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サミュエルの暴挙

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「そ、そんなことないですっ!僕は…僕はいつかは凄い人になるからっ…」

サミュエルは支離滅裂に口走っている。

「僕は、僕は何れ聖者として覚醒するんだ!そんな凄い聖者である僕を加害者の様にするなら治癒団が許さないですよ!」

何れか…
その何れは俺のせいで訪れることはないのに。

そんないつ来るかも分からない奇跡の光が自身に宿るとでも思っているのだろうか…。
他の条件をクリアしてても救いたい気持ちを持つことも無く、危害を加えて排除するかそれとも服従させるかしか能がないサミュエルに人を救う気持ちを持てという方が酷なのだろうか。

「聖者を騙る事がどれだけ重大な罪になるのかご存知ですか?」

「ぼ、僕は何も騙ってないっ!だって僕は僕はっ…聖者になる為にここに来たんだからっ!!!」

本当に無茶苦茶だ。
聖者なのに、聖者になる為にここに来た。

「フレット先生…サミュが言ってることは事実です!」

「そうです!サミュは僕たちの事を救ってくれました!」

「その悪魔の洗脳から救って下さったんです!」

雨では覚醒しきれなかった様でまた皆おかしな状態に戻った。
向けられるのは敵意ある視線なのに、全員の目は虚ろだ。

「ルドくん少し大人しくしていて下さい」

フレット先生の言葉に頷くと、サミュエルの周りに展開されていた魔法がサミュエルに向けて放たれた。
オレの事を盾にしようとしたんだろうけど何かに阻まれ、近づくことが出来ずに魔法をモロに食らっていた。

怪我をしないようにと調節されていた様で、パッと見サミュエルが怪我を負ってるようには見えない。
後ろに倒れる姿を見送ってからフレット先生の元に駆け寄った。

「痛い…」

ぽつりと痛みを訴える声。

「痛い痛い痛い痛い痛いぃぃぃぃいいい!!!」

殆ど威力もなく、ただ後ろに押されるだけの力しかない魔法に痛みなんてあるわけがない…。
一体サミュエルは何をしたいんだ…?

「僕の、僕のおぉぉぉ…」

呻き声は意味がわからない言葉になり、段々とサミュエルが恐ろしい何かに思えた。

「僕の為の世界なのにぃいいい!!!」

咆哮に近い叫び声。
髪を両手で乱しながら立つ。

「僕は、僕は…

一人称が僕から私に変わった。
もしかしてサミュエルの中に入ってるのは男性ではなく女性か。



向けてこられたのは殺意と、殺傷性が高い攻撃魔法だった。
少し前の防御魔法の魔道具であれば防ぐことが出来ないけど…今日作ったばかりの強化魔道具であれば問題なく防ぐことができる。

ピアスを耳から外そうとすると手を掴まれた。
どうして行動が阻まれ…

「サミュに力を返しなさい平民」

一体誰に阻まれたか分からないまま俺は魔法を全身に受けた。
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