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―オズヴァルドと共に―
182話 やりたい放題オズヴァルド 再来
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「ようし!そうと決まれば急ごうか!」
そう言い軽やかに走りだしたオズヴァルドに遅れないよう、必死でついていくさくら達。だが、まともに追いつけない。それもそのはず、竜崎に託されたのが嬉しいらしい彼は建物の屋根や壁を走っているのだ。その様子にざわつく人混みに道を阻まれ、さくら達は思うように進めない。
「オズヴァルド先生ぇ!待ってぇ!」
ネリーの必死な叫びでようやく止まった彼は、そのまま空中浮遊でさくら達の元へ。すると…。
「えい!」
短杖をさくら達に向け、何かを詠唱。次の瞬間、さくら達はふわりと浮かび上がった。
「えっ!?」
「きゃっ!?」
「わっ…!?」
驚くさくら達。どうやら浮遊魔術をかけられたらしい。あれよあれよと家の屋根付近まで体はあがり、さくら達は慌てて足を曲げスカートを押さえる。だがオズヴァルドはそんな事はお構いなし。さらに杖を軽く一振り。すると杖先から紐が伸び、さくら達3人をくるりと結ぶ。
「待っ…!」
嫌な予感がしたさくらはオズヴァルドを止めようとするが、もう遅い。
「さあ行っくよー!」
まるで紐つき風船をもつ子供のように杖を持ち換え、彼はまた壁を走り出す。当然繋がったさくら達もぐいっと引っ張られ…。
「「「「きゃああああ!!」」」
そのまま大通りの空中を引きずられてしまった。
「酷い目にあった…」
竜の発着場。地上に降ろされたさくら達は揃って膝に手をつき溜息をついていた。今オズヴァルドは竜を借りに行っている。どうやら調査隊の大きめな支部がレドルブにはあるらしく、『単独調査許可』のおかげでタダで速い竜を借りられるらしい。
「浮遊魔術をあんな簡単に…オズヴァルドさんって凄い…」
さくらはそう呟く。習得が難しく、消費魔力が多い魔術の一つ、浮遊魔術。ネリー達はまだ使えず、さくらとしても僅かな間高度を維持することができるだけ。しかもそれだけなのに集中力は毎秒ゴリゴリ削られる。そんな高難度魔術をさらっと3人にかけ、まるで風船の如く引っ張るとは。オズヴァルドの底知れなさに舌を巻くさくらであった。
そんな中モカが何かを思い出したらしく、顔を少しひきつらせつつ口を開いた。
「ねえ…確かオズヴァルド先生の竜操縦術って…」
「「あっ…」」
さくら達はここに来る直前、早朝のことを思い出す。あの時オズヴァルドは暴れ竜を完全に御したどころか、寧ろ疲れきるまで空中で曲芸させたのだ。その腕前は素晴らしかったが、素人でもわかる荒運転だった。
しまった…!すっかり忘れていた!と顔を見合わせ俄かに焦るさくら達。そこに竜をつれたオズヴァルドが戻ってきてしまった。
「はーい皆乗ってねー!飛ばすよー!!」
もうその言葉だけでも恐ろしい。イチかバチか、さくらはお願いをしてみる。
「あ、あのオズヴァルドさん…。安全運転でお願いしていいですか?朝みたいなのはちょっと…」
「勿論!リュウザキ先生に言われているんだ!『人を乗せる時は曲芸をするな』って!」
それを聞き、さくら達は胸を撫でおろす。そして心の中で竜崎に感謝し、竜に跨る。全員が乗ったことを確認したオズヴァルドは竜を操り空へと。
「あ、忘れてた」
と、彼はまたも何かを詠唱する。するとさくら達の体の周りに紐が現れ、身体を竜に固定していく。どうやらシートベルト代わりらしい。
「…数多くないですか?」
様子がおかしい。次から次へと現れた紐は数を増し、太くなり、きつくなっていく。まるでジェットコースターのバー並みにギュッと至る所を固定された。
「飛ばすからね! あ、舌噛まないように!」
オズヴァルドの忠告を聞き、さくら達はようやく気付く。曲芸運転を無くしたところで、運転が荒いのは変わらないのだ。
「はいよー!」
バシィン!
