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―鬼の頼み―
171話 蛇の纏め方
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「「「シャアアアアッ!」」」
先程までの暴れようとは何か様子が違う白蛇達。自らの身が傷つくのを一切恐れないかのような気迫である。
「メルティ―ソンさん!ウルディーネに!」
さくらの声に、メルティ―ソンは急いでウルディーネに掴まる。暴れる蛇を避けながら、彼女はなんとかさくら達の元へ帰還した。
「大丈夫ですかメルティ―ソンさん」
「は、はい。なんとか…。…ごめんなさい」
一つの頭を正気に戻したことから始まった暴走。責任を感じたのか、メルティ―ソンは申し訳なさそうに頭を下げる。
「メルティ―ソン先生は何も悪くないよ」
「そうよ。一つ目は正気に戻せたんだから」
友人教師2人はそう励ます。代わりにニアロンがメルティ―ソンに問いかけた。
―しかし、突然変貌したな。一体何があったんだ?―
「そのことなんですが、白蛇さんが暴走した理由は何者かにかけられた魔術のせいです。あれは…」
彼女がそう説明しようとした時だった。
「おい、我らよ!一体どうしたというんだ!」
聞こえてくるのは白蛇の声。さくら達がそちらを見ると、一匹だけ正気を取り戻した白蛇が他の白蛇達に襲われていたのだ。
「自分を噛む気か!?どうしたっていうんだ!」
自身の他の頭に噛まれかけ、身をくねらせながら必死に言葉を投げかける正気の白蛇だが、7つの首は全く聞く耳を持たない。どうやら敵と認識されてしまったようだ。
「イヴ先生!」
「わかってるわ!」
竜崎の声にそう返し、イヴはゴーレムの動きを変える。40の手を伸ばし、正気の白蛇を包み込む。
「た、助かった…」
間一髪。包み込まれた白蛇は安堵の息を吐く。しかし、7つの首はゴーレムの手にガツンガツンとその身を打ちつけてくる。全く諦める様子はないようだ。このままではいつまで保つかわからない。
「どうしましょう…」
白蛇を守らなければいけない現状、巨兵の腕を解放するわけにはいかない。イヴはそう呟き、竜崎達も頭を捻らす。
「なんとか止める方法は…」
そんな中、さくらがポツリと漏らす。
「あんだけ体が長いんですからリボンや紐みたいにぎゅっと縛れればいいんですけどね…」
その言葉を聞いた教師陣は一斉に手を打った。
「「「それだ(よ(です))!」」」
「よし、作戦は今言った通りで大丈夫かな」
―全員、蛇に食われないようにな。行くぞ―
ニアロンの合図と共にゴーレム頭頂部から飛び出したのは風の上位精霊シルブ、水の上位精霊ウルディーネ、そして霊獣「白鳥」。シルブに乗っているのは竜崎、ウルディーネにはさくらとニアロン。霊獣のほうはメルティ―ソンである。
その3匹は空中で散開。ウルディーネは空中に水の道を作り出しその上を流れるように、シルブと白鳥はその自慢の翼で空を切りながら一斉に白蛇達へ向かった。
「「「シュルル!」」」
突如目の前に迫った精霊達に気づき、7つの首は最寄りの敵を飲み込まんと動きはじめる。
「上手くいった!」
さくらは思わずそう呟く。作戦の第一段階、それは蛇達を自分達に引きつけること。それが成功した今、次の段階へ進む。
―さくら、防御は任せろ。お前は作戦通り出来る限り動き回れ。もしもの時は私がなんとかする―
「はい!」
背後に蛇達がついてきたのを確認し、さくらはウルディーネに指示を送る。それを聞いたウルディーネは軽く吼えた後、その長い身体を蛇以上にくねらしあちらこちらへ飛び回りはじめた。
「―!」
