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―閑話―
191話 精霊術代理講師 エルフリーデ②
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「…土の高位精霊『アスグラド』が棲む地『連砂の地』は、先に説明した風の高位精霊『エーリエル』が棲む風で常に荒れ狂う『風易の地』とは違い落ち着いている。だがその脅威は他の魔神が棲む地となんら変わりが無い。砂でできた大地や岩石で構成された山や丘が主であるが、下手に重いものを持って侵入するとたちどころに砂の中に取り込まれてしまう。貴重な鉱石を狙い盗掘家が後を絶たないが、そのほとんどは地面に飲み込まれ息絶える。空を飛ぶ術を身に着けるか、連砂の地を管理する巫女を頼るかをしないうちに訪問するのはおすすめしない」
授業中、さくらはずっと唖然としていた。授業前からおかしいとは思っていた。竜崎の代わりに登壇したエルフリーデを見て、生徒達から「授業の仕方が変わって面倒だ」という内容の愚痴は一切なかったのだ。
それもそのはず、エルフリーデの授業の進行の仕方は、竜崎とそっくりなのだ。授業のメイン内容だけでなく、時折挟まれる小ネタ、実際に精霊を呼び出し説明、理解できていなさそうな生徒がいればその生徒に応じた解説を入れるやり方…。口調こそ違うが、本質は全く一緒である。
そして野外の実践練習でもそれは変わらず。精霊飛び交う中を華麗に移動しながら一人一人にアドバイスしていくその姿はまるで竜崎と見まがうほどであった。
なるほど、誰からも不満が出ないわけである。これでは竜崎の授業を受けているのとほとんど変わらない。寧ろ邪な男子達からは少し露出が高めの服を着ているエルフリーデの方が良いとまで聞こえてきた。
「今日の授業はここまで。『魔術は誰かを傷つけるものではなく、誰かを助けるためにある』。リュウザキ先生の言葉だ。皆忘れぬように!」
エルフリーデはそう授業を締めた。
解散後、さくらはエルフリーデ、ナディと昼食を摂ることに。着いた場所は『竜崎お気に入り』のあのカフェだった。偶然か、それとも慕う相手に倣ってか。どちらかはともかく、さくらは美味しいランチを堪能させてもらった。
「凄いですね…!あそこまで竜崎さんみたいな授業なんて…!」
「ふふっ、そうだろう? 代理教師となるにあたって先生を研究しつくしたからな」
食後のデザートを頂きつつ、さくらの言葉に自慢げに微笑むエルフリーデ。と、さくらは自らについてを聞いてみることに。
「ところで、エルフリーデさんは私の出身を…」
「あぁ、知っているよ。リュウザキ先生の一番弟子を名乗っている身だ、先生の機微は大体察せる。最近やけに嬉しそうだったからな、何かあると思ってナディに探りを入れたんだ」
どうやらさらっとナディがバラしたようである。ナディは少しバツが悪そうに頭を掻いた。
しかしまあ、エルフリーデなら信頼は出来そうである。(自称かどうかはさておき)竜崎の一番弟子だし、と安心したさくらに今度はエルフリーデから質問が返された。
「ところで、オズヴァルドのやつをどう思う?」
「えっ? 良い人だとは思いますけど…」
「ああいや、出来れば『そちらの世界』から見てどうかを教えて欲しいんだ」
「え、えっと…。うるさいし勝手だけど、どこか憎めない感じのする人、ですかね…」
そんなさくらの回答を聞いたエルフリーデとナディは溜息をついた。
「やはりそっちの世界から見てもあいつはそんな感じか。リュウザキ先生に対する言葉遣いさえ改めてくれれば良い奴なのはわかってるんだがなぁ…」
「ほんと、なんであの調子なんですかねぇ…先生が許しちゃってるのが増長させている原因ではあるんですが…」
またも始まるオズヴァルド批判。さくらは慌てて話を逸らす。
「そういえば、竜を使わない理由ってなんですか?」
朝の話の続きを持ちだしたさくらだが、内心しまったと反省していた。あの時エルフリーデ達は微妙な表情をしていた。いくら後で話すと約束してくれていたとはいえ、話題の選択ミスである。そして案の定、エルフリーデは少し悲しそうな表情を浮かべた。
