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―魔王の過去―
207話 後始末
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「各地への警ら兵は出立したか?」
「はっ!既に!」
「魔獣の死骸はどうなっている」
「一部を魔術科へと運び込み、残りは埋葬させております!只今ミルスパール様とリュウザキ様を交え詳しい検分を行っております!」
「捕えた連中は?」
「全員が牢獄へ。少し前に取り調べ担当の者達が向かいました」
魔王城、その中枢部。魔王や各幹部、幾人もの兵が集い、先程の戦いの後処理を行っていた。
しかしその様子は手慣れたもの。今までも幾度となく同じような反乱はあったのだろう、兵達は上からの指示がなくとも的確な対応を行っていた。
魔王はその中にあってもなお、王としてのカリスマを放つ。運び込まれる問題を次々と捌き、幹部を派遣し、情報を集約していく。
「埋葬、ほぼ完了いたしました」
「そうか、ならば死霊術を扱う魔術士を集め干渉防止魔術をかけておけ」
「あの竜はいかがいたしましょう」
「ソフィアが鱗や骨の一部を必要としていた。その引き渡しが済んだら埋葬を始めよ。ニルザルルからも許可は貰っている」
「取り調べの経過報告書です」
「見せてくれ」
そうこうしている間に日は暮れてゆく。悲しいかな、戦自体よりも後始末のほうが手間も時間もかかるものである。
と、調査していた竜崎、賢者、ソフィアが魔王の元に戻ってきた。
「どうだ?」
「やっぱり賢者の爺さんが以前戦った獣と同じだ。禁忌魔術に通じる術式がところどころに見受けられたよ」
「オグノトスの『白蛇』から受けた報告も『小汚いローブの男が迫ってきた』じゃった。服装だけで判断するのも少々不確実じゃが、ワシが見た謎の魔術士が黒幕臭いのぅ」
「あの竜の鱗や骨、職人的視点から言わせてもらうと使い物にならないわね。無理やり巨大化させられた弊害かしら、ボロボロよ。もし命を救えても生きていくのは困難だったでしょうね…」
各々が報告していく。魔王もまた、先程届いた報告書片手に情報を共有する。
「反乱者達だが、いつもと同じくそのほとんどが戦後行方をくらましていた先代魔王軍兵だということも判明している。竜については突然現れたということらしい。自らの組織の上層部が送り込んできてくれたと解釈しているようだが、その上層部の正体は知らないの一点張りだ。少し時間をかける必要があるな。ただ、今回の反乱者達は全員がこの花を身につけていた」
と、魔王は机に置いてあった箱を開き、中に入っていた花を取り出す。それは極彩色の花。魔界奥地に咲く、危険な薬草である。
―と、いうことは…―
「あぁ。お前達の報告にあった『レドルブの家畜泥棒』の黒幕は彼らだった。そして同じように持っていた謎の呪薬入り鉱物…。我は現物を見るのは初だが、初めて見るものだな」
同じ箱に入っていた注射器のような鉱物を摘まみ上げる魔王。家畜泥棒達に配られたのとは違い何度も使えるものらしく、中で液体がチャプチャプ揺れていた。
「竜の証言から地下に連中の拠点があるのは間違いない。拠点捜索及びこの鉱物探索のために魔界奥地に兵を送ろう。調査隊や商業組合、各国にも協力を仰ぎたい。お前達からも伝えておいてくれ」
魔王の言葉に、竜崎達は揃って頷いた。
一方、さくらはというと―。暇を持て余した来賓客に囲まれていた。
「それで、その後は…!?」
「いや待て、もう少し詳しく魔王様の動きを教えてくれ」
「いやいや、リュウザキ様やラヴィ教官の戦いぶりを…!」
魔王達とともに中枢にいるのは憚られ、さりとて竜崎についていくわけにも行かなかった。ということで彼女は勇者と共に来賓客がもてなされている広間に来ていたのだ。
彼らのうち幾人かは魔王城から望遠鏡で戦いを覗いていたらしいが、やはりその程度ではむず痒い。そんな折に目の前で戦闘を見ていた少女が現れたとなると囲んでしまうのも道理。
中には付き人として来ていた吟遊詩人も何人か居たため、さくらはそんな彼らを相手に数時間話通しだった。
「あ、あの…。流石に喉が渇いちゃって…」
おずおずと申し出るさくら。すると勇者が手を引き水差しの元へと引っ張ってくれる。
「疲れてない?」
「少し疲れましたけど…まだ大丈夫です」
「そう」
幾度か目になる勇者とのやり取り。彼女は竜崎に『さくらさんが疲れていたら部屋で休ませてあげて』と頼まれているのである。さくらが話している間も、横にちょこんと座り見守ってくれていた。
と、水を飲みながらさくらは勇者に聞いてみる。
「今回みたいな戦いって今までも何度かあったんですか?」
「うん、沢山あったよ。魔王やラヴィ達と一緒によく鎮圧した」
ふと、さくらは思う。
「そういえば、竜崎さん達と魔王様ってどういう関係なんだろ…」
片や先代魔王を討った一行、片やその先代魔王を父に持つらしい現魔王。およそ仲良くなれる気はしないが、そんな彼らはまるで古馴染みの友のようである。
「何があったんだろ」
気になったさくらは勇者に聞いてみようとしたが…。
