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ノネリアくんは空気の読めない子

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最後の一文字を書き終えると俺たちの方にフレット先生が向き直った。
黒板に書かれている今日の予定は今日で終わるか分からない物だった。

俺なら無理すればなんとかできると思うけど、他の生徒は絶対に無理だと思うレベルの詰め込み予定だ。

「せ、先生?その予定は私たちには難しくありませんか?」

「できるでないではありません。この量は五歳児の子供も行えた内容でありますので、十六歳の皆さんなら必ず遂行できます」

身に覚えのある過密スケジュールではあるけど、転生者だから五歳児の俺ができたのであって中身はそこそこのおっさんなんだっ!
おっさんで仕事もしていたから過密スケジュールに適応ができたが、人生一回目のこの子らでは厳しい部分はあるだろう。

「フレット先生」

「どうしましたか?」

「魔道具作成の豊富な経験があるクラスメイトであれば問題ないと思いますが、経験値が浅いクラスメイトにはかなり厳しい予定かと思います。きっとどこかで限界を迎える生徒も出てきますが、補講などは行われる予定はあるのでしょうか?」

「この学校の魔道具クラスに入学できたという事であれば、私が立てた予定もこなせると思うのですが?」

「こなせて当たり前だ!お前の様な平民は苦労するだろうがな!」

せっかくフレット先生の暴挙を止めようと思ったのに、ノネリアに邪魔をされてしまった。
他の貴族たちもうんうんと縦に頷いている。

確かにただの授業であればこの過密スケジュールもこなせるだろうけど…。
魔道具を製品化できる品質以外は失敗だと認める先生のあのチェックがどれだけ地獄か…。

もう知らね。
頭を抱え机に突っ伏した。

絶対怒ってるフレット先生に突きつけられる品質は最高品質になりそうだ。
最高品質の物とか百個に一個作れればいい方だよ…。

今日の予定に頭を抱える事しかできなかった。

「ホームルームはこれで終了します。一限目までは十分程準備時間がございますので、一限目の準備をしていてください。材料はこちらで用意致します」

フレット先生が教室から出ていく足取りが軽い。
足取りが軽い時の先生程嫌な予感しかしない。

覚悟を決めて授業に挑むしかない。
カバンからペン型の魔道具と、魔法陣を描くための用紙を取り出し机の上に置いた。

初日から魔道具を作るとは思っていなかったから、普段使っているナイフがないから予備のナイフを取り出してペン型魔道具の横に並べた。

「おいお前!」

「ん?」

「その魔道具は僕が開発した魔道具だ!お前が使うなら金を今すぐよこせ!」

ノネリアの横暴な発言に嫌な顔になりかけたけど、どうにか頑張って笑顔にする事ができた。

「媚びたってビタ一文安くしてやらないからな!ほら早く金貨十枚払え!」

金貨十枚は前世でいう所の十万円ぐらいだ。
この世界で金貨十枚は平民家族五ヶ月分の給料に値する。

それを平民だとわかっている俺に態々高額な金を吹っ掛けるのは、単に平民である俺がノネリアより実績があるのが嫌でしている事だ。
まあ、俺が使っているのがノネリアが改良したペン型魔道具であれば吹っ掛けも成功しただろうな。

「これノネリアくんの改良型じゃないけど?」

「僕の名前を呼び捨てにするな!それに僕の改良型じゃない訳ないだろ!僕の後に改良型が出たなんて論文は提出されていない!」

「機能が高過ぎて使用場所も限られてしまったから、論文は全体公開されていないだけだよ。きっとノネリアくんのお父さんなら閲覧できると思うから、聞いてもらってもいいよ」

「そんな訳ないだろ!」

俺のところまでズカズカと歩いてきて、ペンを取ると床に叩きつけた。
意外と魔道具は繊細だから簡単に分解してしまってバラバラになってしまった。

この魔道具作るのにそこそこ時間かかったんだけどなー。
バラバラになった魔道具を拾い上げた。

直したかったけど部品が一部割れていたりしていたから、完全に直すことができなくてため息が出た。

「ふん!僕の魔道具を勝手に使った罰だ!」

嬉しそうに話しているノネリアに苛立ったけど、まだ子供だからと何度も頭の中で唱えて怒りを抑えた。
しかし、今日はこのペンしか持ってきていなかったから、今日の授業どうしよう。
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