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―獣人の里『モンストリア』―
243話 獣人の里『モンストリア』
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あくる日、アリシャバージル王城。転移魔法陣の起動を待つための控室にさくら達は集まっていた。
「結構な人数が行くんだな…」
さくらは思わずそう口にする。その控室には調査隊の傭兵や学者が沢山。更にはシベルにマーサ、ジョージにグレミリオが参加していた。そして…
「なんだ。お前達も行くのか」
「あ、クラウスくん」
さくらと同じ代表戦出場生徒にして、ジョージの生徒。クラウス・オールーン。彼も行くらしい。話を聞いてみると、代表戦で友達となった鳥人族の子『ワルワス・バルダ』から今回の事態を書いた手紙を貰ったらしい。
「皆、集まっておるな」
と、室内に賢者と竜崎が入ってくる。わいわいと喋っていた調査隊の面子はすぐさま静まった。
「改めて、事の顛末を伝えよう。数日前、モンストリアにある『獣母』の遺骸の一部が盗まれた。禁忌魔術によって象られたその身体は死んでも朽ちることはなかったため、封印を施し葬っていたのじゃ。しかしその封印が解かれ、墓の防衛をしていたモンストリア兵も軒並み大怪我を負ってしまった。かなりの賊が攻め入ってきたようじゃ」
「賢者様、その遺骸本体にも封印がされていると聞いておりますけど…」
「さよう。墓にかけてあったものよりも強力、かつ特殊な代物を幾重にも施しておる。それが解かれればワシがわかるが、まだのようじゃの」
「居場所の特定とかは…」
「残念ながら、現在の位置は上手く隠されてしまっている。手間じゃが捜索するしかない。とはいえ、数日前の出来事で少々望み薄だの。もう少し早く教えてほしかったものじゃがのぅ…」
調査隊の人々の質問に答えていく賢者。さくらは近くに腰かけた竜崎にこっそり聞いた。
「大丈夫なんですか、そんなもの盗まれて…」
「正直言うと、大丈夫ではないね。ただ、モンストリアにある部位は頭部から胸部にかけてなんだけど、そこまで危険な禁忌魔術は施されていない。 …あ、ごめん。変な想像させちゃった?本体にかけた封印のおかげで石化しているからグロさは少ないよ。…気休めにはならないか」
―だがこれは好機でもあるんだ、さくら。もし盗んだのが最近騒がせている元魔王軍の連中だったら、拠点の一つの特定に使えるかもしれん。封印が解放されたらミルスパールがわかるからな―
どうやらニアロンは犯人特定の囮として使う気満々らしい。一抹の不安を覚えたさくらはとりあえず気を引き締めるのだった。
「わぁ、ここが…!」
転移魔術を用い、到着したのは獣人の里『モンストリア』。モカとシベルの故郷である。
「獣人の人達たっくさーん!」
見渡す限り、獣人獣人獣人。ケモ耳天国モフモフ天国である。空を見上げると、腕に羽を生やした鳥人達が風にのり羽ばたいていた。
街並みも正確には『里』というほど牧歌的なものではなく、中々に発展している。最も、身体能力が高い獣人の特徴か、ツリーハウスや崖の途中などのアクロバティックな位置に建物が立っている様子も多々見受けられた。
宿舎に荷を降ろし、再度集合する調査隊。と、竜崎が指揮を執った。
「シベル、マーサ率いる医療部隊は怪我を負った墓防衛兵の治療へ。調査部隊は私と賢者様と共に墓と周囲の調査に向かいます。ジョージ先生、グレミリオ先生の部隊はその護衛、及び捜索を」
次々と動き出す調査隊面子。残されたのはさくら達生徒陣。
「皆はしばらく宿舎内で待機ね。手の空き次第、誰かを回すから」
「「「「「はーい」」」」」
竜崎の命に元気に返事をするさくら達。と、彼は思い出したように懐を探り、何かを取り出した。
「ここ出身のモカがいるから大丈夫だと思うけど、このマークがある場所には近づかないでね」
手渡されたのは一枚の紙。そこに書かれていたのは、女性の胸像。ただし、その背からは何種類もの動物の手足が伸びていた。
「これって…確か『獣母』の…!」
さくらは驚く。かつて図書館から行った『謎の部屋』、そこで見た獣母の図に似ていたのだ。竜崎はコクリと頷いた。
「そう、これは獣母を模したイコンのようなものだ」
「でも、なんで近づいたらいけないんですか?」
「それはね…」
竜崎が説明しようとした時だった。
「リュウザキ様!そろそろ出立いたしますよ!」
調査隊の1人から声がかかる。急ごうとする竜崎だが、それをモカが抑えた。
