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聴取会場までの道すがら
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結局聴取のメンバーは俺とヴァンクラフトとフレット先生とクルドのこの4人で行くことになった。
リリエルも行きたがっていたけど、治療件数が多くリリエルが抜けると手が回らなくなるからということで着いて来れなかった。
実際に行けるようになったのは起きてから一週間も経ってからだったかが…。
漸く動けるようになったのもつい二日前ぐらいで、二週間も寝たままの体には正直馬車に乗るのも辛いからということで、馬車の中は相当配慮されている。
馬車に俺とヴァンクラフトとフレット先生だけ乗り込み、クルドは護衛の名目で馬で移動することになった。
聴取会場は王宮の一角で行われるみたいなんだけど…どうやら俺が安静にしていた場所はヴァンクラフトに当てられた城らしい。
一応王宮の一部に当たるらしいんだけど、王宮の庭とか建物の総面積を考えると王都が半分ぐらい収まる広さをしているとかなんとか…。
それもあってひとつの建物を移動するのに歩きだとたどり着かないから、馬車に乗ったり、乗馬したりで移動しないといけないようだ。
「ヴァンクラフト殿下」
「どうされた魔道具伯爵」
「お礼を申し上げるのが遅くなり申し訳ございませんでした。ルドくんを助けて頂きありがとうございます」
「お礼は必要ないよ。君はルドの為に身を捧げてくれたでしょ?お礼はそれで十分だよ」
どういうこと?
俺を助けるために身を捧げたって…
「フレット…先生?俺の為に身を捧げたって…どういうこと?」
どうして俺を助ける為に身を捧げるなんて…。
「ルドくん、君を助けたかったからです。私にとって初めての弟子で、君を失いたくなかったのです」
普段怖い笑顔か優しそうな笑顔を浮かべてばかりいるフレット先生が、泣きそうな表情をしている。
本当に俺のことを失いたくないのがヒシヒシと伝わってくる。
「私にとって最早息子と変わりないぐらい愛おしくて、可愛い存在なんです」
「フレット先生…」
「だからルドくんが助かるなら私の身一つ捧げるぐらいなら安いものですよ」
自分一人で済んだのが嬉しいのか、少しだけ嬉しそうに微笑むフレット先生の姿は何故か痛々しかった。
「ヴァンクラフト殿下…俺からお願いがあります」
フレット先生に持ってないものが俺にはある。
いや、全世界の人から見ても持ってないものが俺にはある。
「ルド…僕のことはヴァンと呼んで?」
「そんなことは…」
「出来ないならお願い事は聞けないかな。どうする?」
従兄弟といえど王子を呼び捨てにするなんて出来ない。
でも呼び方一つでお願いを聞いて貰えるなら…不敬に問われようが構わない。
「ヴァン様…」
「様もダメだよ」
「ヴァン…どうすればフレット先生を解放してくれますか?」
「ルドくん!」
「どうしてそんなことを聞くの?これは魔道具伯爵と僕が結んだ契約のような物だよ?」
フレット先生の怒っているような声に、何を考えているのか分からないヴァンクラフトの表情。
「フレット先生は俺にとって家族の様な存在なんです。だから俺の為に身を捧げるなんてあっちゃいけないんです…」
「それなら何を言うべきか、賢いルドならわかるよね?」
「俺が代わりに「殿下おやめ下さい!!」」
想像し難い程のフレット先生の大きな声にびっくりしてフレット先生の方を見た。
フレット先生はかなり怒っていて、その怒りは俺ではなくヴァンクラフトに向いている。
「ルドくんにあんな非道な物を見せるつもりは私にはありません。今のお言葉を訂正ください」
「本当に良く僕のことを調べているね。でも魔道具伯爵…」
急に頬を捕まれると急に頭がふわふわしてきた。
夢心地のようなふわふわしたような感覚。
「ルドはもう我から離れることを許されない。そしてルド本人も望まない」
ヴァンクラフトが何を言ってるのか理解できない…。
でもきっと悪いものじゃない。
「一体ルドに何をなされたのですか」
