上 下
8 / 199
お助けキャラに転生した!

主人公は転生者でした

しおりを挟む
大事に本を両手で抱えながら、来た道を戻って行く。
ふわーっといい匂いがして、匂いがする場所に行ったら沢山の串焼きが焼かれていた。

「アリシアのとこの坊主か。今日はお使いでもしてきたのか?」

「そうだよ!それとねこれはお使いじゃなくて、俺が欲しくて買った本なんだ!」

串焼き屋のおじさんに今日の戦利品をドヤ顔で見せた。

「そうかそうか。坊主これ持って帰んな!」

おじさんが焼きたての串焼きを何本かまとめて紙袋の中に入れて俺に渡してくれた。

「いいの!?お金いくら?」

「俺がやるって言ってんだから有り難く受けっとときな!今度は家族で食べに来るんだぞ!」

「へへっ、ありがとう!」

おじさんから串焼きが入った袋を受け取った。

「気をつけて帰るんだぞー」

「はーい!」

両手が本と串焼きの袋で塞がってるから、元気に返事をして串焼き屋から離れた。
まさかの臨時収入にホクホクだ!

「ふふふーん」

嬉しくてルンルンと歩いてたら、急に後ろから突き飛ばされた。
急な事で対応できなくて勢いそのまま転んでしまった。

嫌な打ち付け方をして膝と腕がヒリヒリして痛い。

「いたい…」

痛くて堪えたいけど、目頭が段々熱くなってくる。

「こんなんで転ぶなんてださーい」

聞いた事のある声に顔をあげたらサミュエルが側に居た。
俺が転んだ姿を見てくすくす笑っている姿で、サミュエルが俺を転ばせた犯人だと分かった。

「なんで、こんな事するの…?」

痛くて涙がボロボロと出てきた。

「お助けキャラなんだから僕が何をしてもいーでしょー?そーれーにー」

俺の目の前に転がっている串焼きが入った袋をサミュエルが踏み潰した。
おじさんが好意でくれた串焼き。

「アンタはー、僕が攻略者を攻略するのに必要な道具なんだからー、道具らしく道具を作ってればいいのー」

余りにも身勝手すぎる発言。

「だからそんな物必要ないよね?」

近くにある本を盗られ、目の前でビリビリに破かれてしまった。
お手伝いで貯めたお小遣いで買った本。

何もしてないのにどうして俺はここまでされなきゃいけないの?

「俺の本に酷い事しないでよっ!」

破かれ続ける本をサミュエルから奪おうとしたけど、怪我をした膝が痛くて立ち上がることができなかった。
これ以上破かないでよ…俺の本…。

「ふん!これで分かった!?」

無茶苦茶に破かれた本を地面に捨てられ、最後に見せしめと言わんばかりに靴で踏みつけられた。
破かれたせいでビリビリになり、靴で踏みつけられた所為で土で汚れてしまった。

せっかくザザレーさんが安くしてくれたのに。
悲しくて顔を地面に伏せた。

「そうやって僕にひれ伏してたらいいの!」

背中に衝撃が走って、その後じわじわと痛みが襲ってきた。
何度も何度も衝撃と痛みが背中から伝わってくる。

「もう…やめて…お願い…」

泣きながら懇願しても踏みつけられるのは全くやめられない。
段々背中が痛みで熱くなってきたぐらいで、ようやく踏みつけられるのをやめて貰えた。

「次少しでも口答えをしたらお店潰してあげるから」

サミュエルに言われた最後の言葉は完全に脅しだった。
俺が言う事を聞かなければ家族に迷惑をかけると。

父さんと母さんに迷惑をかける事ができなくて、俺は何も言う事も出来なくなってしまった。

「それじゃあお助けキャラとして、僕を助けるんだよー?お荷物のルドくん?」

「わ、わかり、まし…た」

サミュエルが欲しい言葉を返事すれば、機嫌よく笑いながら俺の側から去って行った。
背中が痛くて痛くて堪らなくて、痛みが引くまで地面に転がったままで居た。
しおりを挟む
感想 83

あなたにおすすめの小説

非力な守護騎士は幻想料理で聖獣様をお支えします

muku
BL
聖なる山に住む聖獣のもとへ守護騎士として送られた、伯爵令息イリス。 非力で成人しているのに子供にしか見えないイリスは、前世の記憶と山の幻想的な食材を使い、食事を拒む聖獣セフィドリーフに料理を作ることに。 両親に疎まれて居場所がないながらも、健気に生きるイリスにセフィドリーフは心動かされ始めていた。 そして人間嫌いのセフィドリーフには隠された過去があることに、イリスは気づいていく。 非力な青年×人間嫌いの人外の、料理と癒しの物語。 ※全年齢向け作品です。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・不定期

小悪魔系世界征服計画 ~ちょっと美少年に生まれただけだと思っていたら、異世界の救世主でした~

朱童章絵
BL
「僕はリスでもウサギでもないし、ましてやプリンセスなんかじゃ絶対にない!」 普通よりちょっと可愛くて、人に好かれやすいという以外、まったく普通の男子高校生・瑠佳(ルカ)には、秘密がある。小さな頃からずっと、別な世界で日々を送り、成長していく夢を見続けているのだ。 史上最強の呼び声も高い、大魔法使いである祖母・ベリンダ。 その弟子であり、物腰柔らか、ルカのトラウマを刺激しまくる、超絶美形・ユージーン。 外見も内面も、強くて男らしくて頼りになる、寡黙で優しい、薬屋の跡取り・ジェイク。 いつも笑顔で温厚だけど、ルカ以外にまったく価値を見出さない、ヤンデレ系神父・ネイト。 領主の息子なのに気さくで誠実、親友のイケメン貴公子・フィンレー。 彼らの過剰なスキンシップに狼狽えながらも、ルカは日々を楽しく過ごしていたが、ある時を境に、現実世界での急激な体力の衰えを感じ始める。夢から覚めるたびに強まる倦怠感に加えて、祖母や仲間達の言動にも不可解な点が。更には魔王の復活も重なって、瑠佳は次第に世界全体に疑問を感じるようになっていく。 やがて現実の自分の不調の原因が夢にあるのではないかと考えた瑠佳は、「夢の世界」そのものを否定するようになるが――。 無自覚小悪魔ちゃん、総受系愛され主人公による、保護者同伴RPG(?)。 (この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...