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―かつての記憶―
218話 レドルブ奪還戦⑦
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竜崎を背に、必死に逃げるソフィア。それを追いかける死霊兵達。時折爆弾を一つ、また一つと蹴るが…。
「数あんま減らないわね…!」
―死霊術は骨や遺体に刻み込まれたを生前の動きを呼び出す、つまり『召喚』する魔術だ。込められた魔力が尽きるか、大元である骨をある程度砕かない限りいくらでも復活してくるぞ―
「道理で結構ボロボロなのに向かってくるわけで!」
そんな死霊兵の中には骨だけの魔獣も。勢いよくソフィアにぶつかってくるが、反動でカラコロンとバラバラに。それでも少し経つと、また獣の形に戻り襲ってくる。
キリがない。いくら走っても纏いついてくる死霊兵に焦るソフィア。そんな彼女を追い詰めるかのように…。
ズゥウウン…!
「わっ!何!?」
目の前に勢いよく降りてきたのは大きな竜。だが鱗はおろか肉すらない、骨でできた『死霊竜』であった。
「まずっ…!」
ソフィアは思わず方向転換。別のルートを探すが…。
「嘘…!」
逃げ道を全て塞ぐのように、死霊兵が取り囲んでいた。先程まで闇雲にソフィアを追うだけだった死霊兵達だが、今はまるで統率された軍隊のようである。
一体何故…。そんな疑問に答えるように、死霊竜の背から1人の男性がスタンと降りてきた。
「フヒッヒヒ…!罠に反応があったから来てみたら、妙な鎧!ウケる…!」
ソフィアの鎧姿を見るや、下卑た笑いを浮かべる謎の人物。ツボに入ったのか少しの間笑い続け、ゲホゲホと咳き込みようやく落ち着いた。
男性は魔王軍の服を纏い、ボロボロの魔導書を持っていた。そしてその顔は半分が頭蓋骨のタトゥーのようなものが刻まれている。
「アンタは…!」
ソフィアにはその顔に見覚えがあった。それに、身体の一部に生まれつき骨のタトゥーが刻まれるのは魔族の一種、リッチ族の特徴。ということは―。
「ゴーリッチ・ファンマ…!」
そう、レドルブにいる魔王軍幹部が1人、ゴーリッチである。彼が手を一振りすると、囲んでいた死霊兵が一斉に距離を詰めてきた。
「面白そうだから君も死霊兵にしてあげるよォ…!」
後ずさるしかないソフィア。残りの爆弾は2個。どう考えても太刀打ちできない…!
と、そんな時だった。
バカァン!
突如、ソフィアの背の箱が勢いよく開く。続いて聞こえてきたのは、2人の声。
―術式は既に組み上げてある。やれ清人―
「薙ぎ払って、『サラマンド』!」
箱から飛び出したのは竜崎。彼の着地と同時に展開した赤い魔法陣からは、即座に火の上位精霊であるサラマンドが召喚された。
「グオオオ!」
カッ!
サラマンドの口から炎のビームが打ち出され、周りの死霊兵を焼いていく。骨を溶かされた彼らは復活することなく本来の通り骸として転がった。
「フヘッ!? 確か…リュウザキ、だったっけ!? そんなところに隠れていてたとか想定外!」
その様子を見てゴーリッチは目を丸くするが、顔は不敵な笑みのまま。そんな間にサラマンドの薙ぎ払いビームが彼を襲うが…。
ドゴォ!
ゴーリッチの盾となるかのように、死霊竜が顔を地面に刺す。当然サラマンドの攻撃はその竜頭に直撃した。
ジュウウウ…!
骨の焦げる音が聞こえる。しかしビームは貫通することなく、竜頭を黒く焼いただけだった。
「ヒヒッ! 流石はサラマンド…!結構強化を施していたんだけどなァ…!」
邪魔だと言わんばかりにその竜頭を押しのけ、ソフィア達に悠然と近寄ってくるゴーリッチ。その目は真っ直ぐ竜崎を捕らえていた。
「会いたかったよォ…!ニアロン、だっけェ!?」
―ん?私の方か?―
だが彼の口から出たのは竜崎の背にいたニアロンの名。ゴーリッチはこれ以上ない邪悪な笑みを浮かべた。
「死霊術を操るものとして『霊体』の存在である君は興味深い…!是非その全身を弄らせてくれ!嬲らせてくれ!フヘヘヘ…!」
―…。清人、あいつブン殴っていいか?全身に変な悪寒が走った―
「いや…先に逃げなきゃ…」
顔を顰めさせるニアロンを宥め、逃げ道を探る竜崎。だが…。
「逃がさないぞォ?」
魔術書を開き詠唱するゴーリッチ。するとどこからともなく大量の死霊兵や死霊獣が現れた。
「ここじゃ沢山死んでるからねェ…いくらでも作り出せる…ヒヒッ」
またも逃げ道を塞がれた竜崎達。自分を庇うように杖を構える竜崎に、ソフィアは恐る恐る問う。
「キヨト…。背中大丈夫?」
「多分…? ソフィアこそ大丈夫?」
「私は大丈夫! ここをこうして…と!」
ガチッ ガコン
ソフィアの纏う鎧から僅かな音が響き、先程まで竜崎が入っていた箱がパカリと開く。それぞれの箱の面がスライドし、一部は背面装甲に。そして一部は両腕の先に巨大な盾付きナックルとして装備された。
「おぉ…!」
「ごめんね…本当はキヨトの言う『ロボット』を作りたかったんだけど時間が無くて…。今度作ってあげるから許してね」
「いや充分凄い!かっこいい!すごいよソフィア!」
今までにないほど目を輝かせる竜崎に、ソフィアは思わずホッと息をついた。
―楽しんでいるとこ悪いが、来るぞ―
ニアロンの合図に、2人はそれぞれ構えをとる。片や友である女の子を守るために。片や、今までの汚名をそそぐために。
「数あんま減らないわね…!」
―死霊術は骨や遺体に刻み込まれたを生前の動きを呼び出す、つまり『召喚』する魔術だ。込められた魔力が尽きるか、大元である骨をある程度砕かない限りいくらでも復活してくるぞ―
「道理で結構ボロボロなのに向かってくるわけで!」
そんな死霊兵の中には骨だけの魔獣も。勢いよくソフィアにぶつかってくるが、反動でカラコロンとバラバラに。それでも少し経つと、また獣の形に戻り襲ってくる。
キリがない。いくら走っても纏いついてくる死霊兵に焦るソフィア。そんな彼女を追い詰めるかのように…。
ズゥウウン…!
