師はイディの声掛けに笑顔で答えている。
私はイディの無表情に何があったのかと思った。
イディのその表情に教師は全く気がついていない。
何せイディの表情は私と父上と母上しか理解出来ないから、この教師にはこの無表情の状態がデフォルトだと思っている。
「貴方はここに何をしに来たのでしょうか」
「え?そのご質問はどの様な意図を含んでいらっしゃるのでしょうか?」
イディに立たされて今日ペンで刺された腕の服を捲られた。
白いシャツには血が滲んでいて、そこそこ出血しているのが見られる。
今日はかなり深く刺されてしまったようだ。
「何故ホロにこんな事を毎回するの?僕のホロに毎回こんな事をして許されると思っているの?」
イディは私の傷の事を知っていた。
知っていた上で私が言い出すまでイディは待っていてくれた。
「僕の種族を忘れていたようだね」
そうだったな。。
イディは吸血鬼であるのだから、出血してしまえばイディはその匂いをすぐに嗅ぎ取ってしまう。
だから私に傷ができる度にイディが甲斐甲斐しく世話をしてくれていたのだ。
「お母様」
まさか…
扉の所に視線を向ければ扉が開くのではなく、扉の前に母上が姿を現した。
透明の魔法を使用するのはかなり難しい筈なのに、この母上はそれをなんと無しにこなしている。
その実力の高さと魔力の多さで成年になる前に高位魔術師の称号を貰い受けた。
「私達の愛おしい子に…一介の子爵令息如きが怪我を継続して怪我を負わせるなど言語道断」
私たちに普段デレデレしている母上とは全く違う。
貴族としての母上の姿で、そして私たちを守ろうとする強い姿だ。
「令息夫人…このそれは…」
「言い訳など不要。ただの容姿だけで子に怪我を負わせる様な存在はこの伯爵家では不要だ。そうだな…」
母上の周りに精霊が沢山集まり始めている。
精霊を利用して何かを使用と考えているのだろうか。
「知る限りの全ての人間にお前が行った事を全て話すとしよう。裕福ではない子爵家の生まれのようだから職を失えば苦しい思いをするだろう。私は死ぬなんて優しい事を許すことはしない」
貴族は自身のプライドを守る為に死ぬ事厭わない事が多い。
でも母上は聖女の一件があってから、貴族には死を与えるのではなくそれを反省させる為にではなく、苦痛を与える為に死ぬことを許さないようにしているらしい。
普段はふわふわしている母上なのに、こういう時は冷徹な父上よりも恐ろしい存在になる。
イディもそれをわかった上でこの場に母上を呼んだのだろう。
私を守るその為だけに。
「そ、それだけはお許しください!鮮血の魔術師様!!」
「自身の子を意味もなく傷つけられ許す親がいるとでも思っているとでも?」
母上に土下座をする教師の頭を母上は容赦なく踏みつけた。
「ねえどうすればそんなくだらない事を考えられるの?私にそのくだらない思考を教えておくれよ」
「申し訳ございません!申し訳ございません!」
「謝るのは私にではない。怪我を負わせた私の子にだろう!」
教師に怒る母上の瞳は興奮しすぎて赤く染まっていた。
これは父上がいないと誰も止められない。
この授業中に私の傷は三箇所程増えたと言っておこう。
「先生少しお話を宜しいでしょうか」
「如何なされましたか?」
教師はイディの声掛けに笑顔で答えている。
私はイディの無表情に何があったのかと思った。
イディのその表情に教師は全く気がついていない。
何せイディの表情は私と父上と母上しか理解出来ないから、この教師にはこの無表情の状態がデフォルトだと思っている。
「貴方はここに何をしに来たのでしょうか」
「え?そのご質問はどの様な意図を含んでいらっしゃるのでしょうか?」
イディに立たされて今日ペンで刺された腕の服を捲られた。
白いシャツには血が滲んでいて、そこそこ出血しているのが見られる。
今日はかなり深く刺されてしまったようだ。
「何故ホロにこんな事を毎回するの?僕のホロに毎回こんな事をして許されると思っているの?」
イディは私の傷の事を知っていた。
知っていた上で私が言い出すまでイディは待っていてくれた。
「僕の種族を忘れていたようだね」
そうだったな。。
イディは吸血鬼であるのだから、出血してしまえばイディはその匂いをすぐに嗅ぎ取ってしまう。
だから私に傷ができる度にイディが甲斐甲斐しく世話をしてくれていたのだ。
「お母様」
まさか…
扉の所に視線を向ければ扉が開くのではなく、扉の前に母上が姿を現した。
透明の魔法を使用するのはかなり難しい筈なのに、この母上はそれをなんと無しにこなしている。
その実力の高さと魔力の多さで成年になる前に高位魔術師の称号を貰い受けた。
「私達の愛おしい子に…一介の子爵令息如きが怪我を継続して怪我を負わせるなど言語道断」
私たちに普段デレデレしている母上とは全く違う。
貴族としての母上の姿で、そして私たちを守ろうとする強い姿だ。
「令息夫人…このそれは…」
「言い訳など不要。ただの容姿だけで子に怪我を負わせる様な存在はこの伯爵家では不要だ。そうだな…」
母上の周りに精霊が沢山集まり始めている。
精霊を利用して何かを使用と考えているのだろうか。
「知る限りの全ての人間にお前が行った事を全て話すとしよう。裕福ではない子爵家の生まれのようだから職を失えば苦しい思いをするだろう。私は死ぬなんて優しい事を許すことはしない」
貴族は自身のプライドを守る為に死ぬ事厭わない事が多い。
でも母上は聖女の一件があってから、貴族には死を与えるのではなくそれを反省させる為にではなく、苦痛を与える為に死ぬことを許さないようにしているらしい。
普段はふわふわしている母上なのに、こういう時は冷徹な父上よりも恐ろしい存在になる。
イディもそれをわかった上でこの場に母上を呼んだのだろう。
私を守るその為だけに。
「そ、それだけはお許しください!鮮血の魔術師様!!」
「自身の子を意味もなく傷つけられ許す親がいるとでも思っているとでも?」
母上に土下座をする教師の頭を母上は容赦なく踏みつけた。
「ねえどうすればそんなくだらない事を考えられるの?私にそのくだらない思考を教えておくれよ」
「申し訳ございません!申し訳ございません!」
「謝るのは私にではない。怪我を負わせた私の子にだろう!」
教師に怒る母上の瞳は興奮しすぎて赤く染まっていた。
これは父上がいないと誰も止められない。
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