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―獣人の里『モンストリア』―
253話 ゴーリッチ・ファンマ
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時はほんの少し巻き戻り、竜崎が隠れている魔術士達を倒した丁度その時。聖魔術により上がった光を少し離れた山で見ている者がいた。
「ヒヒヒッ…!バレちゃった、バレちゃったァ…!」
下卑た笑いを響かせるのは真っ黒なローブを被った謎の男性。するとそこに息を切らしながら走ってきたのは彼の部下と思しき人物だった。
「『獣母』の輸送隊、安全圏まで到達しました。これで調査隊が追いついてくることはありません」
「フヒッ…やっとかァ。貴重な魔術士の死霊兵を囮に使ったかいがあった。しっかし、ミルスパールの死にぞこないが転移無効の封印をかけているとはねェ。棺桶に片足突っ込んでいるんだからさっさとおっちねばいいのに」
そうしたらボクの手駒として使ってあげられるのになァ。そう言いながら黒いローブの男はパサリとフードを外す。その顔の半分は頭蓋骨の紋様が浮き出ていた。と、彼の部下はその名を口にした。
「ゴーリッチ様、急ぎ撤退を。目的は果たしました」
彼の正体、それはゴーリッチ・ファンマ。先代魔王軍の幹部にして、死霊術のエキスパート。先代魔王討伐後行方をくらませていたはずだが…。
「あの人達は今何をしているんだィ?」
「あの人…?」
ゴーリッチの問いに、部下は首を傾げる。すると彼はヒヒッと笑い聞き直した。
「小汚いローブの魔術士と赤いローブの巨躯の戦士。今の私達のボスだろォ?魔王様亡き後、くすぶっていた私達を拾ってくれたのは彼らじゃないか。忘れちゃ駄目だよォ」
「あぁ、彼らならばモンストリアでもうひと騒動起こしているかと」
「そうかいそうかい」
部下の回答を聞いたゴーリッチはくるりと身体を戻し観戦に戻った。帰る気はなさそうである。部下は仕方なしに問い返した。
「何を見ていらっしゃるのですか?」
「勿論、愛しい愛しいニアロンだよォ!今は森に隠れて見えないけどね …ヒヒヒッ」
「ニアロン?リュウザキに憑りついているあの霊体ですよね?」
「そう!私にとっては騎士団長ジョージも裏切り者のグレミリオも、異世界から来たリュウザキもどうでもいい!彼女さえいれば…!あぁ、こんなことならあの時レドルブで私の物にしておけばよかった!まさか、あの霊体がねェ…!!フヘ、ヘヘヘッヘッヘヘ!!」
狂ったように身悶えするゴーリッチに、部下はドン引きする。明らかにヤバいテンションに加え、どす黒いオーラまで見えた気がしたからだ。
「お、落ち着いてください!」
流石に放っておくわけにはいかず、部下がそう声をかけた時だった。ゴーリッチは突然ストンと落ち着いた。
「ヒヒッ、ここにいることもバレた」
「え?」
部下が反射的に正面を見ると、丁度幾多の光弾斬撃が自分達に向け飛んできているところだった。
ドッゴオオォン!!
盛大な爆発音が響く。山肌は大きく抉れ、草木一本も生えぬ焦土と化した。その場にスタンと降り立った影は3つ、ジョージ、グレミリオ、竜崎である。
「うーむ残念、逃げられましたか。感じ覚えのある、あやつの『気』でしたな」
「面倒な奴が敵についたものねぇ…。あ、リュウザキちゃん達にとっては初めから敵よね」
「ということは間違いありませんね。ここに居たのはやはり…」
ゴクリと息を呑む竜崎。と、彼の言葉の続きを奪うようにニアロンが声を荒げた。
―絶対にゴーリッチの変態野郎だ!あいつめ…どうせまた私を舐め回すように見ていたに違いない…!―
怖気が走ったのか身体をブルルッと震わすニアロン。そんな彼女を慰めながら、竜崎達は調査隊へと戻っていった。
一方の調査隊…正確には賢者とさくら達。敵の正体が先代魔王軍幹部ゴーリッチだということを賢者の口から聞き、全員驚愕していた。
「それは本当なんですか賢者様!?」
「骨に書かれていた術式の特徴、そして上位精霊や召喚獣達を呼び出せるほどに卓越した死霊術。該当者はあやつしかおらんじゃろうな」
「でも、上位精霊を召喚なんてどうやって…?」
「死霊術は骨に刻み込まれた生前の動きを『召喚』し、死霊兵として動かすという特殊な魔術じゃ。応用を利かせれば『上位精霊を召喚する』動きをさせることも可能となるんじゃよ。最も、大量の魔力が必要な上に、召喚した魔物達に複雑な命令は出せんがの」
ただの墓場荒らしではないとは思っていたが…とんでもない大物の名前が出てさくら達は戦々恐々とする。と、モカが恐る恐る手を挙げた。
「賢者様、そのゴーリッチが獣母を盗んだとなると、その目的は…」
「十中八九、『獣母の復活』を目論んでおるじゃろうのぅ」
大変なことである。先程『獣母信奉派』の人々の会話を聞いていたさくら達は俄かに焦る。確か彼ら、獣母が生き返るならば盗賊側につくみたいなことを言っていたような…。