「グルルルル!!」
オズヴァルドの掛け声に、竜はひと啼き。次の瞬間、さくら達を襲ったのはトップギア飛行による衝撃と、それによって発生する強風だった。
「「「ひゃああああああああ!!!!」」」
竜崎の運転、ニアロンの加護がなんと有難かったことか。さくら達はまたも悲鳴を挙げるしかなかった。
「あ!あれが戦場跡だよ!まだ武器や鎧が転がっているでしょ!」
「お!あれは旧魔王軍が作った砦の一つだよ! もう今はただの廃墟だけどね!」
飛行中、オズヴァルドは何かを見つけるたびにそうさくら達に声をかける。そんなこと言われても、吹き付ける風で目が開けられない。仮に見れていたとしても、高速移動をしているのだから一瞬で通り過ぎてしまうのがオチである。
さくら達からまともに返事が返ってこなくとも、オズヴァルドは戦争遺跡を目にし次第紹介していく。そのせいで彼の口はほとんど閉じることがない。それほどまでにかなりの戦争跡が残っているらしい。主戦場の一つ、というのは伊達ではないようだ。
幾分経ったであろうか。どうやら目的の村に着いたらしい。竜は急ブレーキ、急降下。トドメと言わんばかりのその行動に、さくら達は意識が少し飛びかけた。
「はいとうちゃーく!!」
飛ばしたおかげでかなり追いついたらしく、村の竜発着場には仕事完了の一服をしようと煙草を咥えたばかりの竜運転手がいた。荒く降りてきたオズヴァルド運転の竜に心底驚き、火をつけた直後のたばこを地面に落としてしまったが。
荒運転によりくたくたになった竜からくたくたになったさくら達が降りる。
「もう動きたくない!」
その場でへたり込むネリー。よほど疲れたらしい。モカとさくらも足取りが少し覚束ない。オズヴァルドだけは元気いっぱいのまま竜へ強化魔術をかけていた。帰りもあれに乗ると思うと思わず身が震えてしまうさくら達であった。
そう言い軽やかに走りだしたオズヴァルドに遅れないよう、必死でついていくさくら達。だが、まともに追いつけない。それもそのはず、竜崎に託されたのが嬉しいらしい彼は建物の屋根や壁を走っているのだ。その様子にざわつく人混みに道を阻まれ、さくら達は思うように進めない。
「オズヴァルド先生ぇ!待ってぇ!」
ネリーの必死な叫びでようやく止まった彼は、そのまま空中浮遊でさくら達の元へ。すると…。
「えい!」
短杖をさくら達に向け、何かを詠唱。次の瞬間、さくら達はふわりと浮かび上がった。
「えっ!?」
「きゃっ!?」
「わっ…!?」
驚くさくら達。どうやら浮遊魔術をかけられたらしい。あれよあれよと家の屋根付近まで体はあがり、さくら達は慌てて足を曲げスカートを押さえる。だがオズヴァルドはそんな事はお構いなし。さらに杖を軽く一振り。すると杖先から紐が伸び、さくら達3人をくるりと結ぶ。
「待っ…!」
嫌な予感がしたさくらはオズヴァルドを止めようとするが、もう遅い。
「さあ行っくよー!」
まるで紐つき風船をもつ子供のように杖を持ち換え、彼はまた壁を走り出す。当然繋がったさくら達もぐいっと引っ張られ…。
「「「「きゃああああ!!」」」
そのまま大通りの空中を引きずられてしまった。
「酷い目にあった…」
竜の発着場。地上に降ろされたさくら達は揃って膝に手をつき溜息をついていた。今オズヴァルドは竜を借りに行っている。どうやら調査隊の大きめな支部がレドルブにはあるらしく、『単独調査許可』のおかげでタダで速い竜を借りられるらしい。
「浮遊魔術をあんな簡単に…オズヴァルドさんって凄い…」
さくらはそう呟く。習得が難しく、消費魔力が多い魔術の一つ、浮遊魔術。ネリー達はまだ使えず、さくらとしても僅かな間高度を維持することができるだけ。しかもそれだけなのに集中力は毎秒ゴリゴリ削られる。そんな高難度魔術をさらっと3人にかけ、まるで風船の如く引っ張るとは。オズヴァルドの底知れなさに舌を巻くさくらであった。
