【第一部】異世界を先に生きる ~先輩転移者先生との異世界生活記!~

月ノ輪

文字の大きさ
上 下
110 / 391
―代表戦、本戦―

109話 代表戦⑧

しおりを挟む
「協力…!?」

思わぬ提案を受け、さくらは惑ってしまう。それを見て、鳥人の子はさらに一押しを加えてきた。。

「予選にもいただろ?裏で手を組んでいた奴。本戦でも当然禁止なんてされていない。まあお前達は開幕それに狙われた側だが…。エルフの弓術は俺の様な鳥人には厄介極まりないからな。一緒に倒そうぜ」

現状、自分達学園側の戦力は低下している。リカバリの時間を確保するためにも、追加の戦力はぜひとも欲しいところ。まさしく垂涎ものの提案だった。

どうしよう。受けるべきなのか。葛藤しながらメストの方をむくと、彼女は相手の攻撃を警戒しながら諭してくれた。

「さくらさんとクラウスくんの判断に委ねるよ。ただ、周りに気を使って自身の気持ちを隠す必要はないさ。思うままに答えて」

「自分の気持ち…」
そう言われ、少し考え込む。確かにこのチャンス、逃すのは勿体ない。でも…!

「お断りします!」
あまりにも無謀な回答だということはさくら自身にもわかっていた。だが、純粋に嫌だったのだ。エルフのあの子、副隊長妹は代表戦開幕前に丁寧に挨拶をしてくれた。そして副隊長自身も見に来ている。そんな状況でこちらがズルをするわけにはいかない。

クラウスもそれに同調した。

「俺も、断る。さっきはお前に助けてもらった立場だが、その要求は飲めない。ジョージ先生の弟子として、正々堂々戦いたいんだ」

「えー。甘ちゃんだな。それで負けたら意味ないだろうに」

不満を露わにする鳥人の子に、さくらは言い返した。

「それでも、です。そんな手段で勝っても嬉しくないんです!」


と、獣人の子が鳥人の子に近寄ってきた。

「おい、やっぱ駄目だわ。エルフの連中からは拒否られた」

「まー無理か。気高い連中だからな。こっちも駄目だ、弱っていても学園代表。意外としっかりしているよ」


「…え?」

さくらは彼らの会話が理解できなかった。そんな中、一歩引いて様子を見ていたメストが答え合わせをした。

「なるほど、エルフ達の方でも何か話し合っていたと思ったら、双方に共闘を持ち掛けていたんだね」

「は…?」

唖然とするクラウス。様子がおかしいと気づいたエルフ達も様子を窺いに来た。

「上手くどっちかに取り入れれば、その分楽に戦いが進められるからな。1つの策略だ」

獣人の片割れの言葉を聞き、彼らも開いた口が塞がらない様子。

両陣営を引っ掻き回した彼ら。それが今や双方から睨まれる事態に。つまり、共通の敵となったということ。副隊長妹とさくらは目だけで会話をし…。


「『炎の矢』!」

「火の精霊!」

獣人二人に向け、一斉に攻撃を放った。

「あっぶな!おい!なんで火ばっか撃ってくるんだよ!獣だからってか?いやどの種族だって基本火は怖いだろ!せっかく整えた尻尾が焦げる!」

いやまあ確かにその通りではあるのだが。他の子も参戦し、火の矢火の魔術は撃たれ続ける。周囲は燃え盛り始めた。


「アチチ…予定通り、撤退だな。他を探しに行こう」

「んだよ。結局学園の一人を助けただけじゃないか。骨折り損だわ…」

毛や羽に火がつかないように、彼らは急いで逃げていった。


「さくらさん、邪魔が入りましたがこれで元通りです。勝負いたしましょう!」

「うん!」

エルフは矢を番え、こちら側も武器を構える。いざ尋常に―!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スローライフとは何なのか? のんびり建国記

久遠 れんり
ファンタジー
突然の異世界転移。 ちょっとした事故により、もう世界の命運は、一緒に来た勇者くんに任せることにして、いきなり告白された彼女と、日本へ帰る事を少し思いながら、どこでもキャンプのできる異世界で、のんびり暮らそうと密かに心に決める。 だけどまあ、そんな事は夢の夢。 現実は、そんな考えを許してくれなかった。 三日と置かず、騒動は降ってくる。 基本は、いちゃこらファンタジーの予定。 そんな感じで、進みます。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました

グミ食べたい
ファンタジー
 疲れ切った現実から逃れるため、VRMMORPG「アナザーワールド・オンライン」に没頭する俺。自由度の高いこのゲームで憧れの料理人を選んだものの、気づけばゲーム内でも完全に負け組。戦闘職ではないこの料理人は、ゲームの中で目立つこともなく、ただ地味に日々を過ごしていた。  そんなある日、フレンドの誘いで参加したレベル上げ中に、運悪く出現したネームドモンスター「猛き猪」に遭遇。通常、戦うには3パーティ18人が必要な強敵で、俺たちのパーティはわずか6人。絶望的な状況で、肝心のアタッカーたちは早々に強制ログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク役クマサンとヒーラーのミコトさん、そして料理人の俺だけ。  逃げるよう促されるも、フレンドを見捨てられず、死を覚悟で猛き猪に包丁を振るうことに。すると、驚くべきことに料理スキルが猛き猪に通用し、しかも与えるダメージは並のアタッカーを遥かに超えていた。これを機に、負け組だった俺の新たな冒険が始まる。  猛き猪との戦いを経て、俺はクマサンとミコトさんと共にギルドを結成。さらに、ある出来事をきっかけにクマサンの正体を知り、その秘密に触れる。そして、クマサンとミコトさんと共にVチューバー活動を始めることになり、ゲーム内外で奇跡の連続が繰り広げられる。  リアルでは無職、ゲームでは負け組職業だった俺が、リアルでもゲームでも自らの力で奇跡を起こす――そんな物語がここに始まる。

処理中です...