「わっ!何!?」
目の前に勢いよく降りてきたのは大きな竜。だが鱗はおろか肉すらない、骨でできた『死霊竜』であった。
「まずっ…!」
ソフィアは思わず方向転換。別のルートを探すが…。
「嘘…!」
逃げ道を全て塞ぐのように、死霊兵が取り囲んでいた。先程まで闇雲にソフィアを追うだけだった死霊兵達だが、今はまるで統率された軍隊のようである。
一体何故…。そんな疑問に答えるように、死霊竜の背から1人の男性がスタンと降りてきた。
「フヒッヒヒ…!罠に反応があったから来てみたら、妙な鎧!ウケる…!」
ソフィアの鎧姿を見るや、下卑た笑いを浮かべる謎の人物。ツボに入ったのか少しの間笑い続け、ゲホゲホと咳き込みようやく落ち着いた。
男性は魔王軍の服を纏い、ボロボロの魔導書を持っていた。そしてその顔は半分が頭蓋骨のタトゥーのようなものが刻まれている。
「アンタは…!」
ソフィアにはその顔に見覚えがあった。それに、身体の一部に生まれつき骨のタトゥーが刻まれるのは魔族の一種、リッチ族の特徴。ということは―。
「ゴーリッチ・ファンマ…!」
そう、レドルブにいる魔王軍幹部が1人、ゴーリッチである。彼が手を一振りすると、囲んでいた死霊兵が一斉に距離を詰めてきた。
「面白そうだから君も死霊兵にしてあげるよォ…!」
後ずさるしかないソフィア。残りの爆弾は2個。どう考えても太刀打ちできない…!
と、そんな時だった。
バカァン!
突如、ソフィアの背の箱が勢いよく開く。続いて聞こえてきたのは、2人の声。
―術式は既に組み上げてある。やれ清人―
「薙ぎ払って、『サラマンド』!」
箱から飛び出したのは竜崎。彼の着地と同時に展開した赤い魔法陣からは、即座に火の上位精霊であるサラマンドが召喚された。
「グオオオ!」
カッ!
サラマンドの口から炎のビームが打ち出され、周りの死霊兵を焼いていく。骨を溶かされた彼らは復活することなく本来の通り骸として転がった。
「フヘッ!? 確か…リュウザキ、だったっけ!? そんなところに隠れていてたとか想定外!」
その様子を見てゴーリッチは目を丸くするが、顔は不敵な笑みのまま。そんな間にサラマンドの薙ぎ払いビームが彼を襲うが…。
ドゴォ!
ゴーリッチの盾となるかのように、死霊竜が顔を地面に刺す。当然サラマンドの攻撃はその竜頭に直撃した。
ジュウウウ…!
骨の焦げる音が聞こえる。しかしビームは貫通することなく、竜頭を黒く焼いただけだった。
「ヒヒッ! 流石はサラマンド…!結構強化を施していたんだけどなァ…!」
邪魔だと言わんばかりにその竜頭を押しのけ、ソフィア達に悠然と近寄ってくるゴーリッチ。その目は真っ直ぐ竜崎を捕らえていた。
「会いたかったよォ…!ニアロン、だっけェ!?」
―ん?私の方か?―
だが彼の口から出たのは竜崎の背にいたニアロンの名。ゴーリッチはこれ以上ない邪悪な笑みを浮かべた。
「死霊術を操るものとして『霊体』の存在である君は興味深い…!是非その全身を弄らせてくれ!嬲らせてくれ!フヘヘヘ…!」
―…。清人、あいつブン殴っていいか?全身に変な悪寒が走った―
「いや…先に逃げなきゃ…」
顔を顰めさせるニアロンを宥め、逃げ道を探る竜崎。だが…。
「逃がさないぞォ?」
魔術書を開き詠唱するゴーリッチ。するとどこからともなく大量の死霊兵や死霊獣が現れた。
「ここじゃ沢山死んでるからねェ…いくらでも作り出せる…ヒヒッ」
またも逃げ道を塞がれた竜崎達。自分を庇うように杖を構える竜崎に、ソフィアは恐る恐る問う。
「キヨト…。背中大丈夫?」
「多分…? ソフィアこそ大丈夫?」
「私は大丈夫! ここをこうして…と!」
ガチッ ガコン
ソフィアの纏う鎧から僅かな音が響き、先程まで竜崎が入っていた箱がパカリと開く。それぞれの箱の面がスライドし、一部は背面装甲に。そして一部は両腕の先に巨大な盾付きナックルとして装備された。
「おぉ…!」
「ごめんね…本当はキヨトの言う『ロボット』を作りたかったんだけど時間が無くて…。今度作ってあげるから許してね」
「いや充分凄い!かっこいい!すごいよソフィア!」
今までにないほど目を輝かせる竜崎に、ソフィアは思わずホッと息をついた。
―楽しんでいるとこ悪いが、来るぞ―
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