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信じられない発言

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「いい加減なんとか言ったらどうなのよ!」

俺から返事がない事に痺れを切らしたサミュエルが怒鳴ってくる。
どうにかして俺にそうだと言わせたいのだろうけど、俺はサミュエルが欲している言葉をかけるつもりはない。

「それで?俺はサミュエルを、君を許すつもりは一切ない」

「はぁ!?どうして私を許さないっていうのよ!知らなかったのだから仕方がない事じゃない!」

「知らなかったからといって暴力を振るう事は許される事なの?商会を潰そうとしたことも、嘘の噂を流したことも、攻略対象者を唆して言えぬ事をしたことも…君は許せるって言えるの?」

俺にとって地獄の様な数年がサミュエルにとっては仕方がない事だと。
知らなかったから許される事だと…。

そう…それなら俺がサミュエルにされた事を仕返ししても許してくれるって事だよね?

「ルド、それ以上は良くないよ。あいつと同じ所まで堕ちたいの?」

一体俺は何をしようとしたんだろう。
俺はいつの間にか無属性唯一の攻撃魔法を展開していた。

ヴァンクラフトが止めてくれなければきっとサミュエルをボロボロにしていた。
無意識に展開していた魔法を解いてじっとサミュエルを睨みつけた。

睨まれるとは考えてなかったのか、一瞬だけサミュエルの表情が強張ったけどすぐに睨み返してくる。

「サミュエル…君を許す事は絶対にあり得ない。だからどうか明日死んでほしい」

死刑の事を告げると、サミュエルはポカンとした表情を浮かべてから直ぐにぷっと吹き出した。

「私が死刑!?あはははははっ!なんて可笑しな話をしてくるの!?」

腹を抱えながら笑い始めるサミュエル。
本当にサミュエルは何も知らないでの発言なのか?

「サミュエルいや、転生者君は明日死刑が決行される」

「ああ、本当にお前はバカね。死刑なんて嘘に決まっているじゃない。だって私には後ろ盾があるんだもの」

後ろ盾?
一体誰のことを言っているんだ。

こんな泥舟に誰が乗りたがるんだ…。

「転生者ってだけで釣れた大物がいるのよ。この国程度では手出しできない様な大物よ」

嬉しそうに高笑いをするサミュエルがどうも怪しい。
一体どうやってこの国が手出しできない人と接触する事ができたんだ?

他国に行った形跡もなければ、連絡した形跡もない。
その形跡がなければ他国の侵入を許したことになる。

そんな事があったのであれば、ゲームのストーリーから離れてしまいすぎている。
他国の侵略は魔王降臨の少し前だったのだけど…。

「魔王よ」

は?

「ゲームで見た時でもかなりイケメンだったんだもの、私の美貌に惚れて私を助けてくれるって願い出てくれたのよ」

魔王がサミュエルに惚れて助けるって?
ゲームでは人間そのものを嫌っているあの存在が、人間のサミュエルに惚れる?

魔王の存在も捻じ曲がってしまって、人間嫌いではなくなったって事?

「私のこの美貌に惚れたのは正解ね。ここまで美しい存在はいないんだもの。本当なら聖者になる予定だったのに、お前が能力を奪ったせいで私が聖者になれなかった代わりに、魔王が惚れてこの窮地から救ってくれるのはとてもありがたいわ」

サミュエルが嬉しそうに頬を赤く染めて体をくねくねとくねらせている。
魔王に助けられると信じて疑わない姿に吐きそうになってしまった。

一切怪我を負ったこともない綺麗な肌に、綺麗な顔が魔王の何かに刺さったのだろうか。
呑気に考えているサミュエルを見てため息が出た。

一体どうすれば絶望に追い込めるんだろうか。
死ぬ前に一つでも絶望を与えられたら嬉しいんだけど…ね。
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