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―ソフィアの頼み事―
142話 村へ到着
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大きな尻尾をピンと立て、実に朗らかに歩き続けるタマ。たまにユランと大きく揺れる尻尾で正面がほとんど見えないのだが、その点は心配ない。
「やっぱりタマちゃんフワフワですねぇ~」
「気持ちいいわぁ~」
そんな彼の背にはマリアとソフィア。あとさくらが乗っていた。ようやく温かくなってきた空気の中、モフモフを甘受していたのだ。
「ボルガ―、こっち来ないの?」
マリアは共に来ていた職人ボルガ―を呼ぶが、彼は断った。
「いいんすよマリア嬢、堪能してくださいな。俺はいっつも撫でてますから」
「えっ!?どういうこと!?」
ボルガ―の言葉にガバっと体を起こすマリア。彼は笑いながら詳細を明かした。
「ここ最近タマちゃん工房に昼寝しにくるんですぜ。その時に職人皆で撫でさせてもらってるんで」
「えー!知らないそんなの!なんで教えてくれなかったの!?」
「最近のお嬢、さくら嬢ちゃんの杖調整にかかりきりで暇さえあればご自分の工房に籠りきりじゃないすか。邪魔しちゃ悪いでしょ」
「酷い!ボルガ―達最低!」
「えぇ…良かれと思ったんすけどねぇ…」
釈然としないと頭を掻くボルガ―。その様子を竜崎やニアロン、ソフィア達が笑いながら宥めると言った楽し気な雰囲気。とても今から「危険なお願い」を果たしにいくようには見えない。
そんな様子で暫く進み、とある地点でニアロンが声をあげた。
―そろそろだな―
「あら。じゃあ計画通り行きましょう。タマちゃんありがとね。ここから先は自動車で行くわ」
「はーい!」
ソフィアの言葉を聞いてシュルルルルと小さくなったタマは荷台へとぴょんぴょんと戻り、竜崎達の元へ。ボルガ―に撫でられ気持ちよさそうに喉を鳴らした。
ソフィアは修理を終えていた自動車を起動。ブシュンブシュン音を立て車輪は動き出す。そのままさくら達の載る車は目的地へとたどり着いた。
「毎度―!ダルバ工房です!機動鎧お届けに参りました―!」
「おぉ!これはこれはよくいらっしゃってくださいました。しかもソフィア様直々にとは!」
村へ入った瞬間歓待を受ける一行。そこそこ大きい村であり、機動鎧を数十台購入したのもうなずける。
「いやぁー。今工房が若干人手不足気味な上に、機動鎧盗難事件で人手割いてましてね。私が直接来ちゃいましたよ!あ、でもそんな気を遣わずに。普通の職人と同じ対応で構いませんからね!」
カラカラと笑い、ソフィアはマリア達に指示を飛ばして搬入作業を開始する。一台ずつゆっくりと降ろされ、パーツが接続されていく機動鎧。さくらもまた不慣れながらそれを手伝う。
と、ソフィアがその作業を見守る村民に声をかけた。
「そうだ。盗難にあわなかった機動鎧付属の農作業パーツとか、簡単な修理が必要な物とかがあったらメンテナンスしときましょうか?」
「よろしいのですか?」
「ええ勿論!サービスしときますよ」
「ありがとうございます。では只今持ってきますね」
そうお礼を言って駆けだそうとする彼らをソフィアは引き止める。
「この新人達にも運ぶ手伝いをさせてやってください。さくら!リュウ!行っといで!」
「「はい!」」
まずさくらが荷台から降り、続いて竜崎が降りる。リュウ、それは竜崎のことである。今の彼はさくらと同じく作業着を着て、帽子を深く被り、顔には機械油のような黒い汚れがついている。とても勇者一行の1人リュウザキには見えない。
農民についていき、色々な場所から修理用品を回収しては持ってきて、回収しては持ってきてを繰り返す2人。特にパワードスーツである機動鎧が使用する農具は中々に重いが、竜崎がこそりと強化魔術をかけてくれたため比較的楽に運べた。
「よし、と。姐御、こんなものですぜ!」
