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ノネリアくんはやっぱり残念な子でした

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「あの…よかったら私もう一本別のを持ってますので、ご迷惑でなければ使ってくれますか?」

怖いだろうに怯えながら俺にペンを差し出してくれるファミリエ。
その優しさにあやかりたいけど、ここで受け取ってしまうとファミリエがノネリアに目を付けられてしまうかもしれない。

平民が貴族に対処できる訳がないのは身をもって知っているから、ファミリエの事を考えてあげると受け取らない方が得策だ。

「ファミリエさんお気持ちだけ受け取るよ。俺を助けてしまうと…、貴族に目を付けられてしまうかもしれないからね」

最後の方の言葉はノネリアに聞こえると不都合だから、耳元に寄って聞こえないように囁いた。
顔を真っ赤にしながら離れられたから、気持ち悪くて怒っちゃったかな…。

「わ、私のことまで考えてくれてありがとう…。でも、ペンがないと授業受けられないよ?」

「んー、多分大丈夫なんじゃないかな?フレット先生は公平さを第一に置いているからね?」

言っている事は分からなかったようで、キョトンとした表情で俺の事を見てくる。
フレット先生がどういう性格かを知っているから、言える事だけどフレット先生の事を魔道具作成の第一人者程度しか知らなかったら分からない事だよね。

どうせこの壊れたペンもノネリアのお家に請求される。
俺からではなく、国から。

「授業について行けず落第点を貰ったらいいさ!」

捨て台詞を吐き自席に戻るノネリアの姿を見送ってから前を向いた。
こんな物サミュエルと比べたら可愛いぐらいだ。

このタブレットも作っている最中何度権利を奪われそうになったか。
流石にこの権利は奪われたくなくて、フレット先生に助けを求めてなんとか権利を奪われずに済んだ。

代わりに多大な被害を生んでしまったけど…。
俺はもう二度と子を成せない体になってしまった。

権利さえあれば生きていけるから、子を成せなくなるぐらいなら可愛いものだと思って生きていくしかない。
何度も何度も巧妙に誰にも見えない様に、しつこく俺の場所を壊そうとしてくるサミュエルが本当に嫌いだ。

授業の始まりのチャイムが鳴ると同時に先生が教室に戻ってきた。
その後ろに機械人形が大量の荷物を乗せた手押し車を押しながら入ってきた。

何台も続く手押し車の量に後ろから絶句するような声が聞こえる。
いつかは見慣れてしまう光景なんだろうな。

俺も流石にここまでの大量の資材は見たことがないから、絶句するしかできない。
最後の機械人形が入ると教室の扉がガチャンっと音を立ててしまった。

「それでは今日の授業の資材が揃いましたので、授業を始めましょう」

笑顔で授業を進める先生を見て久々に地獄を味わうのだとわかってしまった。

「それでは一限目の授業内容の感知の魔道具作成を致しましょう。まずは先に作業に必要な物を持っているか確認を致します」

次々と確認されていく作業道具。
唯一俺はペンを壊されてしまったから、ペンのところだけは挙手できなかった。

「ルドくん、魔道具の授業にはペンが必須ですが何故忘れてきたのですか?」

「持ってきましたが、クラスメイトに叩き壊されので挙手できませんでした」

保護下にいるから言えるのではない。
俺は学校を卒業していないから、魔道具師を名乗れていないだけでほぼ魔道具師として活躍はしている。

だから、そのほぼ魔道具師の作業道具を壊すことは、魔道具師の作業道具を壊す事と同義になる。
ちなみに魔道具師の作業道具を壊せば例え魔道具師が平民であろうとも、そこそこ重たい罪を受けることになる。

一番軽い罪でも壊した作業道具の費用支払いだ。
重たければ3~4年は作業道具を壊した魔道具師への無償援助だ。

無償援助された魔道具師の金の荒さは悪い意味で有名だからな。
確かどこかのボンボン貴族がやらかして、たった半年でお金を全部食い尽くされた話は有名だしな。

「あのペンを?説明はしなかったのですか?」

「しましたが、納得頂けなかったようです」

「はー…ルドくんのペンを壊した方は素直に挙手しなさい」

ノネリアは悪びれもなく手を挙げた。
あえて名前を上げなかったのに、自身で手を挙げるなんて…あのペンただの子爵家に払えるんだろうか…。

「ノネリアくんですか…。態度はよろしくないと思っておりましたが、ここまで横暴な態度を取られますと学校側もあなたを庇うことができませんが?」

「庇って貰う必要なんてありません!なんたって僕はアースヴェル子爵家の者なのですから!」

恥ずかしげもなく子爵家の人間である事を胸を逸らしながら話すノネリアが可哀想に見えた。
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