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―賢者は語る―
147話 とある日の学院
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あくる日、さくらは竜崎と共に『学院』内部にある調査隊受付にいた。先日のゴスタリア調査の報酬を受け取りにきたのだが、見学参加だったさくらやメストの分は無い、またはあっても少ない額だと勝手に思っていた。しかしながらその金額は他参加者となんら遜色なく、しかもさくらの分に至っては「竜の意来る地」への姫様の護衛代が含まれかなりの額となっていた。以前もとんでもない大金をさくらに渡してくれたというのに律儀なものである。
せっかく来たんだから、と竜崎の提案の元学院内部を案内してもらうことに。そういえば以前竜崎探しでネリー達と来たっきりであった。今回はその本人と共に散策である。
「『学院』は元の世界に当てはめるとするなら大学や研究機関のようなものかな。内部分野も様々。調査隊の管理や派遣業務に始まり、大昔の歴史調査や竜や魔獣の生態調査などなど。その中でも最も力が注がれているのは魔術の研究でね。基礎魔術や召喚術、治癒術や薬学呪術エトセトラ…そして錬金術も未だ残念ながら成果は無いとはいえ研究されているんだ。もっと魔術を手軽なものとするため、魔術の極地を見出すためにね」
彼にそう説明されながら、さくらは辺りを見回す。そこかしこにザ・研究者と言う風貌の面々。種族も実に様々で、魔導書や杖を片手に楽し気に会話をしている。その点は学園と同じようである。
ただし、違うところも。彼らの周りにはゴーレムや妖精、精霊が取り巻く。中には常にふわふわと浮きながら移動している人や、天井を歩いている人まで。窓の外では実験なのだろうか、水流を杖先につけ新体操のリボンのようにくるくる回している人や、何十本もの杖を使い、ダイヤモンドのような形の障壁を作り出している人。小型竜に強化魔術を付与し、重装備の戦士を持ち上げさせようとしている人もいた。それだけ個人個人が魔術を習熟させているということである。子供達が集う学園とは一線を画するということが瞬時にわかる。
「『アリシャバージルに知恵あり、技あり、力あり』。その言葉が指し示す『技』とは即ち学院のこと。魔術を取り扱う技術にかけては学院の右に出る場所はないんじゃなかな。…まあ、最近はソフィアのダルバ工房のことだと勘違いされがちなんだけどね」
と竜崎は言うが、この様子を見れば誰もそれを疑うことはしないだろう。最も、その勘違いはさくらもわかってしまう。なにせソフィア達特製の機動鎧がばったばったと盗賊達をなぎ倒していく姿を先日目撃したばかりなのだから。
―ここまで規模が大きい研究機関はそうは存在しない。各国から訪問にくる学者研究者も沢山だ。ほら、あそこにも―
ニアロンが示した先にはどこぞの国の魔術士なのだろう、見慣れぬローブを纏い周囲をきょろきょろと物珍しそうに眺める一団が学院の職員に先導されていた。
と、そこに駆けてくる学院職員の姿が。やけに息せき切っている。
「リュウザキ様、丁度良いところに!賢者様をご存知ないですか?自室にいらっしゃらなくて…」
「今日は見てませんね―。どうかしたんですか?」
竜崎の言葉に、職員は溜息をついた。
「いつものですよ、いつもの…。またお仕事おサボリになられてどこかへ出かけられたみたいです。あの方が本気を出せば誰にも気づかれず逃げ出すことが可能なので…。今日中に確認してもらわなければいけない書類が山積みなんですよ…」
泣きたげな職員に同情するように、竜崎は頬を掻いた。
「あー…また…。じゃあ私も探すのお手伝いいたしましょう」
「ありがとうございます。…でもどこにいるのでしょう…」
「心当たりは幾つもありますが…」
首を捻る竜崎に対し、ニアロンは呆れながら言い切った。
―大方いつもの酒場だろう―
それを聞いて、さくらは手を挙げた。
