200 / 391
―追悼式―
199話 迎え撃つ④
しおりを挟む
「大将首が動いて良いのかの?」
そんな一言に、魔王はピタリと足を止める。発言主は何故かにやつく賢者。それに乗じるように、ラヴィは魔王を引き止めた。
「そうですよ! リュウザキの奴も魔王様にはどっしりと構えていてと言っていたのですから!」
必死な彼女だが、魔王はラヴィを優しい声で宥めた。
「ラヴィ、そうはいかない。我が力を揮わなければ危険分子達は更に増長し、その分民からの信頼は潰える。『魔王ここにあり』と味方にも敵にも示す必要がある」
そこで言葉を切った魔王は、ラヴィにスッと近づき彼女の頭を撫でた。
「それに、この程度の反乱で我が討ち取られるとでも?」
「―。あ、いえ!そういうことではなく…! 幾度となく同じような反乱を退けてきた魔王様のお力は疑いようありませんが、危険なのは変わりないのですから…!」
少しホウッと惚けていたラヴィだったが、慌てて言葉を継ぐ。そのしどろもどろさを軽く笑いながら、魔王は彼女に指示を出した。
「そうか、なら命令だ。『お前はこの場に留まり、その子を守れ』」
流石に主からの命令とあってはそれ以上抵抗することができず、ラヴィは渋々諦めた。
「はい…。 ですがどうかお気をつけて!」
「勿論だ」
そう言葉を返すと、魔王は自らの翼をバサリと開く。その大きさ、片翼だけでも人を包めるほどに大きい。そのまま軽く羽ばたくと、彼はふわりと浮き上がり空高くへ浮かび上がった。
「さて…好都合だ」
眼下を広く見渡せるほど高く飛び上がった魔王は、大きく弧を描きながら空を舞う大木たちに向けスッと手を伸ばす。そして、そのまま薙ぎ払うかのように腕を振った。
すると飛んでいた木は空中でピタリと静止。続いてバキバキと音を立て割れ始めたのだ。
「えっ!?一体何が…!?」
驚いてしまうさくら。そんな彼女にラヴィが説明をしてくれた。
「魔王様は『念魔術』の使い手だ。視界に入るものならば、あの木のように自由自在に操り壊すことが可能なんだ。その分どの魔術より習得が難しい代物でな。私が知る限り、あれを使えるのは魔王様と賢者殿だけだ」
「つまり、サイコキネシスですか…?」
元の世界でたまに聞くその単語をさくらは思わず口に出す。とはいえそれが登場するのはゲームやアニメ、そして手品の時だけ。実際に目にするのは初めてである。
「そういえばリュウザキの奴も同じことを言っていたな。やはりそちらの世界ではそう言うんだな」
ラヴィの言葉から、竜崎も同じ感想を抱いていたようだ。『魔王』の名に相応しい力を持っているというのは伊達ではない。
裂かれた木の破片達の先端はまるでの恐ろしいほど鋭く尖り、数百を超える槍に。
「数を減らさせてもらうぞ」
パチンッ
魔王が鳴らした指の音を合図に、空中に留まっていた即席の木槍は一斉に落下していく。それは丁度森を抜けた魔獣達の第一陣へと降り注いだ。
ドドドドドッ!
