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―オズヴァルドと共に―
187話 天才オズヴァルド
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「はい到着っと!皆お疲れ様!」
村へ降り立ち、とりあえず家畜達を牧場へ入れるオズヴァルド。空から降ってきた牛たちは地上に降り立つと平然と草を食み始めた。あの兵2人は竜崎から何か頼まれたらしく、足早にどこかへと向かっていった。
そんな中、ネリーが駄々をこねた。
「いいなー!私も浮遊魔術を使いたい!オズヴァルド先生教えて!」
あれだけ楽しく空を飛べればそんな思いも当然生まれる。オズヴァルドは軽く了承すると、言葉を選びながら説明を始めた。
「えー。えっとね。まず〇×△□と詠唱してね、次に体の中にある魔力のうち、使う分をざっくり5等分にして、手足それぞれにえいやって振り分けて、あ、そこで失敗すると即座に落下してしまうからちょいちょい微調整を加えながら、足りなかったらどうにか補充するんだけど、そして空を飛ぶことを念じて、そこから体をふわふわさせて、でもそれでいて体の骨までぐにゃぐにゃにし過ぎて堅さを失わないように…」
「えっ、ちょ!何言っているのかわからないんですけど…」
そのあまりの意味不明さにネリーは頭を混乱させながらストップを入れる。詠唱呪文すら独自のものなのかもっと高度な魔術なのか、一応浮遊魔術を使えるさくらでも全く聞き覚えがなく、発音も出来ない代物であった。
とりあえず出来る限り真似してみるネリー達だが、そんな説明では当然浮くことすらできない。というか詠唱で引っかかったらしく、舌を噛んで悶えていた。
見兼ねたさくらが自分なりの浮遊魔術を使いお手本を示そうとするが…
「あ、違う違う。それじゃあ効率悪いから、魔力の位置をもっと下に。体が自然になる位置に…そこじゃなくてここ。できてないなぁ…あ、そもそも人によって違うんだっけ?そのほうが初めての子には使いやすいんだっけか?」
と、オズヴァルドに妙なアドバイスを入れられ、集中力を切らしてしまったさくらはストンと地面へ。それを見てオズヴァルドは申し訳なさそうに頭を掻いた。
「ごめんね、他人に説明するのって苦手で。自分でやる分にはすぐなんだけどなぁ…」
そういうと呪文を口ずさむ彼。すぐさまフワッ浮き上がった。やはりかなりの感覚派らしい。だが、さくらは少し前の時のことを思い出す。
「でも基礎魔術の授業はわかりやすかったですけど」
あれ以降も何度か受講していた彼の基礎魔術学講座。その全ては実に分かりやすく、さくらもまあまあ魔術が使えるようになったのだが…。
「あぁ。あれ基本的にリュウザキ先生や賢者様の受け売りなんだ。教員採用試験の際、お二人に教わったんだよ」
と、オズヴァルドは笑う。そういえば何度も試験に挑戦したと言っていた。竜崎達も流石に見かねて口添えをしたようだ。
「そういえばリュウザキ先生は何を?」
話のついでで思い出したのか、アイナはオズヴァルドにそう問う。
「リュウザキ先生なら今じん…コホン、砦の調査をしているよ」
「ならお手伝いしたいです!」
先程の恩返しがしたいのか、手を挙げるアイナ。するとオズヴァルドは少し考える素振り。
「うーん、今行って大丈夫かな。まあ私もお手伝いしようとしてたし、行ってみようか!」
そう悩むことなく決定したオズヴァルド。さくら達も乗じ、結局全員で戻ることに。
「きゃっほー!」
ネリーの楽し気な声を聞きながら夜空を翔けるさくら達。そんなこんなであっという間に砦近くまで。既に鎮火はしている様子だが、砦を囲み探索するように光輝く球が幾つも飛び交っている。その正体は恐らく竜崎が呼び出した精霊達。幻想的な雰囲気である。
