【第一部】異世界を先に生きる ~先輩転移者先生との異世界生活記!~

月ノ輪

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―閑話―

118話 懇親会①

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その夜、アリシャバージル王城の一角にある大広間。代表選手達はそこに集められた。夕食を兼ねた懇親会の開催である。

「おぉおお!」

「これはすごい…!」

「これ全部食べていいの!?」

彼らの目の前に並べられたるは肉料理、魚料理、揚げ物、スープ、サラダ、パン、果物にデザートetcetc…贅を尽くしたビュッフェの数々。しかもシェフ達がその場で調理してくれている。既に一部生徒たちは場に漂う美味しそうな匂いにやられてお腹がぐうと鳴っていた。

この場には代表戦を観戦していた王族や一部貴族も招待されている。だからこその豪華具合なのだが…。

「量が…とんでもない…」

それにしても、である。食べ盛りの、しかも先程存分に体力を使った生徒達全員用に作られているためどの料理も山のように積まれていた。


各々のチームにあてがわれたテーブルにつき、飲み物が配られると、皆の前に現れたのはアリシャバージル王。ザワザワとしていた生徒達もピタリと静まった。

王はゴホンと咳払いを1つし、口を開いた。
「皆の者、良い代表戦だった。今年の試合は近年稀に見る素晴らしき戦い。儂も思わず年甲斐もなくはしゃいでしまっての。おかげで付き人から注意をされてしまったわい」

そこかしこから堪えるような笑いが漏れる。それを聞いた王は嬉しそうな顔を浮かべた。

「皆も腹が減っているであろうからな、簡単に締めよう。本宴は頑張った皆に対する褒美のようなもの。存分に食べ、飲み、語らい、明日への糧としてくれい!では、乾杯!」

「「「乾杯!」」」

宴が始まり、腹を空かせた子たちは皿を持って一斉にビュッフェの元に。竜崎達職員が誘導をしているが、長蛇の列。近づく気も起きないさくらはとりあえずメストと共にジュースを飲みながら待つことにした。なおクラウスは速攻で列に加わっている。


「何はともあれ、お疲れ様さくらさん。やっぱり強いね君は。幾度助けられたことか」

「いえ、メスト先輩こそ。先輩がいなければ最初に囲まれた時に速攻で負けていました。そういえば怪我は大丈夫なんですか?」

「うん、数日は過度な運動を控えてと言われたけどね。ところで、あの渦潮の技っていつ学んだんだい?治癒してもらって急いで駆けつけたら、闘技場一面水で埋まっているんだもの。正直、ちょっと恐ろしくなったよ」

「あはは…あの限界突破機構のおかげですよ」

そう返すさくらだが、謙遜しているわけではない。神具をベースとした専用武器に、限界突破機構があってこそ成し遂げられたこと。全てが自分の力によるものだけではないことは本人が一番理解していた。

だがメストは首を振る。
「でも、それを含めても凄いと思うんだ。あれだけの水を作り出すなんて並大抵の人にはできない。それに加えて水を自由自在に動かすなんて…」

一体どんな魔術を?と頭を傾げる彼女に、さくらは正直に答えた。

「えっと、でも使ったのは水の基礎魔術と精霊術だけで。本当はウルディーネみたいな竜を水で作り出そうかなーって思ったんですけど、そこまでは上手くいかなくて…」

「本当にそれだけ?」

コクンと頷く彼女を見て、メストは少し考え込んでから見解を口にした。

「想像する力が強く正確ということなのかな。にしても破格だな…。何か元の世界で鍛えられていたのかい?」

魔術を使うのに想像力が重要だということはさくらも何度か聞いている。とはいえ別にそんな特訓はしたことはない。ただ、元の世界には魔法を取り扱った面白い作品が数多くあり、それを読んでいたから想像力が培われたのかもしれない。もしそうだとしたら、漫画やラノベさまさまである。


「大漁大漁♪」
そこにクラウスが鼻歌を鳴らしながら戻ってくる。両手の皿には山と積まれた料理。元の世界でそんなことをしたら思いっきり叱られるレベルで持ってきていた。