運んできたものを一か所に集め、竜崎はソフィアにそう報告する。彼女は機動鎧整備のほうをマリア達に一旦任せると竜崎に耳打ちをする。
「どう?首尾は」
「あぁ。各家に精霊は潜り込ませ終わった。幸いにして被害者はほとんどいないようだ。あとはタマだけど…」
意味深な会話をする2人の元に、いつの間にかどこかを散歩していたらしいタマが戻ってきた。竜崎の胸にピョンと飛びつき抱っこされながら報告をする。
「把握、済みました。あと、すぐにはバレそうにないところはもうやっておきました」
それを聞いたソフィアは彼の顔をうりうりと撫でた。
「流石タマちゃん偉いわ!報酬のお肉、倍増してあげる!」
「やった!」
手持ち無沙汰になったさくらはマリア達のほうを手伝いに行く。もう全てのパーツは降ろし終えているはずだが、荷台の奥の方には布が被った何かが残されていた。
「あれは降ろさなくていいの?」
「はい!それは予備パーツと、例のあれ、です」
「あぁ、あれが…」
そんなコソコソ話が進行する中、彼らの元に村長らしき人物がやってきた。
「皆様ありがとうございます。是非私の家でおくつろぎください」
ソフィアはそれを聞くと、手甲をつけ村長の元へ。さくらも彼女に同伴することに。
「おや、あの方達は?」
村長が指摘したのは未だ鎧や回収した修理品を弄っているマリアとボルガ―。
「まだ整備が終わっておりませんので。先にお代金のお話を伺っちゃいます」
「そうですか…。しかし、もう一人おりませんでした?」
ソフィアの説明を聞いて何故か恐れるような声を出す村長。その言葉でさくらも気づいたのだが、いつの間にか竜崎とタマの姿が消えていた。
「あれ、さっきまでいたのに…。でも大方トイレかサボリでしょう。あいつ不真面目ですから。あとでお仕置きしときます」
手甲越しにパキパキと手を鳴らすソフィアに何か言えることもなく、村長は若干不安そうな表情のまま応接間へと案内した。
「いやしかし、遠い中わざわざソフィア様に来ていただけるとは…」
「いえいえ、お気になさらず。あ、こちら機動鎧の説明書になります。今回の機動鎧は一部パーツを壊れた他の機動鎧から流用してます。そのため、廉価版となり依頼通り代金も安くなっておりますが、性能はダルバ工房の名に賭けて劣っていないと断言させてもらいます」
「ほうほう、そうですか。無理を言ってしまい申し訳ございません。何分突然盗まれてしまい割けるお金が少なく困っていたところでして…。おやこれは…」
村長が気づいたのは説明書に張ってある付箋。ソフィアはそれを見るように促した。
「一応廉価版ですので注意事項を追加記載させていただきました。是非ご覧ください」
「どれどれ…。 ―!!」
そのページを見た瞬間、村長の顔が強張る。そして次には希望が入り混じった目をソフィアに向けた。
「そこに書いてある通りです。お気をつけくださいね」
「…わかりました。それで、代金の件なのですが…」
その時だった。部屋の扉をバン!と勢いよく開きぞろぞろと中に入ってくるガラの悪い男たちが10人ほど。村長やさくら達を取り囲むように、ナイフやら剣やらを構えニヤニヤと笑う。
「なに?これ」
そんな彼らを睨みつけるようなソフィア。囲んだうちの1人が代表して口を開いた。
「悪いな、『発明家』ソフィア!機動鎧は俺達が貰う。お前が来るのは想定外だったが、機動鎧に乗っていない、武器も装備してないお前なんてそこらのか弱い女と一緒だぜ!しかもよくわからねえ乗り物で来たじゃねえか。あれは高く売れるぜぇ~!」
げひゃげひゃと汚く笑う強盗達。それを聞いた彼女は平然と言葉を返す。
「そう。じゃああんた達が代金を払ってくれるってこと?」
「んなわけねえだろクソアマ。少しでも抵抗してみろ?村中にいる俺らの仲間がこの村の連中を殺すぞ」
それを聞いたソフィアは、はあ…と溜息。それが諦めによるものだと考え、勝利を確信するように強盗達はまたも笑いあう。だが、そうではなかった。彼女はアイコンタクトで村長に何かを確認すると、横に座るさくらに声をかけた。