「あれならもう大丈夫かな、リュウザキせんせーい!」
そう叫ぶとオズヴァルドは砦にいた竜崎の元に急降下。さくら達もグイッと引っ張られる。
「あれ、さくらさん達連れてきちゃったの?まあもういいけど」
少し驚いた様子の竜崎。オズヴァルドは少し声を潜め問う。
「どうでした?」
すると竜崎は残念そうに首を振った。
「何も手がかり無しだね。彼らの言葉を信じるなら、そもそもここには来てないって。全部向こうでやってたみたい。あの兵隊さんに頼んだから即座に手配してくれるとは思うけど…」
―まあ何か証拠があったとしても、お前の爆破で焼失してそうだがな―
「すみません…」
ニアロンの皮肉にシュンとなるオズヴァルド。それを竜崎は宥めた。
「まあ過ぎたことだし仕方ないさ。でも良く花束は見つけたね。おかげで重要参考人を確保できたんだ。お手柄お手柄!」
そう言われ、オズヴァルドはまた元気な表情へと戻った。
「さて。ここにはもう用はないし、また悪人が根城にするかもしれない。砦壊しちゃおうか」
伸びをする竜崎は思わぬ台詞を吐く。砦を壊すとは…?ざわつくさくら達を余所にオズヴァルドが名乗り出た。
「あ、じゃあ私にやらせてください!」
「いいけど、周囲の森に全く被害出さずに出来る?」
「はい!気をつけてやります!」
「よし、じゃあ任せた!」
簡単に許可を出し、さくら達と伸びている盗賊達を連れ砦から少し離れた地へと移動する竜崎。と、ニアロンがさくら達へ囁いた。
―オズヴァルドが天才と呼ばれる由縁、見れるぞ―
「えっ?」
既に彼の実力は垣間見たが、それ以外にも?首を傾げるさくら達にニアロンは説明をする。
―オズヴァルドの魔術の才はミルスパールに匹敵するほどだ。しっかりと修行を積みさえすれば各専門の魔術士達と同等、または凌駕するほどの潜在能力を持つ。ミルスパールはあいつをなんとか学院に引き入れようと躍起になっていた時もあるんだぞ―
「でも召喚術は疎いって」
―お、本人から聞いていたか。その通り。あいつは人に教えるのと同じように、命令を出すのもド下手なんだ。そんなことをするなら自分が突っ込んでいったほうが楽という考えの持ち主でな。そんなことができるのは、あいつが既に基礎魔術を自由自在に操れるほど極めているからでもある―
それはどういう?そう聞こうとするさくら達だったが、それを遮るかのように砦から何者かが飛び上がる。砦に残っていたのはオズヴァルドだけだったはず、となると飛び上がったのは彼ということだが…。
「あ、始まるよ」
まるで花火を見るかのように楽しそうに見守る竜崎。さくら達もそれを見上げると…
「ん…?」
空高くに明るく輝く何かが発生する。星、にしては大きい。太陽、はとうに沈んでいる。ならあれは…?睨みつけている間に、その何かはどんどん大きくなり…。
「いや何ですかあれ!?」
地上に迫りくるそれは、巨大な隕石。燃え盛り、全てを破壊し尽くさんと勢いよく落下してきている。
ゴゴゴゴゴゴ…!
空気を震わせ、夜空を明るく染めながら落ちてくるそれに恐怖を覚え、さくら達は竜崎の服を引っ張る。
「逃げないと!」
「大丈夫だよ。あれは本物の隕石じゃない。土魔術と火の魔術、それらを高い技術で組み合わせ超上空から落下させたのがあれ、『隕滅の一撃』だよ。オズヴァルド先生の特製技だ」
カッコいいなぁと唸る竜崎。だがさくら達はそれどころではない。その隕石は砦の大きさとほぼ同等。そんなものが落ちたら近くにいるさくら達も巻き込まれてしまう。
「大丈夫だよ。気をつけるって言ってたし」
いやそれでなんとかなるのか。慌てふためくさくら達を気の毒に思ったのか、ようやく竜崎は障壁を展開する。とりあえず一安心だが、とうとう目前に迫った隕石に思わず体が竦み動かなくなるさくら達。もう逃げることは出来なくなった。
そして、とうとう隕石は砦を押しつぶし…!
カッ!