「おーい、まだかい?」
「あ、はーい!今行きまーす!」
吟遊詩人達に呼ばれ、その考えは一旦仕舞いこむこととなった。
「はっ!既に!」
「魔獣の死骸はどうなっている」
「一部を魔術科へと運び込み、残りは埋葬させております!只今ミルスパール様とリュウザキ様を交え詳しい検分を行っております!」
「捕えた連中は?」
「全員が牢獄へ。少し前に取り調べ担当の者達が向かいました」
魔王城、その中枢部。魔王や各幹部、幾人もの兵が集い、先程の戦いの後処理を行っていた。
しかしその様子は手慣れたもの。今までも幾度となく同じような反乱はあったのだろう、兵達は上からの指示がなくとも的確な対応を行っていた。
魔王はその中にあってもなお、王としてのカリスマを放つ。運び込まれる問題を次々と捌き、幹部を派遣し、情報を集約していく。
「埋葬、ほぼ完了いたしました」
「そうか、ならば死霊術を扱う魔術士を集め干渉防止魔術をかけておけ」
「あの竜はいかがいたしましょう」
「ソフィアが鱗や骨の一部を必要としていた。その引き渡しが済んだら埋葬を始めよ。ニルザルルからも許可は貰っている」
「取り調べの経過報告書です」
「見せてくれ」
そうこうしている間に日は暮れてゆく。悲しいかな、戦自体よりも後始末のほうが手間も時間もかかるものである。
と、調査していた竜崎、賢者、ソフィアが魔王の元に戻ってきた。
「どうだ?」
「やっぱり賢者の爺さんが以前戦った獣と同じだ。禁忌魔術に通じる術式がところどころに見受けられたよ」
「オグノトスの『白蛇』から受けた報告も『小汚いローブの男が迫ってきた』じゃった。服装だけで判断するのも少々不確実じゃが、ワシが見た謎の魔術士が黒幕臭いのぅ」
「あの竜の鱗や骨、職人的視点から言わせてもらうと使い物にならないわね。無理やり巨大化させられた弊害かしら、ボロボロよ。もし命を救えても生きていくのは困難だったでしょうね…」
各々が報告していく。魔王もまた、先程届いた報告書片手に情報を共有する。
「反乱者達だが、いつもと同じくそのほとんどが戦後行方をくらましていた先代魔王軍兵だということも判明している。竜については突然現れたということらしい。自らの組織の上層部が送り込んできてくれたと解釈しているようだが、その上層部の正体は知らないの一点張りだ。少し時間をかける必要があるな。ただ、今回の反乱者達は全員がこの花を身につけていた」
と、魔王は机に置いてあった箱を開き、中に入っていた花を取り出す。それは極彩色の花。魔界奥地に咲く、危険な薬草である。
―と、いうことは…―
「あぁ。お前達の報告にあった『レドルブの家畜泥棒』の黒幕は彼らだった。そして同じように持っていた謎の呪薬入り鉱物…。我は現物を見るのは初だが、初めて見るものだな」
同じ箱に入っていた注射器のような鉱物を摘まみ上げる魔王。家畜泥棒達に配られたのとは違い何度も使えるものらしく、中で液体がチャプチャプ揺れていた。
「竜の証言から地下に連中の拠点があるのは間違いない。拠点捜索及びこの鉱物探索のために魔界奥地に兵を送ろう。調査隊や商業組合、各国にも協力を仰ぎたい。お前達からも伝えておいてくれ」
魔王の言葉に、竜崎達は揃って頷いた。
一方、さくらはというと―。暇を持て余した来賓客に囲まれていた。
「それで、その後は…!?」
「いや待て、もう少し詳しく魔王様の動きを教えてくれ」
「いやいや、リュウザキ様やラヴィ教官の戦いぶりを…!」
魔王達とともに中枢にいるのは憚られ、さりとて竜崎についていくわけにも行かなかった。ということで彼女は勇者と共に来賓客がもてなされている広間に来ていたのだ。
彼らのうち幾人かは魔王城から望遠鏡で戦いを覗いていたらしいが、やはりその程度ではむず痒い。そんな折に目の前で戦闘を見ていた少女が現れたとなると囲んでしまうのも道理。
中には付き人として来ていた吟遊詩人も何人か居たため、さくらはそんな彼らを相手に数時間話通しだった。
「あ、あの…。流石に喉が渇いちゃって…」
おずおずと申し出るさくら。すると勇者が手を引き水差しの元へと引っ張ってくれる。
「疲れてない?」
「少し疲れましたけど…まだ大丈夫です」
「そう」
幾度か目になる勇者とのやり取り。彼女は竜崎に『さくらさんが疲れていたら部屋で休ませてあげて』と頼まれているのである。さくらが話している間も、横にちょこんと座り見守ってくれていた。
と、水を飲みながらさくらは勇者に聞いてみる。
「今回みたいな戦いって今までも何度かあったんですか?」
「うん、沢山あったよ。魔王やラヴィ達と一緒によく鎮圧した」
ふと、さくらは思う。
「そういえば、竜崎さん達と魔王様ってどういう関係なんだろ…」
片や先代魔王を討った一行、片やその先代魔王を父に持つらしい現魔王。およそ仲良くなれる気はしないが、そんな彼らはまるで古馴染みの友のようである。
「何があったんだろ」
気になったさくらは勇者に聞いてみようとしたが…。
「おーい、まだかい?」
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