「あぁ…それか…。うーん…簡単に言うと竜に嫌われているというか…」
嫌われている?一体どういうことなのか。エルフリーデには悪いがもっと詳しく聞きたくなったさくらだが…。
「あ、そろそろお昼休みも終わりですね。戻りましょう」
時計を見たナディの言葉に、その場はお流れとなった。
授業中、さくらはずっと唖然としていた。授業前からおかしいとは思っていた。竜崎の代わりに登壇したエルフリーデを見て、生徒達から「授業の仕方が変わって面倒だ」という内容の愚痴は一切なかったのだ。
それもそのはず、エルフリーデの授業の進行の仕方は、竜崎とそっくりなのだ。授業のメイン内容だけでなく、時折挟まれる小ネタ、実際に精霊を呼び出し説明、理解できていなさそうな生徒がいればその生徒に応じた解説を入れるやり方…。口調こそ違うが、本質は全く一緒である。
そして野外の実践練習でもそれは変わらず。精霊飛び交う中を華麗に移動しながら一人一人にアドバイスしていくその姿はまるで竜崎と見まがうほどであった。
なるほど、誰からも不満が出ないわけである。これでは竜崎の授業を受けているのとほとんど変わらない。寧ろ邪な男子達からは少し露出が高めの服を着ているエルフリーデの方が良いとまで聞こえてきた。
「今日の授業はここまで。『魔術は誰かを傷つけるものではなく、誰かを助けるためにある』。リュウザキ先生の言葉だ。皆忘れぬように!」
エルフリーデはそう授業を締めた。
解散後、さくらはエルフリーデ、ナディと昼食を摂ることに。着いた場所は『竜崎お気に入り』のあのカフェだった。偶然か、それとも慕う相手に倣ってか。どちらかはともかく、さくらは美味しいランチを堪能させてもらった。
「凄いですね…!あそこまで竜崎さんみたいな授業なんて…!」
「ふふっ、そうだろう? 代理教師となるにあたって先生を研究しつくしたからな」
食後のデザートを頂きつつ、さくらの言葉に自慢げに微笑むエルフリーデ。と、さくらは自らについてを聞いてみることに。
「ところで、エルフリーデさんは私の出身を…」
「あぁ、知っているよ。リュウザキ先生の一番弟子を名乗っている身だ、先生の機微は大体察せる。最近やけに嬉しそうだったからな、何かあると思ってナディに探りを入れたんだ」
どうやらさらっとナディがバラしたようである。ナディは少しバツが悪そうに頭を掻いた。
しかしまあ、エルフリーデなら信頼は出来そうである。(自称かどうかはさておき)竜崎の一番弟子だし、と安心したさくらに今度はエルフリーデから質問が返された。
「ところで、オズヴァルドのやつをどう思う?」
「えっ? 良い人だとは思いますけど…」
「ああいや、出来れば『そちらの世界』から見てどうかを教えて欲しいんだ」
「え、えっと…。うるさいし勝手だけど、どこか憎めない感じのする人、ですかね…」
そんなさくらの回答を聞いたエルフリーデとナディは溜息をついた。
「やはりそっちの世界から見てもあいつはそんな感じか。リュウザキ先生に対する言葉遣いさえ改めてくれれば良い奴なのはわかってるんだがなぁ…」
「ほんと、なんであの調子なんですかねぇ…先生が許しちゃってるのが増長させている原因ではあるんですが…」
またも始まるオズヴァルド批判。さくらは慌てて話を逸らす。
「そういえば、竜を使わない理由ってなんですか?」
朝の話の続きを持ちだしたさくらだが、内心しまったと反省していた。あの時エルフリーデ達は微妙な表情をしていた。いくら後で話すと約束してくれていたとはいえ、話題の選択ミスである。そして案の定、エルフリーデは少し悲しそうな表情を浮かべた。
「あぁ…それか…。うーん…簡単に言うと竜に嫌われているというか…」
嫌われている?一体どういうことなのか。エルフリーデには悪いがもっと詳しく聞きたくなったさくらだが…。
「あ、そろそろお昼休みも終わりですね。戻りましょう」
時計を見たナディの言葉に、その場はお流れとなった。
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