槍は勢いよく魔獣達に突き刺さり、次々と仕留めていく。
それだけではない。地面に突き刺さった槍はまるで巨大な漏斗のような形を地面に形成。どうやら魔王の念力によって硬化しているらしく、魔獣達の巨体がぶつかってもびくともしない。
突き刺された魔獣の死骸も相まって邪魔くさい壁となり、広がって走っていた魔獣達は狭い出口に押し寄せるしかなくなった。
「これで大分狩りやすくなったか」
恐らく反乱側は数で押しつぶす作戦だったのだろう。だがこうなってしまえばその作戦も台無しである。
魔王はふわっと地に降りると、竜崎と勇者の元へ。
「リュウザキ、勇者と共に敵の本隊を少し叩いてきてくれ。我は上空から援護をする」
「良いのか?今離れたら…」
「それが目的だ」
「…わかった、気を付けて。 アリシャ、行こう」
魔王の言葉から何かを悟った竜崎は勇者と共に、足止めを食らっている魔獣達の元へと駆け出していった。
そんな一言に、魔王はピタリと足を止める。発言主は何故かにやつく賢者。それに乗じるように、ラヴィは魔王を引き止めた。
「そうですよ! リュウザキの奴も魔王様にはどっしりと構えていてと言っていたのですから!」
必死な彼女だが、魔王はラヴィを優しい声で宥めた。
「ラヴィ、そうはいかない。我が力を揮わなければ危険分子達は更に増長し、その分民からの信頼は潰える。『魔王ここにあり』と味方にも敵にも示す必要がある」
そこで言葉を切った魔王は、ラヴィにスッと近づき彼女の頭を撫でた。
「それに、この程度の反乱で我が討ち取られるとでも?」
「―。あ、いえ!そういうことではなく…! 幾度となく同じような反乱を退けてきた魔王様のお力は疑いようありませんが、危険なのは変わりないのですから…!」
少しホウッと惚けていたラヴィだったが、慌てて言葉を継ぐ。そのしどろもどろさを軽く笑いながら、魔王は彼女に指示を出した。
「そうか、なら命令だ。『お前はこの場に留まり、その子を守れ』」
流石に主からの命令とあってはそれ以上抵抗することができず、ラヴィは渋々諦めた。
「はい…。 ですがどうかお気をつけて!」
「勿論だ」
そう言葉を返すと、魔王は自らの翼をバサリと開く。その大きさ、片翼だけでも人を包めるほどに大きい。そのまま軽く羽ばたくと、彼はふわりと浮き上がり空高くへ浮かび上がった。
「さて…好都合だ」
眼下を広く見渡せるほど高く飛び上がった魔王は、大きく弧を描きながら空を舞う大木たちに向けスッと手を伸ばす。そして、そのまま薙ぎ払うかのように腕を振った。
すると飛んでいた木は空中でピタリと静止。続いてバキバキと音を立て割れ始めたのだ。
「えっ!?一体何が…!?」
驚いてしまうさくら。そんな彼女にラヴィが説明をしてくれた。
「魔王様は『念魔術』の使い手だ。視界に入るものならば、あの木のように自由自在に操り壊すことが可能なんだ。その分どの魔術より習得が難しい代物でな。私が知る限り、あれを使えるのは魔王様と賢者殿だけだ」
「つまり、サイコキネシスですか…?」
元の世界でたまに聞くその単語をさくらは思わず口に出す。とはいえそれが登場するのはゲームやアニメ、そして手品の時だけ。実際に目にするのは初めてである。
「そういえばリュウザキの奴も同じことを言っていたな。やはりそちらの世界ではそう言うんだな」
ラヴィの言葉から、竜崎も同じ感想を抱いていたようだ。『魔王』の名に相応しい力を持っているというのは伊達ではない。
裂かれた木の破片達の先端はまるでの恐ろしいほど鋭く尖り、数百を超える槍に。
「数を減らさせてもらうぞ」
パチンッ
魔王が鳴らした指の音を合図に、空中に留まっていた即席の木槍は一斉に落下していく。それは丁度森を抜けた魔獣達の第一陣へと降り注いだ。
ドドドドドッ!
槍は勢いよく魔獣達に突き刺さり、次々と仕留めていく。
それだけではない。地面に突き刺さった槍はまるで巨大な漏斗のような形を地面に形成。どうやら魔王の念力によって硬化しているらしく、魔獣達の巨体がぶつかってもびくともしない。
突き刺された魔獣の死骸も相まって邪魔くさい壁となり、広がって走っていた魔獣達は狭い出口に押し寄せるしかなくなった。
「これで大分狩りやすくなったか」
恐らく反乱側は数で押しつぶす作戦だったのだろう。だがこうなってしまえばその作戦も台無しである。
魔王はふわっと地に降りると、竜崎と勇者の元へ。
「リュウザキ、勇者と共に敵の本隊を少し叩いてきてくれ。我は上空から援護をする」
「良いのか?今離れたら…」
「それが目的だ」
「…わかった、気を付けて。 アリシャ、行こう」
魔王の言葉から何かを悟った竜崎は勇者と共に、足止めを食らっている魔獣達の元へと駆け出していった。
0
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スローライフとは何なのか? のんびり建国記
久遠 れんり
ファンタジー
突然の異世界転移。
ちょっとした事故により、もう世界の命運は、一緒に来た勇者くんに任せることにして、いきなり告白された彼女と、日本へ帰る事を少し思いながら、どこでもキャンプのできる異世界で、のんびり暮らそうと密かに心に決める。
だけどまあ、そんな事は夢の夢。
現実は、そんな考えを許してくれなかった。
三日と置かず、騒動は降ってくる。
基本は、いちゃこらファンタジーの予定。
そんな感じで、進みます。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる