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サミュエルの罰

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ヴァンクラフトから向けられた視線にドギマギしている中、父さんとヴァンクラフトの話は進んでいく。
父さんが平民になったからか、どうすれば今後安定させることができるのか聞いてるのだろうか。

「有益な情報ありがとうございます。予想ではありますが、今回の報酬は王族の位とはまた別の爵位を頂くことになりそうです」

「そうかもしれないね。何せ聖者であるルドの命を救ったのはこの世界を救うのと同義になるからね。きっと兄上は最低でも伯爵位は与えてくれると思うよ」

俺の命を救っただけで伯爵位になるなんて…聖者というのはそれ程重要なんだ。
でも、正直俺はこの力で色んな人を助けたいなんて思うことが出来ない。

あの世界で味わってしまった出来事は深く俺の中に根付いてしまって、味方である人達しか見てないから分からないけど…きっと、人によっては俺は受け入れられないかもしれない。

「叔父上そういえばルドからあの子爵令息についてお話を聞いたのですが、あの令息はどうなったのでしょうか?」

「あぁ…あの、手の施しようがない少年のことかな」

「ノヴェルト子爵令息に関して、叔父上が知る限りの情報をルドにお話頂けませんか?ルドにも知る権利はありますので」

「そうだね…。話してもいいかなルド?」

聞きたい内容だったから頷く。
父さんが覚悟を決めたようにポツポツと話し出してくれた。

「ノヴェルト子爵令息の罰はまだ何も決まっていないんだ」

他の攻略対象者達には罰が下ったのに、サミュエルには罰が下ってないってどういうこと?
だって…あんなに酷いことをしてきたのに、罰が下ってないことあるの?

「実はね、ルド本人が居ないと罰を決めることができなかったんだ。それぐらい重たいというのもあったけど、ノヴェルト子爵令息は長年ルドのことを苦しめ続けてきたその経歴があって、当人の証言なしでは罰を決めることができないって判断が下ったんだ。だから、ルドが元気になったらノヴェルト子爵令息の罰を決めるための証言をしてもらう必要があるんだ」

俺の証言待ち?
そんなの聞かずに正直さっさと罰を下して欲しかった。

もうサミュエルの声を聞きたくないし、顔も見たくない。
それぐらい嫌なのに俺はまた会わなきゃいけないの?

「嫌だ…絶対アイツに会いたくない…」

「分かっているよ。だから本来は二人が揃った状態で話し合いをしなければならないんだけど、ルドの精神状況と今までのノルヴェル子爵令息の行動を踏まえた上で聴取を別々で行うことが決まったんだ」

「もし一人が怖いなら…僕がその聴取に着いて行きますよ」

「ヴァンクラフトくんは今までの事に関係はないから…もし、ルドが大丈夫ならお願いしたいかな。私はまだ処理をしなければならないことが多くてね」

父さんではなく俺に取っては初めて会ったばかりの人と一緒に行くのは憚られてしまう。
どうしても家族とフレット先生以外と行動するのは怖い。

「ルド安心して。流石にヴァンクラフトくんと二人ではなく、フレットも一緒に聴取に立ち会ってくれるからね。それに今回ヴァンクラフトくんと一緒に動いてもらうのは、別のルドを狙う勢力もいるから王子であるヴァンクラフトくんと一緒にいれば、不要な接触は回避できるようになるからだよ」

別の勢力?
こんな俺を狙っても何もいいことがないのに…。

「聖者としてのルドと、天才魔道具師としてのルド…両方とものルドが狙われているんだ。王家の庇護下にいると分かれば簡単に手出しはできないけど、それでも狙ってくる勢力が沢山いるんだ」

「それは…俺のせいで王子様の手を煩わせる事にならない…?」

「僕が申し出たんだよ。だから、ルドは僕に守られてほしい」

手を取られて甲にキスをしながら微笑まれると、ぶわっと顔が赤くなったのが分かるぐらい恥ずかしい!!

「おやおや…ルドにもそういう一面を見る事が出来て嬉しいよ」

父さん!?
そ、そんな可愛い内容じゃないと思うんだけど!?!?

びっくりし過ぎてってのもあるけど、それ以上に恥ずかしさが勝って声なき悲鳴をあげた。

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