「んじゃ、やりましょうかさくらちゃん」
「はい!」
「やっぱりタマちゃんフワフワですねぇ~」
「気持ちいいわぁ~」
そんな彼の背にはマリアとソフィア。あとさくらが乗っていた。ようやく温かくなってきた空気の中、モフモフを甘受していたのだ。
「ボルガ―、こっち来ないの?」
マリアは共に来ていた職人ボルガ―を呼ぶが、彼は断った。
「いいんすよマリア嬢、堪能してくださいな。俺はいっつも撫でてますから」
「えっ!?どういうこと!?」
ボルガ―の言葉にガバっと体を起こすマリア。彼は笑いながら詳細を明かした。
「ここ最近タマちゃん工房に昼寝しにくるんですぜ。その時に職人皆で撫でさせてもらってるんで」
「えー!知らないそんなの!なんで教えてくれなかったの!?」
「最近のお嬢、さくら嬢ちゃんの杖調整にかかりきりで暇さえあればご自分の工房に籠りきりじゃないすか。邪魔しちゃ悪いでしょ」
「酷い!ボルガ―達最低!」
「えぇ…良かれと思ったんすけどねぇ…」
釈然としないと頭を掻くボルガ―。その様子を竜崎やニアロン、ソフィア達が笑いながら宥めると言った楽し気な雰囲気。とても今から「危険なお願い」を果たしにいくようには見えない。
そんな様子で暫く進み、とある地点でニアロンが声をあげた。
―そろそろだな―
「あら。じゃあ計画通り行きましょう。タマちゃんありがとね。ここから先は自動車で行くわ」
「はーい!」
ソフィアの言葉を聞いてシュルルルルと小さくなったタマは荷台へとぴょんぴょんと戻り、竜崎達の元へ。ボルガ―に撫でられ気持ちよさそうに喉を鳴らした。
ソフィアは修理を終えていた自動車を起動。ブシュンブシュン音を立て車輪は動き出す。そのままさくら達の載る車は目的地へとたどり着いた。
「毎度―!ダルバ工房です!機動鎧お届けに参りました―!」
「おぉ!これはこれはよくいらっしゃってくださいました。しかもソフィア様直々にとは!」
村へ入った瞬間歓待を受ける一行。そこそこ大きい村であり、機動鎧を数十台購入したのもうなずける。
「いやぁー。今工房が若干人手不足気味な上に、機動鎧盗難事件で人手割いてましてね。私が直接来ちゃいましたよ!あ、でもそんな気を遣わずに。普通の職人と同じ対応で構いませんからね!」
カラカラと笑い、ソフィアはマリア達に指示を飛ばして搬入作業を開始する。一台ずつゆっくりと降ろされ、パーツが接続されていく機動鎧。さくらもまた不慣れながらそれを手伝う。
と、ソフィアがその作業を見守る村民に声をかけた。
「そうだ。盗難にあわなかった機動鎧付属の農作業パーツとか、簡単な修理が必要な物とかがあったらメンテナンスしときましょうか?」
「よろしいのですか?」
「ええ勿論!サービスしときますよ」
「ありがとうございます。では只今持ってきますね」
そうお礼を言って駆けだそうとする彼らをソフィアは引き止める。
「この新人達にも運ぶ手伝いをさせてやってください。さくら!リュウ!行っといで!」
「「はい!」」
まずさくらが荷台から降り、続いて竜崎が降りる。リュウ、それは竜崎のことである。今の彼はさくらと同じく作業着を着て、帽子を深く被り、顔には機械油のような黒い汚れがついている。とても勇者一行の1人リュウザキには見えない。
農民についていき、色々な場所から修理用品を回収しては持ってきて、回収しては持ってきてを繰り返す2人。特にパワードスーツである機動鎧が使用する農具は中々に重いが、竜崎がこそりと強化魔術をかけてくれたため比較的楽に運べた。
「よし、と。姐御、こんなものですぜ!」
運んできたものを一か所に集め、竜崎はソフィアにそう報告する。彼女は機動鎧整備のほうをマリア達に一旦任せると竜崎に耳打ちをする。
「どう?首尾は」
「あぁ。各家に精霊は潜り込ませ終わった。幸いにして被害者はほとんどいないようだ。あとはタマだけど…」
