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注射器は嫌いです
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ふっと目を覚ませば普段見ていた景色とは違う景色だった。
キョロっと周りを見回せば、父さんが椅子に座りながら寝ていた。
どうして俺はここにいるんだろうか…。
腕には管が繋がれていて、点滴をされている事から病院にいる事だけはわかる。
ただ部屋がかなり豪華な場所で本当にここは病院なの?
体もかなり重たくて起き上がれる気がしない…。
「ルド…」
名前を呼ばれて父さんの方にゆっくりと向いたけど、寝言だったようで父さんの目はしっかりと瞑っている。
何できない状態でぼーっとしていれば、どれぐらい時間が経ったかわからないけど扉から人が入ってきた。
白衣を着た人で赤色の腕章をつけている。
「起きられたのですね。調子はいかがですか?」
優しそうに笑いかけながら俺の側に来た。
手元には点滴剤と注射器を乗せた盆があった。
変に現代チックなこの道具達に顔が引き攣った。
俺…注射器嫌いなんだよね…。
体調を治すために打つ注射だって頭では分かっているけど、どうしても注射器だけは嫌いなんだ。
魔道具を作る為に痛い思いをしているけど、それとはまた注射器は別なんだ!
「注射がお嫌いなんですね。ルド様のお父様も注射器がお嫌いで、幼少期の頃はそれはそれはよく逃げ惑われていましたよ」
父さんも注射器が嫌いなんだ。
変な共通点を見つけられて嬉しくも思いながらも、こんな豪華な部屋をもつ医師と小さい頃から知っている父さんは一体何者なんだろう。
俺たちは紛れもなく平民一家なんだ。
商会が大きくて普通の平民一家よりは裕福な事も理解している。
でも、父さんも母さんも平民である事は間違いないんだ。
この国は戸籍がしっかりとしていて、平民であろうが浮浪者であろうが皆必ず戸籍を持っている。
それぐらいしっかりとした国で戸籍を偽るなんて事はできない…。
「まだお伝えされていなかったのですね。必ずお話があるかと思いますので、ルド様はお待ちしているだけで大丈夫ですよ」
いつの間にか布団から出された腕に針が刺さろうとしている。
「あ、お気づきになられましたか?」
何事もなかったかのようにブスリと針を刺されて痛みと驚きで叫んでしまった。
「ルド!?」
俺の叫び声で起きた父さんも、俺の名前を叫びながら側に来た。
ただ注射器を刺されているだけでの姿を見てポカンとしたあと、今まで聞いたことがないぐらい大笑いし始めた。
「そ、そんな笑う事じゃないじゃん!」
「はははっ!本当に、ルドは…くくっ…」
笑いすぎて言葉を紡げてない父さんを見て、俺も口元が緩んで笑ってしまった。
注射器が終わってもずっと笑い続けて、俺たち親子二人の笑いが止まるのにそこそこ時間がかかってしまった。
キョロっと周りを見回せば、父さんが椅子に座りながら寝ていた。
どうして俺はここにいるんだろうか…。
腕には管が繋がれていて、点滴をされている事から病院にいる事だけはわかる。
ただ部屋がかなり豪華な場所で本当にここは病院なの?
体もかなり重たくて起き上がれる気がしない…。
「ルド…」
名前を呼ばれて父さんの方にゆっくりと向いたけど、寝言だったようで父さんの目はしっかりと瞑っている。
何できない状態でぼーっとしていれば、どれぐらい時間が経ったかわからないけど扉から人が入ってきた。
白衣を着た人で赤色の腕章をつけている。
「起きられたのですね。調子はいかがですか?」
優しそうに笑いかけながら俺の側に来た。
手元には点滴剤と注射器を乗せた盆があった。
変に現代チックなこの道具達に顔が引き攣った。
俺…注射器嫌いなんだよね…。
体調を治すために打つ注射だって頭では分かっているけど、どうしても注射器だけは嫌いなんだ。
魔道具を作る為に痛い思いをしているけど、それとはまた注射器は別なんだ!
「注射がお嫌いなんですね。ルド様のお父様も注射器がお嫌いで、幼少期の頃はそれはそれはよく逃げ惑われていましたよ」
父さんも注射器が嫌いなんだ。
変な共通点を見つけられて嬉しくも思いながらも、こんな豪華な部屋をもつ医師と小さい頃から知っている父さんは一体何者なんだろう。
俺たちは紛れもなく平民一家なんだ。
商会が大きくて普通の平民一家よりは裕福な事も理解している。
でも、父さんも母さんも平民である事は間違いないんだ。
この国は戸籍がしっかりとしていて、平民であろうが浮浪者であろうが皆必ず戸籍を持っている。
それぐらいしっかりとした国で戸籍を偽るなんて事はできない…。
「まだお伝えされていなかったのですね。必ずお話があるかと思いますので、ルド様はお待ちしているだけで大丈夫ですよ」
いつの間にか布団から出された腕に針が刺さろうとしている。
「あ、お気づきになられましたか?」
何事もなかったかのようにブスリと針を刺されて痛みと驚きで叫んでしまった。
「ルド!?」
俺の叫び声で起きた父さんも、俺の名前を叫びながら側に来た。
ただ注射器を刺されているだけでの姿を見てポカンとしたあと、今まで聞いたことがないぐらい大笑いし始めた。
「そ、そんな笑う事じゃないじゃん!」
「はははっ!本当に、ルドは…くくっ…」
笑いすぎて言葉を紡げてない父さんを見て、俺も口元が緩んで笑ってしまった。
注射器が終わってもずっと笑い続けて、俺たち親子二人の笑いが止まるのにそこそこ時間がかかってしまった。
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