「じゃあ私がお金を銀行に預けるついでに賢者さん呼んできますよ?」
正直大金の袋を持ち歩くのは怖いし重いと感じていたところだったのだ。渡りに船。竜崎も彼女に託すことにした。
「ごめんね。お願いしていい?私は他の場所を探してみるよ」
と、いうことでさくらはその場を離れ単独あの酒場へ向かうことになった。
せっかく来たんだから、と竜崎の提案の元学院内部を案内してもらうことに。そういえば以前竜崎探しでネリー達と来たっきりであった。今回はその本人と共に散策である。
「『学院』は元の世界に当てはめるとするなら大学や研究機関のようなものかな。内部分野も様々。調査隊の管理や派遣業務に始まり、大昔の歴史調査や竜や魔獣の生態調査などなど。その中でも最も力が注がれているのは魔術の研究でね。基礎魔術や召喚術、治癒術や薬学呪術エトセトラ…そして錬金術も未だ残念ながら成果は無いとはいえ研究されているんだ。もっと魔術を手軽なものとするため、魔術の極地を見出すためにね」
彼にそう説明されながら、さくらは辺りを見回す。そこかしこにザ・研究者と言う風貌の面々。種族も実に様々で、魔導書や杖を片手に楽し気に会話をしている。その点は学園と同じようである。
ただし、違うところも。彼らの周りにはゴーレムや妖精、精霊が取り巻く。中には常にふわふわと浮きながら移動している人や、天井を歩いている人まで。窓の外では実験なのだろうか、水流を杖先につけ新体操のリボンのようにくるくる回している人や、何十本もの杖を使い、ダイヤモンドのような形の障壁を作り出している人。小型竜に強化魔術を付与し、重装備の戦士を持ち上げさせようとしている人もいた。それだけ個人個人が魔術を習熟させているということである。子供達が集う学園とは一線を画するということが瞬時にわかる。
「『アリシャバージルに知恵あり、技あり、力あり』。その言葉が指し示す『技』とは即ち学院のこと。魔術を取り扱う技術にかけては学院の右に出る場所はないんじゃなかな。…まあ、最近はソフィアのダルバ工房のことだと勘違いされがちなんだけどね」
と竜崎は言うが、この様子を見れば誰もそれを疑うことはしないだろう。最も、その勘違いはさくらもわかってしまう。なにせソフィア達特製の機動鎧がばったばったと盗賊達をなぎ倒していく姿を先日目撃したばかりなのだから。
―ここまで規模が大きい研究機関はそうは存在しない。各国から訪問にくる学者研究者も沢山だ。ほら、あそこにも―
ニアロンが示した先にはどこぞの国の魔術士なのだろう、見慣れぬローブを纏い周囲をきょろきょろと物珍しそうに眺める一団が学院の職員に先導されていた。
と、そこに駆けてくる学院職員の姿が。やけに息せき切っている。
「リュウザキ様、丁度良いところに!賢者様をご存知ないですか?自室にいらっしゃらなくて…」
「今日は見てませんね―。どうかしたんですか?」
竜崎の言葉に、職員は溜息をついた。
「いつものですよ、いつもの…。またお仕事おサボリになられてどこかへ出かけられたみたいです。あの方が本気を出せば誰にも気づかれず逃げ出すことが可能なので…。今日中に確認してもらわなければいけない書類が山積みなんですよ…」
泣きたげな職員に同情するように、竜崎は頬を掻いた。
「あー…また…。じゃあ私も探すのお手伝いいたしましょう」
「ありがとうございます。…でもどこにいるのでしょう…」
「心当たりは幾つもありますが…」
首を捻る竜崎に対し、ニアロンは呆れながら言い切った。
―大方いつもの酒場だろう―
それを聞いて、さくらは手を挙げた。
「じゃあ私がお金を銀行に預けるついでに賢者さん呼んできますよ?」
正直大金の袋を持ち歩くのは怖いし重いと感じていたところだったのだ。渡りに船。竜崎も彼女に託すことにした。
「ごめんね。お願いしていい?私は他の場所を探してみるよ」
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