「君に教えることはないよ」
掴まれた頬は離されたのが寂しい。
どうして俺から離れていくの…。
もっと俺を…見てよ…。
リリエルも行きたがっていたけど、治療件数が多くリリエルが抜けると手が回らなくなるからということで着いて来れなかった。
実際に行けるようになったのは起きてから一週間も経ってからだったかが…。
漸く動けるようになったのもつい二日前ぐらいで、二週間も寝たままの体には正直馬車に乗るのも辛いからということで、馬車の中は相当配慮されている。
馬車に俺とヴァンクラフトとフレット先生だけ乗り込み、クルドは護衛の名目で馬で移動することになった。
聴取会場は王宮の一角で行われるみたいなんだけど…どうやら俺が安静にしていた場所はヴァンクラフトに当てられた城らしい。
一応王宮の一部に当たるらしいんだけど、王宮の庭とか建物の総面積を考えると王都が半分ぐらい収まる広さをしているとかなんとか…。
それもあってひとつの建物を移動するのに歩きだとたどり着かないから、馬車に乗ったり、乗馬したりで移動しないといけないようだ。
「ヴァンクラフト殿下」
「どうされた魔道具伯爵」
「お礼を申し上げるのが遅くなり申し訳ございませんでした。ルドくんを助けて頂きありがとうございます」
「お礼は必要ないよ。君はルドの為に身を捧げてくれたでしょ?お礼はそれで十分だよ」
どういうこと?
俺を助けるために身を捧げたって…
「フレット…先生?俺の為に身を捧げたって…どういうこと?」
どうして俺を助ける為に身を捧げるなんて…。
「ルドくん、君を助けたかったからです。私にとって初めての弟子で、君を失いたくなかったのです」
普段怖い笑顔か優しそうな笑顔を浮かべてばかりいるフレット先生が、泣きそうな表情をしている。
本当に俺のことを失いたくないのがヒシヒシと伝わってくる。
「私にとって最早息子と変わりないぐらい愛おしくて、可愛い存在なんです」
「フレット先生…」
「だからルドくんが助かるなら私の身一つ捧げるぐらいなら安いものですよ」
自分一人で済んだのが嬉しいのか、少しだけ嬉しそうに微笑むフレット先生の姿は何故か痛々しかった。
「ヴァンクラフト殿下…俺からお願いがあります」
フレット先生に持ってないものが俺にはある。
いや、全世界の人から見ても持ってないものが俺にはある。
「ルド…僕のことはヴァンと呼んで?」
「そんなことは…」
「出来ないならお願い事は聞けないかな。どうする?」
従兄弟といえど王子を呼び捨てにするなんて出来ない。
でも呼び方一つでお願いを聞いて貰えるなら…不敬に問われようが構わない。
「ヴァン様…」
「様もダメだよ」
「ヴァン…どうすればフレット先生を解放してくれますか?」
「ルドくん!」
「どうしてそんなことを聞くの?これは魔道具伯爵と僕が結んだ契約のような物だよ?」
フレット先生の怒っているような声に、何を考えているのか分からないヴァンクラフトの表情。
「フレット先生は俺にとって家族の様な存在なんです。だから俺の為に身を捧げるなんてあっちゃいけないんです…」
「それなら何を言うべきか、賢いルドならわかるよね?」
「俺が代わりに「殿下おやめ下さい!!」」
想像し難い程のフレット先生の大きな声にびっくりしてフレット先生の方を見た。
フレット先生はかなり怒っていて、その怒りは俺ではなくヴァンクラフトに向いている。
「ルドくんにあんな非道な物を見せるつもりは私にはありません。今のお言葉を訂正ください」
「本当に良く僕のことを調べているね。でも魔道具伯爵…」
急に頬を捕まれると急に頭がふわふわしてきた。
夢心地のようなふわふわしたような感覚。
「ルドはもう我から離れることを許されない。そしてルド本人も望まない」
ヴァンクラフトが何を言ってるのか理解できない…。
でもきっと悪いものじゃない。
「一体ルドに何をなされたのですか」
「君に教えることはないよ」
掴まれた頬は離されたのが寂しい。
どうして俺から離れていくの…。
もっと俺を…見てよ…。
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