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先皇陛下の死について

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「そうか…そんな考えがあるんだね。ルドありがとう」

「まだ何も助けになってないけど…、少しでも考えの足しになればいいかなとは思ってる」

最後の方はモゴモゴしてしまってはっきりと話す事ができなかった。
これ以上お互いに話す事がなくなって、目的地に辿り着くまでは沈黙状態だった。

馬車から見える景色は思っている以上に面白みがなくて、ただ流れていく景色を眺めているだけだった。
ようやく到着した場所は魔力測定の時に行った教会だった。

嫌な思い出が詰まっているから、測定日以降足を向けた事はなかった。
教会には真っ黒な垂れ幕が飾られており、しめやかな葬儀が執り行われている様に思えた。

馬車から降りると人が溢れかえっていた場所だったのに、人っこ一人いない状態だった。
何も言わずに父さんの後ろを着いて歩けば、教会の中でも多分豪華な扉の前に着いた。

父さんが扉を叩けば中から低い声が入るように促してきた。
父さんに続いて部屋の中に入れば、小洒落た服を着た多分貴族が三人ほどいた。

全員俺よりも年上だろうけど、一人だけ多少俺と近い年齢の大人がいた。
一人はキラキラとした綺麗な金髪をしていて、瞳は碧眼でこれぞザ・外国人みたいな感じで謎の親近感が湧く。

二人の片方は女性で綺麗な深緑色をした髪を緩く巻いている。
センスで口元を隠し、表情がわかりにくい。

もう片方はおじいちゃんで、髪の毛は全て白髪になっていて若干禿げかけている。
だけど背中はまっすぐで、年齢を感じさせないぐらいしっかりした感じがある。

「お久しぶりでございます」

「久しぶりですね。今日はご子息を連れてきたのですか?」

「お久しぶりでございます。あの小さな方がここまで大きくなられて私は感激でございます」

各々が口を開くが、放たれた言葉は全て父さんを懐かしむような感じだ。
父さんの交友関係がイマイチ理解できない。

「お久しぶりでございます。本日はお話したい事がありこうして馳せ参じました」

「申せ」

「私の身分ではございますが、先皇陛下は本当に病死なされたのでしょうか?」

「何故そう思ったのだ?先皇陛下は間違いなく病死と診断された。それを覆す事になると、王族付きの医師を疑わないといけなくなる。あの誓約書付きの医師をだ」

誓約書ってなんの誓約書なんだろう。
その誓約書があるから医師が犯人ではないと断定できるんだろう。

何かがあればその誓約書がきっと機能してしまうから。
それならば薬に詳しくて、誓約書の範囲外の人が犯人なんじゃないのだろうか?

「口を挟むことをお許し頂けますでしょうか?」

ただの平民である俺が父さんと貴族の話を遮る事は許されないだろう。
ただ賭けのような遮りにごくりと喉が鳴った。

「申したいことがあれば申せば良い」

「お…私は、多分その王族付きの医師はきっと先皇陛下に毒を盛る役割にされただけだと思います」

「続けよ」

「医師は医師が尊敬する人から先皇陛下の病気に良く効くという薬を渡されたのではないのでしょうか?そうすれば医師にとってはその貰った薬はただの薬になりますし、悪意ではなく善意を持って行動をする事になるので誓約書は反応しなかったのではないのでしょうか」

俺のただの発言に金髪の貴族の人は眉根を顰めながら考え込んでいる。
誓約書自体はどういう機能をついているかはわかっていない。

ただ誓約書という文字からどういう物かはあらかた想像する事ができる。

「なら、その犯人は一体誰なのだ?」

「犯人までは分かりません。ですが、毒を調合した本人はきっと…医者の尊敬に当たる方でしょう。大々的な調査を行なってしまうと、姿が無くなってしまうかもしれませんので、診察という体で呼び出して情報を抜き出して頂くのが良いかと思われます」

今の手札ではこれ以上の事はわからない。
まさか父さんと馬車の中で話していた先皇陛下が崩御した内容をここで話すとは思ってもみなかった。

そして、病気であったということも。

「そうか…。バラルトロイ…先皇陛下の薬は持っているか?」

「ええ、持っておりますよ」

バラルトロイと呼ばれた老人が胸元から小さな袋を取り出した。

「それが陛下がお飲みになられていた薬か。誰か毒を検知する魔道具は持っておらぬか?」

金髪の貴族の質問に誰も応えない。
俺も持っていないから、応えてあげることができない。

道具があればまた別の話ではあるけど…。
キョロキョロと部屋を見回したら、少し古びたネックレスが目に入った。

ネックレスに使用されている宝石は魔石で、光を失っているから効力がなくなったただの魔石だった。
魔法陣は全て頭の中に入っているから、これなら毒を検知する魔道具が作れるかもしれない!
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