そんな中モカが何かを思い出したらしく、顔を少しひきつらせつつ口を開いた。
「ねえ…確かオズヴァルド先生の竜操縦術って…」
「「あっ…」」
さくら達はここに来る直前、早朝のことを思い出す。あの時オズヴァルドは暴れ竜を完全に御したどころか、寧ろ疲れきるまで空中で曲芸させたのだ。その腕前は素晴らしかったが、素人でもわかる荒運転だった。
しまった…!すっかり忘れていた!と顔を見合わせ俄かに焦るさくら達。そこに竜をつれたオズヴァルドが戻ってきてしまった。
「はーい皆乗ってねー!飛ばすよー!!」
もうその言葉だけでも恐ろしい。イチかバチか、さくらはお願いをしてみる。
「あ、あのオズヴァルドさん…。安全運転でお願いしていいですか?朝みたいなのはちょっと…」
「勿論!リュウザキ先生に言われているんだ!『人を乗せる時は曲芸をするな』って!」
それを聞き、さくら達は胸を撫でおろす。そして心の中で竜崎に感謝し、竜に跨る。全員が乗ったことを確認したオズヴァルドは竜を操り空へと。
「あ、忘れてた」
と、彼はまたも何かを詠唱する。するとさくら達の体の周りに紐が現れ、身体を竜に固定していく。どうやらシートベルト代わりらしい。
「…数多くないですか?」
様子がおかしい。次から次へと現れた紐は数を増し、太くなり、きつくなっていく。まるでジェットコースターのバー並みにギュッと至る所を固定された。
「飛ばすからね! あ、舌噛まないように!」
オズヴァルドの忠告を聞き、さくら達はようやく気付く。曲芸運転を無くしたところで、運転が荒いのは変わらないのだ。
「はいよー!」
バシィン!
「グルルルル!!」
オズヴァルドの掛け声に、竜はひと啼き。次の瞬間、さくら達を襲ったのはトップギア飛行による衝撃と、それによって発生する強風だった。
「「「ひゃああああああああ!!!!」」」
竜崎の運転、ニアロンの加護がなんと有難かったことか。さくら達はまたも悲鳴を挙げるしかなかった。
「あ!あれが戦場跡だよ!まだ武器や鎧が転がっているでしょ!」
「お!あれは旧魔王軍が作った砦の一つだよ! もう今はただの廃墟だけどね!」
飛行中、オズヴァルドは何かを見つけるたびにそうさくら達に声をかける。そんなこと言われても、吹き付ける風で目が開けられない。仮に見れていたとしても、高速移動をしているのだから一瞬で通り過ぎてしまうのがオチである。
さくら達からまともに返事が返ってこなくとも、オズヴァルドは戦争遺跡を目にし次第紹介していく。そのせいで彼の口はほとんど閉じることがない。それほどまでにかなりの戦争跡が残っているらしい。主戦場の一つ、というのは伊達ではないようだ。
幾分経ったであろうか。どうやら目的の村に着いたらしい。竜は急ブレーキ、急降下。トドメと言わんばかりのその行動に、さくら達は意識が少し飛びかけた。
「はいとうちゃーく!!」
飛ばしたおかげでかなり追いついたらしく、村の竜発着場には仕事完了の一服をしようと煙草を咥えたばかりの竜運転手がいた。荒く降りてきたオズヴァルド運転の竜に心底驚き、火をつけた直後のたばこを地面に落としてしまったが。
荒運転によりくたくたになった竜からくたくたになったさくら達が降りる。
「もう動きたくない!」
その場でへたり込むネリー。よほど疲れたらしい。モカとさくらも足取りが少し覚束ない。オズヴァルドだけは元気いっぱいのまま竜へ強化魔術をかけていた。帰りもあれに乗ると思うと思わず身が震えてしまうさくら達であった。
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