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あきらめたこころ
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あの日ラクレル様と呼ばれた貴族に魔道具師になるように言われてから三日経った。
一時的な家として父さんが手配した家に帰ってから俺は部屋に篭り続けた。
大好きな魔道具作りも全くせず、食事にも一切手をつけないでひたすら篭り続けている。
権力によって、実績によって魔道具師になることは望んでいなかった。
魔道具師候補になった時ですら、正直渋々だったぐらいだ。
渋々なったらなったで、やっかみで魔道具師からは遠巻きで文句を言われ、魔道具師候補にようやくなれた人からは素材を盗まれたりと既に散々な目にあっている。
フレット先生が俺のパトロンであるからこの程度で済んでいるけど、フレット先生というパトロンがいなければもっと酷い目に遭っていただろう。
既に酷い目にあっているのに、あの貴族はもっと酷い目に遭えと言っているようにしか聞こえなかった。
あの貴族が俺の状況を知っている訳がないから、俺が魔道具師から疎まれているなんて事は知らない。
高位の貴族だから良い待遇しか受けてこなかったんだろう。
そんな良い待遇だけを受けていれば、そこらで起きているいじめなんて些末な事なんだ。
嫌な考えだけがずっと頭の中で居座って、本当に何もやる気が起きなかった。
作業道具だけはメンテナンスをなんとかすることができるけど、本当にそれ以上の事は何もしたくなかった。
ずっと引きこもって、ご飯も食べずに過ごしていたら既に四日目に突入していた事に気がついた。
最近引きこもり続けて、雨戸も閉めてしまっていたから今が朝なのかも、夜なのかも知らずに過ごしていた。
このまま引きこもり続けていれば何も見なくて済むんじゃないかな。
それなら辛い目にも会わずに済むし、何も心配せずにゆっくりと過ごせることができる。
高価で販売回数が限られているけど、商品が売れればお金が入ってくるから質素な生活をすればそれで生き続ける事もできる。
俺は頑張りすぎたんだから少しぐらい休んでも罰は当たらないよね。
空腹も通りすぎて何も感じなくなったから少しは寝やすいかな…。
今日も父さんが扉を叩く音が聞こえるけど、その音が今日はやけに遠く聞こえた気がした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ようやく息子の部屋を開くことができた。
かなり酷い音を立てて開けた筈なのに、息子は起き上がってくる様子が全くない。
「ルド?」
声をかけても返事がない。
嫌な予感がして布団を捲れば、か細い呼吸をしているだけの息子がベッドの上で寝ていた。
「ルド!!」
驚きで大きな声で息子の名を呼んでも反応しない。
その様子にゾッとして息子を抱えながら馬車に乗り込んだ。
昔息子が高熱を出したあの出来事以来、こんな酷い事にはならないようにとずっと願っていた。
私は…私はあの地位を捨てるべきではなかったと、後悔しても仕切れない。
どうか息子を連れて行かないでください。
ぎゅっと息子を抱きしめながら医師の場所にたどり着くまで気が気ではなかった。
一時的な家として父さんが手配した家に帰ってから俺は部屋に篭り続けた。
大好きな魔道具作りも全くせず、食事にも一切手をつけないでひたすら篭り続けている。
権力によって、実績によって魔道具師になることは望んでいなかった。
魔道具師候補になった時ですら、正直渋々だったぐらいだ。
渋々なったらなったで、やっかみで魔道具師からは遠巻きで文句を言われ、魔道具師候補にようやくなれた人からは素材を盗まれたりと既に散々な目にあっている。
フレット先生が俺のパトロンであるからこの程度で済んでいるけど、フレット先生というパトロンがいなければもっと酷い目に遭っていただろう。
既に酷い目にあっているのに、あの貴族はもっと酷い目に遭えと言っているようにしか聞こえなかった。
あの貴族が俺の状況を知っている訳がないから、俺が魔道具師から疎まれているなんて事は知らない。
高位の貴族だから良い待遇しか受けてこなかったんだろう。
そんな良い待遇だけを受けていれば、そこらで起きているいじめなんて些末な事なんだ。
嫌な考えだけがずっと頭の中で居座って、本当に何もやる気が起きなかった。
作業道具だけはメンテナンスをなんとかすることができるけど、本当にそれ以上の事は何もしたくなかった。
ずっと引きこもって、ご飯も食べずに過ごしていたら既に四日目に突入していた事に気がついた。
最近引きこもり続けて、雨戸も閉めてしまっていたから今が朝なのかも、夜なのかも知らずに過ごしていた。
このまま引きこもり続けていれば何も見なくて済むんじゃないかな。
それなら辛い目にも会わずに済むし、何も心配せずにゆっくりと過ごせることができる。
高価で販売回数が限られているけど、商品が売れればお金が入ってくるから質素な生活をすればそれで生き続ける事もできる。
俺は頑張りすぎたんだから少しぐらい休んでも罰は当たらないよね。
空腹も通りすぎて何も感じなくなったから少しは寝やすいかな…。
今日も父さんが扉を叩く音が聞こえるけど、その音が今日はやけに遠く聞こえた気がした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ようやく息子の部屋を開くことができた。
かなり酷い音を立てて開けた筈なのに、息子は起き上がってくる様子が全くない。
「ルド?」
声をかけても返事がない。
嫌な予感がして布団を捲れば、か細い呼吸をしているだけの息子がベッドの上で寝ていた。
「ルド!!」
驚きで大きな声で息子の名を呼んでも反応しない。
その様子にゾッとして息子を抱えながら馬車に乗り込んだ。
昔息子が高熱を出したあの出来事以来、こんな酷い事にはならないようにとずっと願っていた。
私は…私はあの地位を捨てるべきではなかったと、後悔しても仕切れない。
どうか息子を連れて行かないでください。
ぎゅっと息子を抱きしめながら医師の場所にたどり着くまで気が気ではなかった。
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