上へ下へ、右へ左へ、前や後ろへ。蛇の胴の隙間を潜り抜けていく。さくらは吹きつける風と飛んでくる水、そして襲い来る巨大な蛇の顔の恐怖に耐えながら必死にウルディーネの背に掴まりひたすら精霊を動かしまくった。こんなの、テーマパークにある水のジェットコースターの数倍怖い。コースは自分で選択する上に、死の危険まであるのだから。前しか見れないさくらに代わり後ろを見ていたニアロンがしめしめと声をあげた。
―よし、良い感じだ。蛇の体が絡まり始めた―
そう、さくら達が飛び回ってた理由。それは白蛇の長い身体をこんがらがらせるためである。
「ここまで簡単に行くもんなんですね…」
―自分の一部に噛みつこうとするぐらいだ。体同士が絡まる心配なんてするわけがないよな―
ニアロンの楽しそうな声に、さくらも笑う。さくら発案の作戦大成功。あとは仕上げだけである。
―お、さくら正面。清人だ―
そう言われ、さくらは目を凝らす。確かにシルブに乗った竜崎がこちらに飛んできていた。このまま進めば交差しそうである。
―ハイタッチでもするか?―
ニアロンは冗談めいた口調だったが、さくらはそれに乗ってみることに。恐る恐るウルディーネの端に移動し、頑張って手を伸ばしてみた。
すると、さくらが腕を伸ばしたのを竜崎は気づいたらしく、彼もシルブの背から身を乗り出して腕を伸ばし返す。
パンッ!
軽い音と共に、双方の手が打ち合わされる。そのまま背後から追ってくる蛇の頭同士がぶつからないようにグイっと精霊を曲げ、さくら達は最後の締めと言わんばかりに加速させた。蛇もそれを必死になって追いかけるが…!
「「「シャアアアア! ―!?」」」
突然、身体が先に進まなくなる。それほどまでに蛇達の体は絡まりあい、丸まっていた。暴れて解こうとする彼らだったが…。
「仕上げは私よ。少しの間だけだから我慢なさいな」
イヴのゴーレムの手が7つの首を掴み…。
キュッ!
紐を縛るかのように、それぞれを引っ張った。体は固められ、首を押さえられ、とうとう蛇は動けなくなってしまった。
「蛇のお団子、完成ね」
先程までの暴れようとは何か様子が違う白蛇達。自らの身が傷つくのを一切恐れないかのような気迫である。
「メルティ―ソンさん!ウルディーネに!」
さくらの声に、メルティ―ソンは急いでウルディーネに掴まる。暴れる蛇を避けながら、彼女はなんとかさくら達の元へ帰還した。
「大丈夫ですかメルティ―ソンさん」
「は、はい。なんとか…。…ごめんなさい」
一つの頭を正気に戻したことから始まった暴走。責任を感じたのか、メルティ―ソンは申し訳なさそうに頭を下げる。
「メルティ―ソン先生は何も悪くないよ」
「そうよ。一つ目は正気に戻せたんだから」
友人教師2人はそう励ます。代わりにニアロンがメルティ―ソンに問いかけた。
―しかし、突然変貌したな。一体何があったんだ?―
「そのことなんですが、白蛇さんが暴走した理由は何者かにかけられた魔術のせいです。あれは…」
彼女がそう説明しようとした時だった。
「おい、我らよ!一体どうしたというんだ!」
聞こえてくるのは白蛇の声。さくら達がそちらを見ると、一匹だけ正気を取り戻した白蛇が他の白蛇達に襲われていたのだ。
「自分を噛む気か!?どうしたっていうんだ!」
自身の他の頭に噛まれかけ、身をくねらせながら必死に言葉を投げかける正気の白蛇だが、7つの首は全く聞く耳を持たない。どうやら敵と認識されてしまったようだ。
「イヴ先生!」
「わかってるわ!」
竜崎の声にそう返し、イヴはゴーレムの動きを変える。40の手を伸ばし、正気の白蛇を包み込む。
「た、助かった…」
間一髪。包み込まれた白蛇は安堵の息を吐く。しかし、7つの首はゴーレムの手にガツンガツンとその身を打ちつけてくる。全く諦める様子はないようだ。このままではいつまで保つかわからない。
「どうしましょう…」
