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新しい命の誕生

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キアが宣言した通り、用意した翌日には陣痛が始まりキアは侍従と産婆を覗いた全員を部屋から追い出した。
三人は扉越しから聞こえるキアの悲鳴を聞くだけしか出来なかった。

「一体何時になったら産まれるんだ…」

ヴィシャスは顔色を真っ青にしながら子が産まれるのを待っている。
それ以上にヴァンクラフトの顔色が真っ青だった。

キアが苦しんでいるとはいえ、悲鳴を上げてる声はルドなのだ。
自身の腹を貫かれても悲鳴を上げなかったルドの声で悲鳴を上げられるのはヴァンクラフトの心を深く抉った。

それぐらいにルドの悲鳴はヴァンクラフトに傷を残し続ける。

「ヴァンクラフトくん…大丈夫、出産というのはこういうものだからね?」

三人の中で唯一出産の立ち会い経験があるギレスタはヴァンクラフトの背中を摩り続けた。

「私たちが出来ることは出産が無事に終わる事だけだよ。その後の事は後に考えよ」

優しい言葉を掛けながらヴァンクラフトを宥めるギレスタも心中穏やかではなかった。
だけど、それを表に出すとヴァンクラフトにも伝播する可能性があるのを分かっているからこそ、ギレスタは穏やかでは無い気持ちを抑え込んでいる。

「んぎゃあああ!」

扉越しに元気な赤ちゃんの泣き声が聞こえた。
その後に続いて両手を血塗れにした侍従が扉を開けて、三人に入ってくるように伝えた。

三人が中に入れば血塗れになったタオルに最悪の事が頭をよぎったが、ベッドで疲れ果てながらも我が子を愛おしそうに抱くキアの姿を見た時に、ヴィシャスはその場で崩れ落ちながら泣き、ヴァンクラフトとギレスタは側によって本当に無事なのかの確認をした。
各々の反応にキアは疲れ果てながらも三人の行動をくすりと笑った。

「無事お生れになられましたが…」

産婆の口篭る言葉にギレスタが子を見ると、両頬に鱗の様な物が見られた。

「まるで…魔族の様な風貌で…、大公殿下、本当にこの赤子をお認めになられるのですか?」

産婆の言葉はギレスタを心配しての言葉だった。
人は人と違う容姿であれば排除する傾向にある事を知っていた。

だからこそ赤子を認められないのであれば、産婆が引き取りそのまま手を下す事もある。
だから産婆は命を取り上げるのは二つの意味を設けている。

「ルドの子であるなら容姿は関係ない。この事を吹聴すればそなたの命がない事だけを胸に刻んでおくように」

「かしこまりました。口が軽ければ私もこの歳まで王侯貴族の産婆を勤められておりません。ですが…今回を機に私はこの役目を降りようと思います」

「そうか…今までご苦労だった」

産婆は血で汚れたタオルを回収し、汚れた部分を拭き取ってから直ぐに部屋から出ていった。
ベッドの上では疲れてるけど頑張って起きているキアと、そのキアの胸の上でふにゃふにゃと口寂しそうに動く赤子が幸せそうにしている。

その姿を産婆は最期に目に焼き付けた。
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