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―魔の手―
294話 魔の手
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予言を貰ってから数日、さくらはとりあえずいつも通り学園へと通っていた。
勿論怖くはあったが、何もせず部屋に閉じこもっている方が余計怖かったのだ。友達と話しているほうが、幾分か気が紛れた。
それに、守ってくれる手段は貰っている。あの『身代わり人形』、そして…。
「トイレ以外はお付き添いしますよさくらさん!」
護衛役として、白猫のタマが常に付き添ってくれていた。彼は竜崎からつきっきりでの警護を頼まれたらしく、授業中も食事時もずっと横に控えてくれていた。それこそこの世界に来たばかりの時のように。
見た目はただの猫。しかしひとたび豹変すれば象並みに巨大となる霊獣タマは実に心強い。もし悪者が襲ってきてもたちどころに応戦してくれるだろう。
更に加えて、竜崎の助手のナディ、先輩メストといった人々がタマと同じく護衛役を買って出てくれた。もはや一種のVIPのような扱いである。
一方の竜崎はどうしているのか。彼はここ数日図書館に入り浸っていた。
授業が終わり次第すぐに向かい、次の授業ギリギリまで何か調べものをしているようである。食事や睡眠をほとんどとらず、文字通り寝食を忘れるかの如く。
さくらが何をしているのか聞いてみても、はぐらかされるばかり。聞くところによると、ナディ達にも詳細は明かされていないらしい。
ならばさくらの守護はタマ達に任せっきりなのかというと、そういうわけではない。授業後、昼休み、帰宅途中、様々な空き時間にさくらの元に精霊が訪れた。それは勿論、竜崎の精霊である。
定時報告、及び定期監視としてちょこちょこ様子を見に来てくれているのだ。それはまるで心配性な親のようであった。
そんなある時。さくらは忘れ物をしたのに気づき、学園から自室へ。勿論タマも一緒である。
「また忘れ物ですか? しっかり確認しないからですよー」
「タマちゃん耳が痛い…」
部屋に入り、探し物を始めるが中々に見つからない。あれぇと頭を傾げながらいろいろ捲り持ち上げ探してみるが、どこに置いたか詳細不明。
まだ時間あるし、とベッドに腰かけ記憶を辿ってみる。その間、タマはさくらの横に丸まりすやすやと寝息を立て始めた。連日の終日警護でそこそこ疲れているようである。ぶっちゃけさっきの授業中も横の席で寝ていたのだが。まあ猫だし。
トントン
「ん?」
突然、ノックの音が響く。さくらは思い出し作業を止め、扉へと。カチャリと鍵を開け…。瞬間、寝ていたはずのタマが吼えた。
「―! さくらさん! 開けちゃ駄目です!」
「え…?」
思わず振り返るさくら。 が、それと同時に扉はバンと開き…。
「むぐっ…!」
何者かの手がさくらの口を封じた。
時同じくして、図書館。その奥地。許可が無いと入れない強力な魔導書が収められているそのエリア。
竜崎はそこで一心不乱に何かを探していた。今まで見てきた魔導書をひっくり返すように漁りつくすその姿は、鬼気迫ってすらいた。
と、そこに…。
「はぁ…はぁ…! リュウザキ様!ここにおられましたか! お力をお借りしたく…」
慌てて駆けこんできたのは一人の兵。入口からここまでかなりの距離があるが、そこをずっと走ってきたらしく、彼はかなり息切れしていた。
「どうしたんですか? とりあえず水を…」
本を置き、飲み水を作り出そうとする竜崎。しかし兵はそれを制し、息も絶え絶えに用件を伝えた。
「あの魔術士が…リュウザキ様が捕らえた人さらいの魔術士が脱走しました!」
勿論怖くはあったが、何もせず部屋に閉じこもっている方が余計怖かったのだ。友達と話しているほうが、幾分か気が紛れた。
それに、守ってくれる手段は貰っている。あの『身代わり人形』、そして…。
「トイレ以外はお付き添いしますよさくらさん!」
護衛役として、白猫のタマが常に付き添ってくれていた。彼は竜崎からつきっきりでの警護を頼まれたらしく、授業中も食事時もずっと横に控えてくれていた。それこそこの世界に来たばかりの時のように。
見た目はただの猫。しかしひとたび豹変すれば象並みに巨大となる霊獣タマは実に心強い。もし悪者が襲ってきてもたちどころに応戦してくれるだろう。
更に加えて、竜崎の助手のナディ、先輩メストといった人々がタマと同じく護衛役を買って出てくれた。もはや一種のVIPのような扱いである。
一方の竜崎はどうしているのか。彼はここ数日図書館に入り浸っていた。
授業が終わり次第すぐに向かい、次の授業ギリギリまで何か調べものをしているようである。食事や睡眠をほとんどとらず、文字通り寝食を忘れるかの如く。
さくらが何をしているのか聞いてみても、はぐらかされるばかり。聞くところによると、ナディ達にも詳細は明かされていないらしい。
ならばさくらの守護はタマ達に任せっきりなのかというと、そういうわけではない。授業後、昼休み、帰宅途中、様々な空き時間にさくらの元に精霊が訪れた。それは勿論、竜崎の精霊である。
定時報告、及び定期監視としてちょこちょこ様子を見に来てくれているのだ。それはまるで心配性な親のようであった。
そんなある時。さくらは忘れ物をしたのに気づき、学園から自室へ。勿論タマも一緒である。
「また忘れ物ですか? しっかり確認しないからですよー」
「タマちゃん耳が痛い…」
部屋に入り、探し物を始めるが中々に見つからない。あれぇと頭を傾げながらいろいろ捲り持ち上げ探してみるが、どこに置いたか詳細不明。
まだ時間あるし、とベッドに腰かけ記憶を辿ってみる。その間、タマはさくらの横に丸まりすやすやと寝息を立て始めた。連日の終日警護でそこそこ疲れているようである。ぶっちゃけさっきの授業中も横の席で寝ていたのだが。まあ猫だし。
トントン
「ん?」
突然、ノックの音が響く。さくらは思い出し作業を止め、扉へと。カチャリと鍵を開け…。瞬間、寝ていたはずのタマが吼えた。
「―! さくらさん! 開けちゃ駄目です!」
「え…?」
思わず振り返るさくら。 が、それと同時に扉はバンと開き…。
「むぐっ…!」
何者かの手がさくらの口を封じた。
時同じくして、図書館。その奥地。許可が無いと入れない強力な魔導書が収められているそのエリア。
竜崎はそこで一心不乱に何かを探していた。今まで見てきた魔導書をひっくり返すように漁りつくすその姿は、鬼気迫ってすらいた。
と、そこに…。
「はぁ…はぁ…! リュウザキ様!ここにおられましたか! お力をお借りしたく…」
慌てて駆けこんできたのは一人の兵。入口からここまでかなりの距離があるが、そこをずっと走ってきたらしく、彼はかなり息切れしていた。
「どうしたんですか? とりあえず水を…」
本を置き、飲み水を作り出そうとする竜崎。しかし兵はそれを制し、息も絶え絶えに用件を伝えた。
「あの魔術士が…リュウザキ様が捕らえた人さらいの魔術士が脱走しました!」
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