「うわ、凄い量だね」

「これ食べ切れるの…?」

さくらの若干引き気味な質問に、クラウスは勿論、と言い切った。
「魔力を使い過ぎたからな、食べて回収するのは基本だろ。お前もあれだけ魔力を使ったんだ。太るの気にせず食べたほうがいいぞ」

クラウスの言葉に多少イラッとするさくらだが、それに反抗するかのようにきゅぅうとお腹がなる。

「あっ…」

「ふふっ。さあ、そろそろ列も空いたみたいだし、僕たちも取りに行こうか」




宴もたけなわ、ある程度腹が膨れた子達は飲み物を手に立ち上がり、他のチームとの交流を深めに向かう。そこかしこで健闘を讃え合う声が聞こえてくる。

さくら達もまた、その中に。大立ち周りを演じた彼女達は瞬く間に囲まれた。その輪にはエルフの子達や魔族の子達など、今まで戦った皆も混じっていた。

「学園ってやっぱ優秀なんだな!」

「リュウザキ様とジョージ元騎士団長が師匠か、羨ましいなぁ」

「あの技どうやるの?教えて教えて」

質問に呑まれ混乱するさくら、それを助けたのはー。

バシィン!

「ひゃあ!」

「おっと、悪い。これでもまだ強かったか」

さくらが倒した、オグノトス代表戦のオーガ族生徒だった。

「いやぁ、お前すげえな。俺たちは無双する気で来ていたのにまさかあんな序盤に負けちまうとは。しかも俺に至っては、ボンッて食らって気づいたら医務室なんだもの。驚いた驚いた!」

この子もまた、他のオーガ族生徒と同じくさっぱりとした性格をしているようだ。

「負けたのは悔しいが、あんな水魔術見せられたら降参だ!敵わねえ!」

アッハッハと笑う彼に、優勝を治めたスキュルビィ代表であるマーマン族の子達も続いた。

「本当に凄かった。なんとか耐えきれたから良かったものの、あと少し続いていたら私達も力尽きるとこだったよ」

その他大勢、さくらの渦潮に負けた子達やその状況を見ていた子達も一斉に頷く。それほどまでに鮮烈な記憶として残ったらしい。


と、そこにドワーフ族の子と招待客の1人であるマリアが声をかけてきた。

「いたいた!武器見せてもらっていい?」
ドワーフの子は手を合わせて擦りながら頼み込む。約束通り、さくらはラケットを手渡した。

それをしげしげと眺めるドワーフ達。
「これがソフィア様謹製の障壁機構…。すごい…。そしてこの鏡の部分が…」

ごくりと生唾を飲む彼らに代わり、マリアが答えた。
「えぇ、神具の鏡です!」

ざわつく周囲の子達。1人が恐る恐る問う。

「神具って…あの勇者一行が使った?」

「はい!この上にある鏡部分があの高名な『あらゆるものを弾く鏡』です!勿論代表戦では使用禁止ですが、都合上代わりの武器を作ることができなかったので障壁を張って性能を無効化しました!あ、試合中ずっと見てましたけど、神具の力は一度たりとも発動してませんよ!」

自分が作った武器、母が作った障壁機構ということもあって、自信満々に胸を張るマリア。それを聞いて周囲は別のざわつきに包まれる。

「マジかよ…ってことはあの子」

「神具の継承者…つまり勇者一行から認められたってことか?リュウザキ様のお弟子だしあり得る」

「そりゃ勝てないのも納得だな…」

勝手に株が上がっていく様子にさくらはただ苦笑いを浮かべるしかなかった。


「そうだ、ダルバ工房の。武器ありがとうな、返すぜ」

オーガ族に引き続き、限界突破機構付きの武器を借りていたチームは次々とマリアに渡していく。

「いえいえ、おかげで良いデータが集まりました!どうでした使い心地?」

「いやぁ俺達には合わないな。使う度にあんだけ疲れて隙晒すとなると厳しいわ」

その言葉を聞いて、他の使用者達も全員が賛成する。一方、それを受けたマリアは―。

「まだまだ改良の余地ありってことですね!燃えてきました!」

一切めげていない。流石は発明家の娘である。



その後もわいわいと楽しく語り合うさくら達だったが、そこにやってきたのはエルフの副隊長。彼女は学園チームを呼び寄せた。

「学園長殿がお呼びですよ」
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