その時だった。一羽の伝書鳥が調査隊の元へと降りてくる。かなり焦っているようだ。兵の1人が足に着いた手紙を確認すると、同じように慌てて賢者の元へ走り寄ってきた。
「大変です賢者様!モンストリアからの緊急連絡です!『獣母信奉派』の連中が突如蜂起しだしたと!」
「ヒヒヒッ…!バレちゃった、バレちゃったァ…!」
下卑た笑いを響かせるのは真っ黒なローブを被った謎の男性。するとそこに息を切らしながら走ってきたのは彼の部下と思しき人物だった。
「『獣母』の輸送隊、安全圏まで到達しました。これで調査隊が追いついてくることはありません」
「フヒッ…やっとかァ。貴重な魔術士の死霊兵を囮に使ったかいがあった。しっかし、ミルスパールの死にぞこないが転移無効の封印をかけているとはねェ。棺桶に片足突っ込んでいるんだからさっさとおっちねばいいのに」
そうしたらボクの手駒として使ってあげられるのになァ。そう言いながら黒いローブの男はパサリとフードを外す。その顔の半分は頭蓋骨の紋様が浮き出ていた。と、彼の部下はその名を口にした。
「ゴーリッチ様、急ぎ撤退を。目的は果たしました」
彼の正体、それはゴーリッチ・ファンマ。先代魔王軍の幹部にして、死霊術のエキスパート。先代魔王討伐後行方をくらませていたはずだが…。
「あの人達は今何をしているんだィ?」
「あの人…?」
ゴーリッチの問いに、部下は首を傾げる。すると彼はヒヒッと笑い聞き直した。
「小汚いローブの魔術士と赤いローブの巨躯の戦士。今の私達のボスだろォ?魔王様亡き後、くすぶっていた私達を拾ってくれたのは彼らじゃないか。忘れちゃ駄目だよォ」
「あぁ、彼らならばモンストリアでもうひと騒動起こしているかと」
「そうかいそうかい」
部下の回答を聞いたゴーリッチはくるりと身体を戻し観戦に戻った。帰る気はなさそうである。部下は仕方なしに問い返した。
「何を見ていらっしゃるのですか?」
「勿論、愛しい愛しいニアロンだよォ!今は森に隠れて見えないけどね …ヒヒヒッ」
「ニアロン?リュウザキに憑りついているあの霊体ですよね?」
「そう!私にとっては騎士団長ジョージも裏切り者のグレミリオも、異世界から来たリュウザキもどうでもいい!彼女さえいれば…!あぁ、こんなことならあの時レドルブで私の物にしておけばよかった!まさか、あの霊体がねェ…!!フヘ、ヘヘヘッヘッヘヘ!!」
狂ったように身悶えするゴーリッチに、部下はドン引きする。明らかにヤバいテンションに加え、どす黒いオーラまで見えた気がしたからだ。
「お、落ち着いてください!」
流石に放っておくわけにはいかず、部下がそう声をかけた時だった。ゴーリッチは突然ストンと落ち着いた。
「ヒヒッ、ここにいることもバレた」
「え?」
部下が反射的に正面を見ると、丁度幾多の光弾斬撃が自分達に向け飛んできているところだった。
ドッゴオオォン!!
盛大な爆発音が響く。山肌は大きく抉れ、草木一本も生えぬ焦土と化した。その場にスタンと降り立った影は3つ、ジョージ、グレミリオ、竜崎である。
「うーむ残念、逃げられましたか。感じ覚えのある、あやつの『気』でしたな」
「面倒な奴が敵についたものねぇ…。あ、リュウザキちゃん達にとっては初めから敵よね」
「ということは間違いありませんね。ここに居たのはやはり…」
ゴクリと息を呑む竜崎。と、彼の言葉の続きを奪うようにニアロンが声を荒げた。
―絶対にゴーリッチの変態野郎だ!あいつめ…どうせまた私を舐め回すように見ていたに違いない…!―
怖気が走ったのか身体をブルルッと震わすニアロン。そんな彼女を慰めながら、竜崎達は調査隊へと戻っていった。
一方の調査隊…正確には賢者とさくら達。敵の正体が先代魔王軍幹部ゴーリッチだということを賢者の口から聞き、全員驚愕していた。
「それは本当なんですか賢者様!?」
「骨に書かれていた術式の特徴、そして上位精霊や召喚獣達を呼び出せるほどに卓越した死霊術。該当者はあやつしかおらんじゃろうな」
「でも、上位精霊を召喚なんてどうやって…?」
「死霊術は骨に刻み込まれた生前の動きを『召喚』し、死霊兵として動かすという特殊な魔術じゃ。応用を利かせれば『上位精霊を召喚する』動きをさせることも可能となるんじゃよ。最も、大量の魔力が必要な上に、召喚した魔物達に複雑な命令は出せんがの」
ただの墓場荒らしではないとは思っていたが…とんでもない大物の名前が出てさくら達は戦々恐々とする。と、モカが恐る恐る手を挙げた。
「賢者様、そのゴーリッチが獣母を盗んだとなると、その目的は…」
「十中八九、『獣母の復活』を目論んでおるじゃろうのぅ」
大変なことである。先程『獣母信奉派』の人々の会話を聞いていたさくら達は俄かに焦る。確か彼ら、獣母が生き返るならば盗賊側につくみたいなことを言っていたような…。
その時だった。一羽の伝書鳥が調査隊の元へと降りてくる。かなり焦っているようだ。兵の1人が足に着いた手紙を確認すると、同じように慌てて賢者の元へ走り寄ってきた。
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