耳をつんざく衝撃音、そして砦をまるまる包むように火柱が天を衝く。その勢い、かつて竜崎だ呼び出した火の高位精霊イブリートの一撃に匹敵するほどである。
「うん、火焔と衝撃のコントロールも出来ている。やっぱ凄いなオズヴァルドは」
その竜崎の言葉にさくらはハッと気づく。障壁どころか周囲の森は少し揺れる程度。隕石が落ちたにしてはあまりにも被害が少ない。はた、と思い出す。かつて学園を盗賊が襲った際、オズヴァルドは彼らが乗る機動鎧ごと炎の渦に包んだ。しかし、ボロボロに壊された機動鎧に対して乗っていた盗賊達は僅かな火傷を負ったのみ。基礎魔術を自由自在に操る―。ニアロンの言葉の意味が今わかった。
火柱が消え、周囲はすぐさま闇に包まれる。竜崎が灯してくれた灯りによって見えたのは、大岩が埋まった地面。砦の壁も、塔も、地下も、全てが押しつぶされ、砕かれ消え去っていた。
呆然とするさくら達の横に、スタンと降り立つオズヴァルド。大技を打てて気持ち良かったのか、清々しい表情をしていた。
「お見事オズヴァルド。私も自分の力だけであんな大技撃ってみたいもんだよ」
パチパチと拍手しながら友人を迎える竜崎。と、ボソリと呟いた。
「もしかしたら、術士として選ばれるべきだったのはオズヴァルドだったかもね」
「いいえリュウザキ先生、私では間違いなく無理ですよ。魔界と人界を繋ぎ、20年たった今もなお誰かのために活躍する先生はいつまで経っても私の憧れです」
その歯に衣着せぬ賛辞に竜崎は照れたのか、唐突に話題を変える。
「そういえば選んでくれたこの眼鏡、大役立ちだったよ。ちょっと顔を変えるだけで案外バレにくくなるもんだね。おかげで逮捕が進んだ進んだ」
「でしょう!役立つとおもったんですよね。前ご一緒したとき変装用具に迷っていらしてましたし!」
やっぱり褒められた犬のように喜ぶオズヴァルドであった。
村へ降り立ち、とりあえず家畜達を牧場へ入れるオズヴァルド。空から降ってきた牛たちは地上に降り立つと平然と草を食み始めた。あの兵2人は竜崎から何か頼まれたらしく、足早にどこかへと向かっていった。
そんな中、ネリーが駄々をこねた。
「いいなー!私も浮遊魔術を使いたい!オズヴァルド先生教えて!」
あれだけ楽しく空を飛べればそんな思いも当然生まれる。オズヴァルドは軽く了承すると、言葉を選びながら説明を始めた。
「えー。えっとね。まず〇×△□と詠唱してね、次に体の中にある魔力のうち、使う分をざっくり5等分にして、手足それぞれにえいやって振り分けて、あ、そこで失敗すると即座に落下してしまうからちょいちょい微調整を加えながら、足りなかったらどうにか補充するんだけど、そして空を飛ぶことを念じて、そこから体をふわふわさせて、でもそれでいて体の骨までぐにゃぐにゃにし過ぎて堅さを失わないように…」
「えっ、ちょ!何言っているのかわからないんですけど…」
そのあまりの意味不明さにネリーは頭を混乱させながらストップを入れる。詠唱呪文すら独自のものなのかもっと高度な魔術なのか、一応浮遊魔術を使えるさくらでも全く聞き覚えがなく、発音も出来ない代物であった。
とりあえず出来る限り真似してみるネリー達だが、そんな説明では当然浮くことすらできない。というか詠唱で引っかかったらしく、舌を噛んで悶えていた。
見兼ねたさくらが自分なりの浮遊魔術を使いお手本を示そうとするが…
「あ、違う違う。それじゃあ効率悪いから、魔力の位置をもっと下に。体が自然になる位置に…そこじゃなくてここ。できてないなぁ…あ、そもそも人によって違うんだっけ?そのほうが初めての子には使いやすいんだっけか?」
と、オズヴァルドに妙なアドバイスを入れられ、集中力を切らしてしまったさくらはストンと地面へ。それを見てオズヴァルドは申し訳なさそうに頭を掻いた。
「ごめんね、他人に説明するのって苦手で。自分でやる分にはすぐなんだけどなぁ…」
そういうと呪文を口ずさむ彼。すぐさまフワッ浮き上がった。やはりかなりの感覚派らしい。だが、さくらは少し前の時のことを思い出す。
「でも基礎魔術の授業はわかりやすかったですけど」
