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捨てないで

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ぼーっとした頭でヴァンクラフトを見ていると嬉しそうな表情で俺の事を見てくれる。
ぽすっと体を寄りかからせると頭を撫でてくれる。

嬉しくて目を閉じて受け入れてると、固唾を飲む音が聞こえた気がした。

「ルドくんが…初めて出会った殿下にここまで気を許すなんて…。本当に何をなさったのですか殿下」

「君に答えるつもりは無いと言ったけど?そこまでルドのことが心配なのかい?」

「当たり前です。先程も申し上げましたが、ルドくんは息子同然の弟子です。この状況がルドくんにとって望んでいない状況であれば、私は例え王族に歯向かってでもルドくんと殿下を引き離します」

「そっか…」

フレット先生とヴァンクラフトが何か話してる…。
きっと俺には何も関係ないよね…。

内容も上手く聞き取ることが出来ないけど、撫でて貰えるのが嬉しくてそれに甘んじる。

「ルド」

名前を呼ばれてヴァンクラフトの方に向けば、意地悪そうな笑みを浮かべていた。

「やっぱりルドの事要らなくなっちゃった」

え…?
俺のことが要らなくなった?

どうして?
あの世界で、あの狂った世界で唯一、唯一…俺を、助けてくれたのに…?

「やだ…捨てないで…俺を、俺を捨てないで下さいっ…!あの世界にひとりぼっちにしないでっ!!」

ひとりになりたくない。
ヴァンクラフトにしがみついて、散々に喚き散らし捨てないで欲しいと懇願する。

捨てられちゃうと俺は、俺は…どうやって生きていったら分からない。
そんな恐怖をもう味わいたくないっ…。

「一体これは…」

「ルド意地悪を言ってしまってごめんね。僕はルドの事を捨てないから安心して」

「本当に…?もう、俺を捨てるなんて言わない?」

もう一度言われたら本当に俺はどうにかなってしまいそう。

「もう二度と言わないよ。辛い思いをさせてごめんね」

意地悪な表情はなくなって、今は優しそうな笑顔を浮かべてくれてる。
良かった…俺はまだひとりぼっちにならなくていいんだ。

ぎゅうぎゅうとヴァンクラフトに抱きついて安心感を得るために顔を胸元に埋めた。

「これでお分かりになりましたか?僕とルドを引き離そうとすると、ルドはこうなってしまうんです」

「どうして、ルドくんはここまで不安定な子ではなかった筈です」

「どうしてでしょうね。ただお伝えできるのは、ルドは僕と離れることも…とわかつことも出来ない状態…になったということだね」

「治療時にルドくんに何をなさったのですか!」

「何度も伝えたけど答える必要が無いんだよ。ルドはもう僕のものであって、家族のものでも君のものでもない。僕の隣で幸せに生きていくだけでもう十分なんだよ」

「ルドくんの生き甲斐までも奪われるおつもりですか」

「魔道具作成だったかな。ルド本人がしたいと言うなら許すよ。したいと望むならね?」
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