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準備

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「そんなに準備しなくても大丈夫だよ~?」

キアは呑気にベッドで転がりながら、慌てふためく三人を楽しそうに眺めている。

「キアお前の為じゃない!のルドの為だ!」

「あはは~本当に、僕の為じゃないようだね。ちょっと寂しいかな…」

キアが最後に放った言葉は誰にも聞こえないように小さく呟いた。
キアの言葉は誰にも届いていなかった様で。三人ともルドの出産の準備を整えている。

「それにしても…そこまでの準備は本当に必要ないよ?」

「なんだ?キアは出産の準備経験があるのか?」

「勿論だよ。なんたって僕は前の聖者だよ?出産の手伝いもした事あるし、赤ちゃんを何回も取り上げたことがあるんだから!」

えっへんという様に胸を張るキアに誰もが疑うような視線を向けた。

「もーそんな表情をしてー。ま、準備自体は間違ってないから、同じ物はそんなに沢山準備しなくていいよ。でも、タオルだけは沢山準備して。必ず清潔なタオルでね」

テキパキと指示を出すキアはこの部屋の中では一番、的確な指示を出している。
その指示に三人が従い、フレミネだけには内情を伝えたヴァンクラフトは体が寝れていなかった事が原因で起きてはいるが、ソファの上で体を休めている。

「しかし…本当にルド様ではないのですね」

「侍従が僕の事を疑うなんて、本当に侍従としてでしか仕事ができないのかな?」

「この様な発言は本当のルド様ならなされませんね。ルド様の犬の様な表情が直ぐに見れないのは残念です」

フレミネは完全にルドの事を主人の恋人として見ているのではなく犬として見ている。
完全な犬扱いをしているわけではないが、犬に悪戯をして犬を可愛がっているかの様にルドを扱っていた。

「ふーん?僕はお前の事嫌いだから、さっさと準備したら今日は出ていってくれるかな?」

「残念ながら私は殿下の命令しか聞けませんのでどうか、ご自身に権力があると思わないように頂けますと幸いです」

フレミネは笑顔を貼り付けた状態で、キアの言葉に皮肉を込めて返した。
キアも負けず劣らず笑顔を貼り付けているが、二人の間には完全に火花が散っている。

「二人とも喧嘩しないで準備をしよっか」

ギレスタは正直この状況に一番ついていけない人間であるが、淡々とキアの出産の準備を行なっている。

「失礼致しました。王弟殿下も一度お休みになられて下さい。私とそこの殿下に似ている者だけで準備は今日中に終わります」

「心労も俺のせいで嵩んでいるでしょうからおやすみくださいギレスタ様」

「ゼゼは準備が終わったら私としっかりと話をしようね」

疲れ切ったギレスタはヴァバリアスの隣に腰掛けた。
この二人は特に疲れ切っていたようで、先にギレスタが寝落ちついでそこまで時間を空ける事もなくヴァバリアスも寝落ちた。

二人の寝顔を見てキアは幸せそうな、悲しそうな表情を浮かべていた。
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