あれ以降も何度か受講していた彼の基礎魔術学講座。その全ては実に分かりやすく、さくらもまあまあ魔術が使えるようになったのだが…。
「あぁ。あれ基本的にリュウザキ先生や賢者様の受け売りなんだ。教員採用試験の際、お二人に教わったんだよ」
と、オズヴァルドは笑う。そういえば何度も試験に挑戦したと言っていた。竜崎達も流石に見かねて口添えをしたようだ。
「そういえばリュウザキ先生は何を?」
話のついでで思い出したのか、アイナはオズヴァルドにそう問う。
「リュウザキ先生なら今じん…コホン、砦の調査をしているよ」
「ならお手伝いしたいです!」
先程の恩返しがしたいのか、手を挙げるアイナ。するとオズヴァルドは少し考える素振り。
「うーん、今行って大丈夫かな。まあ私もお手伝いしようとしてたし、行ってみようか!」
そう悩むことなく決定したオズヴァルド。さくら達も乗じ、結局全員で戻ることに。
「きゃっほー!」
ネリーの楽し気な声を聞きながら夜空を翔けるさくら達。そんなこんなであっという間に砦近くまで。既に鎮火はしている様子だが、砦を囲み探索するように光輝く球が幾つも飛び交っている。その正体は恐らく竜崎が呼び出した精霊達。幻想的な雰囲気である。
「あれならもう大丈夫かな、リュウザキせんせーい!」
そう叫ぶとオズヴァルドは砦にいた竜崎の元に急降下。さくら達もグイッと引っ張られる。
「あれ、さくらさん達連れてきちゃったの?まあもういいけど」
少し驚いた様子の竜崎。オズヴァルドは少し声を潜め問う。
「どうでした?」
すると竜崎は残念そうに首を振った。
「何も手がかり無しだね。彼らの言葉を信じるなら、そもそもここには来てないって。全部向こうでやってたみたい。あの兵隊さんに頼んだから即座に手配してくれるとは思うけど…」
―まあ何か証拠があったとしても、お前の爆破で焼失してそうだがな―
「すみません…」
ニアロンの皮肉にシュンとなるオズヴァルド。それを竜崎は宥めた。
「まあ過ぎたことだし仕方ないさ。でも良く花束は見つけたね。おかげで重要参考人を確保できたんだ。お手柄お手柄!」
そう言われ、オズヴァルドはまた元気な表情へと戻った。
「さて。ここにはもう用はないし、また悪人が根城にするかもしれない。砦壊しちゃおうか」
伸びをする竜崎は思わぬ台詞を吐く。砦を壊すとは…?ざわつくさくら達を余所にオズヴァルドが名乗り出た。
「あ、じゃあ私にやらせてください!」
「いいけど、周囲の森に全く被害出さずに出来る?」
「はい!気をつけてやります!」
「よし、じゃあ任せた!」
簡単に許可を出し、さくら達と伸びている盗賊達を連れ砦から少し離れた地へと移動する竜崎。と、ニアロンがさくら達へ囁いた。
―オズヴァルドが天才と呼ばれる由縁、見れるぞ―
「えっ?」
既に彼の実力は垣間見たが、それ以外にも?首を傾げるさくら達にニアロンは説明をする。
―オズヴァルドの魔術の才はミルスパールに匹敵するほどだ。しっかりと修行を積みさえすれば各専門の魔術士達と同等、または凌駕するほどの潜在能力を持つ。ミルスパールはあいつをなんとか学院に引き入れようと躍起になっていた時もあるんだぞ―
「でも召喚術は疎いって」
―お、本人から聞いていたか。その通り。あいつは人に教えるのと同じように、命令を出すのもド下手なんだ。そんなことをするなら自分が突っ込んでいったほうが楽という考えの持ち主でな。そんなことができるのは、あいつが既に基礎魔術を自由自在に操れるほど極めているからでもある―
それはどういう?そう聞こうとするさくら達だったが、それを遮るかのように砦から何者かが飛び上がる。砦に残っていたのはオズヴァルドだけだったはず、となると飛び上がったのは彼ということだが…。
「あ、始まるよ」
まるで花火を見るかのように楽しそうに見守る竜崎。さくら達もそれを見上げると…
「ん…?」
空高くに明るく輝く何かが発生する。星、にしては大きい。太陽、はとうに沈んでいる。ならあれは…?睨みつけている間に、その何かはどんどん大きくなり…。
「いや何ですかあれ!?」
地上に迫りくるそれは、巨大な隕石。燃え盛り、全てを破壊し尽くさんと勢いよく落下してきている。
ゴゴゴゴゴゴ…!
