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総本山に行けない理由

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「さて、ご本人様がいらした事ですので、お話を進めましょうか」

ヴァンクラフトと、父さんを前にして仕切れるリリエルも凄いと思うけど、それ以上に俺が入ってからのヴァンクラフトと闇者の声が死ぬほどうるさくなった。
リリエルの声がかき消される程うるさくてたまらない。

この二人はどうしてここまでうるさくできるんだ。

「今回の件ですが、ルド様を我ら治癒団の総本山にお連れされたいとのことでしたね。お連れする事は簡単なことではございますが、正直なところ今のルド様を総本山にお連れするのは難しいのです」

「何か理由がおありなのでしょうか?」

「今総本山には治癒団の敵対勢力が紛れ込んでいるという噂が流れているのです」

噂?

「その噂一つで総本山に入る事をよしとされないのは何故なのでしょうか?」

「私たちが総本山としている場所は人間以外の多種族が入ることができない場所とされております。入れない場所とされているというよりかは女神の加護によって総本山に立ち入ることができないのです。それなのに、敵対勢力が紛れ込んでいるとなると、人間側の敵対勢力が入り込んでいるという事になります。見た目で判断を一切行えない分対処するのが今までの数倍は難しくなってしまっているのです。そんな危ない場所にルド様をお連れすることができません」

他種族ではなく同じ人族が敵対勢力になっているんなんて…。
この世界で同族同士で争うなんて意味のないことを。

自分たちの種族を弱らせるだけの行動にしかなり得ないのに、どうしてこんな無謀なことを考えるんだろうか。
不思議でたまらない。

分かるのは碌な考えを持っていないって事だけだ。
それぐらいは考えなくても分かる事だけど、場合によっては自分たちの命綱になるかもしれない治癒団に危害を加えようと考えている時点で今後のことなんて一切考えていない。

「その敵対勢力を僕の部下達によって殲滅させるのは如何でしょうか?」

「確かにヴァンクラフトくんのです勢力であれば、暗躍も可能だけどその部隊を送り込んでしまったら君はどうやって王太子殿下から身を守るつもりなの?」

「僕の身は僕自身で守ることができますよ。叔父上も兄上の実績が偽物の実績であることはご存知でしょう?」

「そうだね。昔は可愛い甥っ子だったのに、あそこまで落ちぶれてしまうとは思いもしなかったよ」

「兄上の権力欲は酷いものですからね。陛下もいい加減兄上に武力がない事を理解して下されば話は変わるのですが」

やれやれと言ったように首を横に振るヴァンクラフトに、サミュエルの審判を下す為の話し合いの事を思い出した。
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