意味深な会話をする2人の元に、いつの間にかどこかを散歩していたらしいタマが戻ってきた。竜崎の胸にピョンと飛びつき抱っこされながら報告をする。
「把握、済みました。あと、すぐにはバレそうにないところはもうやっておきました」
それを聞いたソフィアは彼の顔をうりうりと撫でた。
「流石タマちゃん偉いわ!報酬のお肉、倍増してあげる!」
「やった!」
手持ち無沙汰になったさくらはマリア達のほうを手伝いに行く。もう全てのパーツは降ろし終えているはずだが、荷台の奥の方には布が被った何かが残されていた。
「あれは降ろさなくていいの?」
「はい!それは予備パーツと、例のあれ、です」
「あぁ、あれが…」
そんなコソコソ話が進行する中、彼らの元に村長らしき人物がやってきた。
「皆様ありがとうございます。是非私の家でおくつろぎください」
ソフィアはそれを聞くと、手甲をつけ村長の元へ。さくらも彼女に同伴することに。
「おや、あの方達は?」
村長が指摘したのは未だ鎧や回収した修理品を弄っているマリアとボルガ―。
「まだ整備が終わっておりませんので。先にお代金のお話を伺っちゃいます」
「そうですか…。しかし、もう一人おりませんでした?」
ソフィアの説明を聞いて何故か恐れるような声を出す村長。その言葉でさくらも気づいたのだが、いつの間にか竜崎とタマの姿が消えていた。
「あれ、さっきまでいたのに…。でも大方トイレかサボリでしょう。あいつ不真面目ですから。あとでお仕置きしときます」
手甲越しにパキパキと手を鳴らすソフィアに何か言えることもなく、村長は若干不安そうな表情のまま応接間へと案内した。
「いやしかし、遠い中わざわざソフィア様に来ていただけるとは…」
「いえいえ、お気になさらず。あ、こちら機動鎧の説明書になります。今回の機動鎧は一部パーツを壊れた他の機動鎧から流用してます。そのため、廉価版となり依頼通り代金も安くなっておりますが、性能はダルバ工房の名に賭けて劣っていないと断言させてもらいます」
「ほうほう、そうですか。無理を言ってしまい申し訳ございません。何分突然盗まれてしまい割けるお金が少なく困っていたところでして…。おやこれは…」
村長が気づいたのは説明書に張ってある付箋。ソフィアはそれを見るように促した。
「一応廉価版ですので注意事項を追加記載させていただきました。是非ご覧ください」
「どれどれ…。 ―!!」
そのページを見た瞬間、村長の顔が強張る。そして次には希望が入り混じった目をソフィアに向けた。
「そこに書いてある通りです。お気をつけくださいね」
「…わかりました。それで、代金の件なのですが…」
その時だった。部屋の扉をバン!と勢いよく開きぞろぞろと中に入ってくるガラの悪い男たちが10人ほど。村長やさくら達を取り囲むように、ナイフやら剣やらを構えニヤニヤと笑う。
「なに?これ」
そんな彼らを睨みつけるようなソフィア。囲んだうちの1人が代表して口を開いた。
「悪いな、『発明家』ソフィア!機動鎧は俺達が貰う。お前が来るのは想定外だったが、機動鎧に乗っていない、武器も装備してないお前なんてそこらのか弱い女と一緒だぜ!しかもよくわからねえ乗り物で来たじゃねえか。あれは高く売れるぜぇ~!」
げひゃげひゃと汚く笑う強盗達。それを聞いた彼女は平然と言葉を返す。
「そう。じゃああんた達が代金を払ってくれるってこと?」
「んなわけねえだろクソアマ。少しでも抵抗してみろ?村中にいる俺らの仲間がこの村の連中を殺すぞ」
それを聞いたソフィアは、はあ…と溜息。それが諦めによるものだと考え、勝利を確信するように強盗達はまたも笑いあう。だが、そうではなかった。彼女はアイコンタクトで村長に何かを確認すると、横に座るさくらに声をかけた。
「んじゃ、やりましょうかさくらちゃん」
「はい!」
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