白蛇を守らなければいけない現状、巨兵の腕を解放するわけにはいかない。イヴはそう呟き、竜崎達も頭を捻らす。
「なんとか止める方法は…」
そんな中、さくらがポツリと漏らす。
「あんだけ体が長いんですからリボンや紐みたいにぎゅっと縛れればいいんですけどね…」
その言葉を聞いた教師陣は一斉に手を打った。
「「「それだ(よ(です))!」」」
「よし、作戦は今言った通りで大丈夫かな」
―全員、蛇に食われないようにな。行くぞ―
ニアロンの合図と共にゴーレム頭頂部から飛び出したのは風の上位精霊シルブ、水の上位精霊ウルディーネ、そして霊獣「白鳥」。シルブに乗っているのは竜崎、ウルディーネにはさくらとニアロン。霊獣のほうはメルティ―ソンである。
その3匹は空中で散開。ウルディーネは空中に水の道を作り出しその上を流れるように、シルブと白鳥はその自慢の翼で空を切りながら一斉に白蛇達へ向かった。
「「「シュルル!」」」
突如目の前に迫った精霊達に気づき、7つの首は最寄りの敵を飲み込まんと動きはじめる。
「上手くいった!」
さくらは思わずそう呟く。作戦の第一段階、それは蛇達を自分達に引きつけること。それが成功した今、次の段階へ進む。
―さくら、防御は任せろ。お前は作戦通り出来る限り動き回れ。もしもの時は私がなんとかする―
「はい!」
背後に蛇達がついてきたのを確認し、さくらはウルディーネに指示を送る。それを聞いたウルディーネは軽く吼えた後、その長い身体を蛇以上にくねらしあちらこちらへ飛び回りはじめた。
「―!」
上へ下へ、右へ左へ、前や後ろへ。蛇の胴の隙間を潜り抜けていく。さくらは吹きつける風と飛んでくる水、そして襲い来る巨大な蛇の顔の恐怖に耐えながら必死にウルディーネの背に掴まりひたすら精霊を動かしまくった。こんなの、テーマパークにある水のジェットコースターの数倍怖い。コースは自分で選択する上に、死の危険まであるのだから。前しか見れないさくらに代わり後ろを見ていたニアロンがしめしめと声をあげた。
―よし、良い感じだ。蛇の体が絡まり始めた―
そう、さくら達が飛び回ってた理由。それは白蛇の長い身体をこんがらがらせるためである。
「ここまで簡単に行くもんなんですね…」
―自分の一部に噛みつこうとするぐらいだ。体同士が絡まる心配なんてするわけがないよな―
ニアロンの楽しそうな声に、さくらも笑う。さくら発案の作戦大成功。あとは仕上げだけである。
―お、さくら正面。清人だ―
そう言われ、さくらは目を凝らす。確かにシルブに乗った竜崎がこちらに飛んできていた。このまま進めば交差しそうである。
―ハイタッチでもするか?―
ニアロンは冗談めいた口調だったが、さくらはそれに乗ってみることに。恐る恐るウルディーネの端に移動し、頑張って手を伸ばしてみた。
すると、さくらが腕を伸ばしたのを竜崎は気づいたらしく、彼もシルブの背から身を乗り出して腕を伸ばし返す。
パンッ!
軽い音と共に、双方の手が打ち合わされる。そのまま背後から追ってくる蛇の頭同士がぶつからないようにグイっと精霊を曲げ、さくら達は最後の締めと言わんばかりに加速させた。蛇もそれを必死になって追いかけるが…!
「「「シャアアアア! ―!?」」」
突然、身体が先に進まなくなる。それほどまでに蛇達の体は絡まりあい、丸まっていた。暴れて解こうとする彼らだったが…。
「仕上げは私よ。少しの間だけだから我慢なさいな」
イヴのゴーレムの手が7つの首を掴み…。
キュッ!
紐を縛るかのように、それぞれを引っ張った。体は固められ、首を押さえられ、とうとう蛇は動けなくなってしまった。
「蛇のお団子、完成ね」
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