お助けキャラに転生したのに主人公に嫌われているのはなんで！？

ストーリーが開始されました！

サミュエルとルド

治癒の魔石もあるから…手足を折っても、内臓をぐちゃぐちゃにしても…本来なら治らない怪我も奇跡の力を使えば治ってしまう。
痛い目を見せれば少しでも、ほんの少しでも反省してくれるんじゃないだろうか。
後悔をしてくれるんじゃないだろうか。

そんな望みが叶うかは分からないけどそれでも叶わせなければならないと思う。

「ねぇ」

「何？ただの第五王子程度がこの私に何の用？」

「君がどうしてここに来たのか本当に知りたいの？」

「当たり前よ！栄華を極めたこの私を台無しにしたんだもの！」

ヴァンクラフトは何を言ってるの？
読めたはずの表情が全く読めない。

「それが残酷な結果であったとしても？」

「そんなものある訳が無いわ！」

「そう…それが君の答えならいいよ。死んだ方がマシだって思うほどの答えを教えてあげる」

ヴァンクラフトが立ち上がり、何故か俺の後ろに立った。

「早く話しなさいよ！」

「まず貴様らがゲームだと思っていたものはゲームを模した別の物だ。本来は我の半身を探すためにゲームとして作ったものだった」

今話しているのはヴァンクラフトじゃない。
後ろを振り向きたいけど、振り向ける程の気力が出てこない。

後ろに感じるのは恐怖の塊そのもので、なんでこんな化け物がいるのかと思うぐらいだった…。

「幾年経った時に遂に我の伴侶を見つけるに至ったのだ」

「それが私ってことよね！？」

意気揚々と話すサミュエルが何故か可哀想に見えてしまった。
なんでもいいから縋りたい…そんな姿にしか見えない。

「いや、ここに居るルドだ」

「は…？こんな平凡で何の取り柄もないこいつが…？」

「何の取り柄もないのは貴様だろう。ルドは魔道具作成の鬼才で、聖者でもあるのに何も取り柄がない者とは違いすぎる」

「私は美貌だってあるわ！それに演技の才能も…人を魅了する才能だって！」

「それが生かされているのであればな？」

「うるさいわよ！早く私がこんな世界に来た理由を話しなさいよ！」

勢いよく机に手を叩きつけヴァンクラフトでは無い何かに憤りを向ける。
サミュエルは本当にここに居るヴァンクラフトが本当のヴァンクラフトだと思っているのだろうか…。

「本当ならルド自身に話させたかったのだが…記憶を奪い取ってしまった故代わりに我が話すことにしよう」

俺の記憶がなかった…いや、無くなっていった原因がヴァンクラフトでは無い何かが奪い取ったって事…？
だから記憶が薄れていったってことなの…？

「転生者よ貴様には婚約者というものが居たらしいな」

「え、えぇ…そうよ。私の幼馴染でイケメンで完璧な人よ」

「それが独りよがりだと言うことにも気がつけていたか？」

「何を言ってるの…？っ…彼は！私のこと愛してるって言ってくれていたわ！結婚してくれるって話してくれていたわ！」

「言わせてただけだ。我が伴侶は願ったのだよ…お前から離れたいと」

「え…？こ、この私…から？」

ここまで動揺するサミュエルは初めて見た。

「有り得るわけないじゃない…だって、私は彼にどれだけ貢いだと思ってるの？どれだけ愛したと思ってるの…？そんな献身的な私から離れたくなるわけないじゃない！」

「それが独りよがりだと言っている。そして離れる時にそいつは願った。ただの平凡に生まれ変わりたいと。人に縛られる生き方をしたくないと…。だから我は叶えてやったのだ…ルドという形を取らせる事を」

「は？」

「え？」

こいつは一体何を言っているの？
俺がサミュエルの中に居る転生者の婚約者って言いたいの？