「私が教えておきます。先生はお仕事に」
「そう?お願いするよ。有難う」
そう言葉を残し駆け足で去っていく竜崎を、さくら達は手を振り見送った。
「結構な人数が行くんだな…」
さくらは思わずそう口にする。その控室には調査隊の傭兵や学者が沢山。更にはシベルにマーサ、ジョージにグレミリオが参加していた。そして…
「なんだ。お前達も行くのか」
「あ、クラウスくん」
さくらと同じ代表戦出場生徒にして、ジョージの生徒。クラウス・オールーン。彼も行くらしい。話を聞いてみると、代表戦で友達となった鳥人族の子『ワルワス・バルダ』から今回の事態を書いた手紙を貰ったらしい。
「皆、集まっておるな」
と、室内に賢者と竜崎が入ってくる。わいわいと喋っていた調査隊の面子はすぐさま静まった。
「改めて、事の顛末を伝えよう。数日前、モンストリアにある『獣母』の遺骸の一部が盗まれた。禁忌魔術によって象られたその身体は死んでも朽ちることはなかったため、封印を施し葬っていたのじゃ。しかしその封印が解かれ、墓の防衛をしていたモンストリア兵も軒並み大怪我を負ってしまった。かなりの賊が攻め入ってきたようじゃ」
「賢者様、その遺骸本体にも封印がされていると聞いておりますけど…」
「さよう。墓にかけてあったものよりも強力、かつ特殊な代物を幾重にも施しておる。それが解かれればワシがわかるが、まだのようじゃの」
「居場所の特定とかは…」
「残念ながら、現在の位置は上手く隠されてしまっている。手間じゃが捜索するしかない。とはいえ、数日前の出来事で少々望み薄だの。もう少し早く教えてほしかったものじゃがのぅ…」
調査隊の人々の質問に答えていく賢者。さくらは近くに腰かけた竜崎にこっそり聞いた。
「大丈夫なんですか、そんなもの盗まれて…」
「正直言うと、大丈夫ではないね。ただ、モンストリアにある部位は頭部から胸部にかけてなんだけど、そこまで危険な禁忌魔術は施されていない。 …あ、ごめん。変な想像させちゃった?本体にかけた封印のおかげで石化しているからグロさは少ないよ。…気休めにはならないか」
―だがこれは好機でもあるんだ、さくら。もし盗んだのが最近騒がせている元魔王軍の連中だったら、拠点の一つの特定に使えるかもしれん。封印が解放されたらミルスパールがわかるからな―
どうやらニアロンは犯人特定の囮として使う気満々らしい。一抹の不安を覚えたさくらはとりあえず気を引き締めるのだった。
「わぁ、ここが…!」
転移魔術を用い、到着したのは獣人の里『モンストリア』。モカとシベルの故郷である。
「獣人の人達たっくさーん!」
見渡す限り、獣人獣人獣人。ケモ耳天国モフモフ天国である。空を見上げると、腕に羽を生やした鳥人達が風にのり羽ばたいていた。
街並みも正確には『里』というほど牧歌的なものではなく、中々に発展している。最も、身体能力が高い獣人の特徴か、ツリーハウスや崖の途中などのアクロバティックな位置に建物が立っている様子も多々見受けられた。
宿舎に荷を降ろし、再度集合する調査隊。と、竜崎が指揮を執った。
「シベル、マーサ率いる医療部隊は怪我を負った墓防衛兵の治療へ。調査部隊は私と賢者様と共に墓と周囲の調査に向かいます。ジョージ先生、グレミリオ先生の部隊はその護衛、及び捜索を」
次々と動き出す調査隊面子。残されたのはさくら達生徒陣。
「皆はしばらく宿舎内で待機ね。手の空き次第、誰かを回すから」
「「「「「はーい」」」」」
竜崎の命に元気に返事をするさくら達。と、彼は思い出したように懐を探り、何かを取り出した。
「ここ出身のモカがいるから大丈夫だと思うけど、このマークがある場所には近づかないでね」
手渡されたのは一枚の紙。そこに書かれていたのは、女性の胸像。ただし、その背からは何種類もの動物の手足が伸びていた。
「これって…確か『獣母』の…!」
さくらは驚く。かつて図書館から行った『謎の部屋』、そこで見た獣母の図に似ていたのだ。竜崎はコクリと頷いた。
「そう、これは獣母を模したイコンのようなものだ」
「でも、なんで近づいたらいけないんですか?」
「それはね…」
竜崎が説明しようとした時だった。
「リュウザキ様!そろそろ出立いたしますよ!」
調査隊の1人から声がかかる。急ごうとする竜崎だが、それをモカが抑えた。
「私が教えておきます。先生はお仕事に」
「そう?お願いするよ。有難う」
そう言葉を残し駆け足で去っていく竜崎を、さくら達は手を振り見送った。
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