空気を震わせ、夜空を明るく染めながら落ちてくるそれに恐怖を覚え、さくら達は竜崎の服を引っ張る。
「逃げないと!」
「大丈夫だよ。あれは本物の隕石じゃない。土魔術と火の魔術、それらを高い技術で組み合わせ超上空から落下させたのがあれ、『隕滅の一撃』だよ。オズヴァルド先生の特製技だ」
カッコいいなぁと唸る竜崎。だがさくら達はそれどころではない。その隕石は砦の大きさとほぼ同等。そんなものが落ちたら近くにいるさくら達も巻き込まれてしまう。
「大丈夫だよ。気をつけるって言ってたし」
いやそれでなんとかなるのか。慌てふためくさくら達を気の毒に思ったのか、ようやく竜崎は障壁を展開する。とりあえず一安心だが、とうとう目前に迫った隕石に思わず体が竦み動かなくなるさくら達。もう逃げることは出来なくなった。
そして、とうとう隕石は砦を押しつぶし…!
カッ!
耳をつんざく衝撃音、そして砦をまるまる包むように火柱が天を衝く。その勢い、かつて竜崎だ呼び出した火の高位精霊イブリートの一撃に匹敵するほどである。
「うん、火焔と衝撃のコントロールも出来ている。やっぱ凄いなオズヴァルドは」
その竜崎の言葉にさくらはハッと気づく。障壁どころか周囲の森は少し揺れる程度。隕石が落ちたにしてはあまりにも被害が少ない。はた、と思い出す。かつて学園を盗賊が襲った際、オズヴァルドは彼らが乗る機動鎧ごと炎の渦に包んだ。しかし、ボロボロに壊された機動鎧に対して乗っていた盗賊達は僅かな火傷を負ったのみ。基礎魔術を自由自在に操る―。ニアロンの言葉の意味が今わかった。
火柱が消え、周囲はすぐさま闇に包まれる。竜崎が灯してくれた灯りによって見えたのは、大岩が埋まった地面。砦の壁も、塔も、地下も、全てが押しつぶされ、砕かれ消え去っていた。
呆然とするさくら達の横に、スタンと降り立つオズヴァルド。大技を打てて気持ち良かったのか、清々しい表情をしていた。
「お見事オズヴァルド。私も自分の力だけであんな大技撃ってみたいもんだよ」
パチパチと拍手しながら友人を迎える竜崎。と、ボソリと呟いた。
「もしかしたら、術士として選ばれるべきだったのはオズヴァルドだったかもね」
「いいえリュウザキ先生、私では間違いなく無理ですよ。魔界と人界を繋ぎ、20年たった今もなお誰かのために活躍する先生はいつまで経っても私の憧れです」
その歯に衣着せぬ賛辞に竜崎は照れたのか、唐突に話題を変える。
「そういえば選んでくれたこの眼鏡、大役立ちだったよ。ちょっと顔を変えるだけで案外バレにくくなるもんだね。おかげで逮捕が進んだ進んだ」
「でしょう!役立つとおもったんですよね。前ご一緒したとき変装用具に迷っていらしてましたし!」
やっぱり褒められた犬のように喜ぶオズヴァルドであった。
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