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まさかの伏兵

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「まずは君の考えを訂正した方がいいだろうね。今ここにいるのは大公子息のルドで、ただの平民ではないよ」

「へ?」

何度も俺と父さんの事を交互に見ている。
父さんの言葉を理解できたのか先ほどよりも酷い顔色に変わった。

人って真っ青を通り過ぎると真っ白になるんだ。

「も、申し訳ございませ…」

大公子息と分かったから謝っているようにしか聞こえない。
俺って何をしても問題ない存在だって世界に刻まれでもしているのだろうか。

そう思うぐらいには知らない人からの扱いはかなり酷い物ばかりで、大公子息と知っている人からは丁寧な扱いを受ける。
肩書きでそんな対応を受けれているのは重々承知しているけど、ただ俺は良い待遇を望んだ訳でもなく、魔道具を作成する環境があればそれで満足なんだ。

「客人に爵位がなんであろうとも客人は客人だ。客人が平民であれ、王族であれ客人を最大限もてなすのは侍従の役割であると、最初に学ぶ内容でもあったんだけどね」

机をトントンと叩きながら話す父さんに、侍従は真っ白の顔を歪ませていく。
嫌な予感がしてピアスに指をかける。

「それじゃあ最後の質問をするよ。この料理に毒を盛ったのは君か」

疑問符がついていない質問だった。

「違います…そのようなことは行って、おりません…」

侍従の回答に魔石は真っ赤な光を放った。
本当にこの人が料理に毒を盛ったんだ。

俺は殺されるような事までしたんだろうか。

「それで?この結果で何か言いたい事はあるかな?」

「わ、私の…」

侍従は言葉を一度飲み込んでから、キッと俺の事を睨みつけてきた。
どこかで見たことがあるような知らない悪意を向けられている感じがした。

「私のサミュエル様を奪った奴が憎くて仕方がなかったのです!」

一体何を言っているんだ?
この侍従からサミュエルを奪ったって事?

「サミュエル様は私の事を地獄の底からお救い下さいました。そんなお優しい方を罠に嵌めて処刑に処された様な人に仕えようとは思えません!私は確固たる意志を持って今回の事を抗議いたします!」

顔色を真っ白にしていた人とは思えない程清々しい表情にいつの間にか戻っていて、俺がサミュエルを罠に嵌めた人だと信じ込んでいる。

「君は王宮から出された発表を読んでいないのか?」

「勿論拝見致しましたが、あんな嘘に塗れた内容を信じ込むこいつらが愚かなだけなのです!サミュエル様自らの手によって私は地獄から救い出されたのです!その様な聖君を処した膿は死ぬべきなのです!」

堂々と言い放つその姿は無駄に貫禄があるようにも見えた。
というか…サミュエルの信者ってこんな所にも存在したんだ。

その事に一番驚いた。
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