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お互いのメリット

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「フレミネから聞いたけど、本当にあの罪人に会うつもりなの?」

ヴァンクラフトの表情は紛れもなく不機嫌だと言っていた。
見た目は間違いなく笑顔なんだけど、この一ヶ月でヴァンクラフトの表情の機微を読み取れる様になった。

「どうしてもサミュエル本人に聞きたい事があるんです」

「それなら僕が全て看守を通して聞くこともできるんだよ?危険を冒してまで聞く必要はないと思うんだ」

気持ちはわかるけど俺がサミュエルに聞きた事は、この世界で存在している人には誰にも理解できない話になる。
きっと聞かれて仕舞えば異端として扱われてしまうかもしれない。

でも聞かずにはいられない内容なんだ。
どうやってこの世界に転生したのか。

どうして俺を執拗にいじめ抜いたのか。
いじめ抜かなければサミュエルは幸せに過ごすことができたのに。

それを考えもせずに行動をした理由はなんだったのか。
沢山サミュエルに聞きたいことがある。

理解できない内容であるとわかっているから、俺が直接サミュエルに聞くしかないんだ。

「俺と…サミュエルしか分からない内容を聞きたいんです。誰にも理解できない内容なんです」

「僕にも理解できない内容なの?」

「殿下じゃなくても…本当に俺とサミュエルしか理解できない内容です。だから、どうしても俺が本人から話を聞きたいのです」

「ルドって本当に僕ができる事を忘れがちだよね」

できること?

「そんなルドだから僕もあいつも君を気に入ったんだろうけどね。いいよ、サミュエルの面会を許してあげる。だけど必ず僕を面会の場所に同席させること、いいね?」

聞かれて困る内容なのは間違いないけど、ヴァンクラフトが黙っていてくれるなら…立ち合わせてもいいのかな。

「ルドが心配してる事は話の内容についてでしょ?僕は罪人とルドの話を誰にも話さないと約束したら安心できる?」

「それなら…大丈夫…」

「良かったよ。同席を許してくれなかったら、面会を許すことができなかったからね」

そういえばヴァンクラフトはこういうやつだった。
最近は優しくては許してくれているから、俺が傷つく事に関しては俺以上に嫌がるのを忘れていた。

最近は最初に見ていた執着が見えていなかったから、すっかり安心し切っていた。
でもヴァンクラフトは最初から全く変わっていなかった。

執着するから姿を見せる機会がこの一ヶ月の中で起こらなかっただけなんだ。
見せていたのだとしてもそれに俺が気づくことができなかっただけ。

今もこうして俺の側にきて全く離れようとしない。
ただ傍にいてくれるのは俺の心情からしてありがたい部分ではある。

同じ部屋にいるときに離れられると、心臓が嫌な鼓動を打ち気を急かしてくるから。
傍にいればそんな事はなくなり、心情も穏やかにいる事ができる。

ヴァンクラフトは俺と一緒にいられる理由にもなり、俺も心情を安定させる為にという理由になる。
だからお互いの望みがしっかりと反映されている状況が、部屋の中で一緒にいる時は傍にいるという事なんだ。

いつかは一人で生きていければそれでいいんだ。
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