お助けキャラに転生したのに主人公に嫌われているのはなんで！？

ストーリーが開始されました！

私は高貴な存在 ※サミュエル視点

ここまで近づければ魅了がきっと効くわ。
こんなイケメン逃してなる物ですか！

こんな可愛いサミュエルが上目遣いで見れば後押しにもなるわ。
うるうると瞳を潤ませて、軽く口を物欲しげに開いたらもっと可愛い私の出来上がり。

だけど思っている反応はヴァンクラフトから返ってこなかった。
私を冷めた目で見ていて、まるで穢らわしいと言わんばかりの目で見てくる。

ど、どうして？
私はこんなに可愛くて、小さくて、いい匂いで、守ってあげたくなるような感じなのよ？

そんな子を捨て置いてあんな平凡なやつの方が良いっていうの！？
信じらんない！

こんな美少年で魅了の魔法を掛ければイチコロでしょ！？
私に惚れない男なんていないのよ！？

「いつまで僕に触れている」

あまりにも鋭い視線に体が勝手に離れた。

「あ、あの…僕…」

「たかが子爵令息如きが僕に触れる事自体が烏滸がましい」

この私が烏滸がましい？
第四王子のエルネストに愛されている私が？

前世では沢山の人に愛されたこの私が？
ありえない発言に怒りで体が熱くなるのが感じる。

そうだわ。
この能無しと有名な第五王子を悪に仕立て上げれば良いのよ。

そうしてその悪になった第五王子を失墜させれば私は英雄になれるわ！

「烏滸がましいなんて…酷いです…。僕は、転んでただヴァンクラフト様に掴まってしまっただけなんです…」

ハラハラと涙を零せばこれで私は可哀想な人の出来上がりよ。
これで周りだってきっと！

そう張り切って周りを手の隙間から見たけど、周りの視線は冷たい物ばかりだった。
どうしてそんな視線を向けてくるの？

だって私は…この無能に酷い事を言われたのよ？
聖者になるこの私をよ？

「懇意にしている第四王子殿下であればまだしも…、お知り合いですらない第五王子殿下にあの態度は酷いわ」

「酷いと噂に聞いていたが、ここまで酷いとは思いもしなかった。お父様に言ってノヴェルト子爵家とは懇意になされない方がいいとお伝えした方がいいだろう」

さっきまで私の事を庇っていてくれたのに、急に手のひらを返した様に私を攻撃してくるのはなんで？
か弱い私が攻撃されているのに、誰も助けてくれないのはなんで？

私は…私はとても可哀想なのよ？
どうしてどうしてどうして！？

「自分がどれだけ愚かな行動をしたとはわかっていないようだね」

私が愚か？
そんな訳がないじゃない！

「僕は、そんな事をしていません！信じてください！」

「分かってない様ならもう生きる価値もない様だね」

あの無能が私の方に背を向けたら何故か私は地面に伏せっていた。
ぐっと頭を押さえつけられ、起き上がることもできない。

「殿下こちらの処理はお任せください」

「勝手にしていいよ。僕はルドの治療をするから」

「かしこまりました。それでは、ノヴェルト子爵令息…いえ、罪人サミュエル貴方を拘留いたします」

意味がわからなかった。
どうしてこの私が拘留されるの？

聖者でとても高貴な私が？
この私が罪人？

受け入れられない事実に私は無能の背中を見ることしかできなかった。