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試される心
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ゆっくりと腕を手に取られ、何をされるのか分からない恐怖心が口から飛び出そうになるけど、頑張って飲み込んでなんとか悲鳴を上げる事はなかった。
「手の怪我も治ってきているね。元々の傷を全部治す事ができないから、手当に時間がかかってしまうけれど…僕の手でルドの傷すらも治す事ができるのが幸せで堪らない」
近くの机の上に置いてあった軟膏をヴァンクラフトは手に取り、俺の手に軟膏を塗り広げていく。
抵抗をされると何をされるか分からなくて、恐怖から動くことも叶わない。
「本当は半身にした時に怪我はない状態にしたかったのだけど…あいつは許してくれなくてね」
ヴァンクラフトが何を言っているのか理解できない。
「僕は綺麗な体になったらルドがきっと喜んでくれると思っていたんだけどね…。あいつは本当に性格が悪くてかなわないよ」
しっかりと軟骨を塗り込まれたのに、ずっと手を握りしめられたままだ。
どうして離してくれないんだろう。
性格が悪いと言っているけど、ヴァンクラフトも十分性格が悪いと思う。
「ルドは僕の事をそう思っているんだね」
掴まれていた腕をヴァンクラフトに方に引っ張られ、ヴァンクラフトの腕の中に捕まってしまった。
そうだった…ヴァンクラフトは俺の考えを読めるって事を…。
考え事も慎重にならなければならないのに…。
「ルドは本当に僕から離れられると思っているの?」
どういう事?
馬車の時の記憶も曖昧で、何を言われたのかも覚えていない。
「そういえばあの時も少しだけ悪戯をしてしまったからね。ルドの記憶も曖昧になっているよね。僕が馬車の時の事を繰り返してみようか…」
一体何を…。
「僕にルドはもう要らない。他にいい子を見つけたからね」
全く意味を理解できないのに、心臓が嫌な鼓動を打つ。
段々と息が上がり俺の心をいっぱいにしていた恐怖心ではなく、違う感情が押し寄せてきた。
俺は要らない子じゃない。
他、他に…いい子がいたって…俺以外に?
違う、俺はヴァンクラフトにいい感情を抱いていない。
どうして、どうしてヴァンクラフトが俺を見てくれない事に不安を抱いているんだ?
「ルド…僕に何を言ってほしい?」
何を…言ってほしい?
俺はヴァンクラフトにどういう風に見てもらいたいの?
違う。
俺はヴァンクラフトから離れたい。
どうして俺の考えすらも全くまとまらないのだろうか?
思考すらも俺の自由じゃないの?
「げほっ…?」
急に噎せて俺は口元に手を当てたらベッタリと血が手についた。
体に何か異常があったの?
「ああ、拒絶反応が酷かったようだね。そうだ叔父上に連絡を行う事にするよ」
抱きしめられていた力が緩み、ヴァンクラフトの表情を見るとゾッとしてしまった。
仄暗い嬉しそうな表情が、本当に俺の事を心配しているのかと思ってしまった。
「状況が落ち着くまで、僕の家でルドを匿うことにするってね…」
逃げる場所を消す為の内容だった。
「い、いやだ…」
「ルドは僕から逃げられないよ?逃げたいのなら僕を、我を殺さないといけないね?」
恐ろしい言葉を淡々と告げられた。
「手の怪我も治ってきているね。元々の傷を全部治す事ができないから、手当に時間がかかってしまうけれど…僕の手でルドの傷すらも治す事ができるのが幸せで堪らない」
近くの机の上に置いてあった軟膏をヴァンクラフトは手に取り、俺の手に軟膏を塗り広げていく。
抵抗をされると何をされるか分からなくて、恐怖から動くことも叶わない。
「本当は半身にした時に怪我はない状態にしたかったのだけど…あいつは許してくれなくてね」
ヴァンクラフトが何を言っているのか理解できない。
「僕は綺麗な体になったらルドがきっと喜んでくれると思っていたんだけどね…。あいつは本当に性格が悪くてかなわないよ」
しっかりと軟骨を塗り込まれたのに、ずっと手を握りしめられたままだ。
どうして離してくれないんだろう。
性格が悪いと言っているけど、ヴァンクラフトも十分性格が悪いと思う。
「ルドは僕の事をそう思っているんだね」
掴まれていた腕をヴァンクラフトに方に引っ張られ、ヴァンクラフトの腕の中に捕まってしまった。
そうだった…ヴァンクラフトは俺の考えを読めるって事を…。
考え事も慎重にならなければならないのに…。
「ルドは本当に僕から離れられると思っているの?」
どういう事?
馬車の時の記憶も曖昧で、何を言われたのかも覚えていない。
「そういえばあの時も少しだけ悪戯をしてしまったからね。ルドの記憶も曖昧になっているよね。僕が馬車の時の事を繰り返してみようか…」
一体何を…。
「僕にルドはもう要らない。他にいい子を見つけたからね」
全く意味を理解できないのに、心臓が嫌な鼓動を打つ。
段々と息が上がり俺の心をいっぱいにしていた恐怖心ではなく、違う感情が押し寄せてきた。
俺は要らない子じゃない。
他、他に…いい子がいたって…俺以外に?
違う、俺はヴァンクラフトにいい感情を抱いていない。
どうして、どうしてヴァンクラフトが俺を見てくれない事に不安を抱いているんだ?
「ルド…僕に何を言ってほしい?」
何を…言ってほしい?
俺はヴァンクラフトにどういう風に見てもらいたいの?
違う。
俺はヴァンクラフトから離れたい。
どうして俺の考えすらも全くまとまらないのだろうか?
思考すらも俺の自由じゃないの?
「げほっ…?」
急に噎せて俺は口元に手を当てたらベッタリと血が手についた。
体に何か異常があったの?
「ああ、拒絶反応が酷かったようだね。そうだ叔父上に連絡を行う事にするよ」
抱きしめられていた力が緩み、ヴァンクラフトの表情を見るとゾッとしてしまった。
仄暗い嬉しそうな表情が、本当に俺の事を心配しているのかと思ってしまった。
「状況が落ち着くまで、僕の家でルドを匿うことにするってね…」
逃げる場所を消す為の内容だった。
「い、いやだ…」
「ルドは僕から逃げられないよ?逃げたいのなら僕を、我を殺さないといけないね?」
恐ろしい言葉を淡々と告げられた。
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