104 / 391
―代表戦、本戦―
103話 代表戦②
しおりを挟む
「まさか破ってくる子がいるなんて…僕も精進が足りないな」
無残にも穴が空けられた茨のドームを見て、メストは自分に活を入れ直す。とはいえ剛力を誇るはずのオーガ族の攻撃を防ぎ、他の箇所には傷すらついていない彼女の魔術。竜崎のお墨付きは伊達ではない。
「『限界突破機構』、あの様子だと一長一短だな。他にも持っている奴がいるのか?」
クラウスはそう聞いてくるが、残念ながらわからない。さくらは首を横に振る。
「あぁ、負けた負けた!」
「なあ、学園の。この後どうする気だ?」
むっくりと体を起こしたのはオーガ族。その顔には復讐心や絶望感などなく、さっぱりしている。むしろ学園代表達の行く先を心配してくれるほどだった。
「外の連中、壊すのは諦めたみたいだがずっとお前達を狙っているぞ?」
忠告された通り、外には幾つもの代表チーム達。ただでさえ脅威な相手なのに、全員オーガのチームをいとも簡単に倒したことで一層警戒が増したのだろう。出てきた瞬間倒せるように武器を構え続けていた。
「大丈夫です。作戦はあるんです」
さくらの自信満々な言葉に、彼らは首を傾げた。
茨の中からオグノトス代表達が出ていく。ゼッケンが既にないことをアピールするように両手を挙げながら、さくらの攻撃によって未だ目を回しているもう一人の代表をわっせわっせと運び安全な場所まで移動していった。
それを確認したメストは再度号令を出す。
「少し予定が狂っちゃったけど、計画通りにいこう。2人共準備は良い?」
「「はい!」」
「なんだ?中で何かしているぞ?」
代表の1人が異変に気づく。茨のせいで上手く見えないが、学園代表達が何かを詠唱しているらしい。その言葉で緊張は波及していった。
「ジョージ先生参考、『針鼠』!」
詠唱が終わったクラウスは、魔術が付与された剣を何度も突き出す。すると、一度行う度に槍先のような形の斬撃が空中に残り始めた。さくら達を囲うように設置されたそれが動き出すのを抑えるように、彼は剣に力を籠め待機する。
「よし。さくらさん、お願い」
「はい!『我、汝を解放せん―!』」
メストの合図で、さくらは封印解除呪文を詠唱。ラケットの持ち手上についていた限界突破機構がそれに応えカシャンと開く。そこに手を触れ、魔力を注ぎ込む。
立体魔法陣が起動し、バチバチと音を立て始める。やり過ぎないよう慎重に…。
「…風魔術、準備出来ました!」
「それじゃ、3人それぞれの『奥の手』合わせ技、初披露といこう!」
「出てくるぞ!」
幾重にも絡み合った茨がまた一つ、また一つと崩れるように消えていき、薔薇の花だけが地面に落ちていく。周囲で待機していた他代表達は仕掛ける覚悟を決めた。
そして、最後残った薄い壁が砕け散ると同時に…
「「『青薔薇の舞』!」」
さくらとクラウスの声が響く。その直後。
ゴウッ!!
突風と共に細かな茨と、槍の様な斬撃が彼らを襲った。
「なんで寝坊するんですかナディさん!さくらさんの晴れ舞台だというのに!」
「ごめんなさい!でもタマちゃんも一緒に寝てたじゃないですかぁ!」
「うっ…そうですけど…。ナディさんが寝ぼけて布団に引き込むから…!」
教師寮からコロッセオへの道を駆ける巨大な白い猫。そしてその背には眼鏡の女性。タマとナディである。
竜崎からナディの目覚ましを託されたタマだったのだが、ミイラ取りがミイラになってしまい気づけば試合開始時刻。2人揃って慌てて向かっているという訳である。
コロッセオの前に着き、小さくなったタマを抱きかかえ入場するナディ。階段を駆け上がり、息せき切りながら観客席に顔を出した瞬間だった。
ゴウッ!!
「わっ!」
突如強風が唸る音。流れ弾対策に張られた障壁に遮られ、ビシビシと音が鳴る。反射的に目を瞑った彼女が目を開くと―。
「わぁ…すごい…!」
青い薔薇の花びらが闘技場全体に舞い踊っていた。
メストの魔術が消える前に、さくらが突風を引き起こし茨と花を巻き上げて相手にぶつける。棘は攻撃することしか考えていなかった他代表達の体や顔にものの見事に刺さりまくり、細かな傷をつけていく。
「いたたたっ!」
「う、動けない…!」
花によって視界も奪われ、思わず怯んだ彼らの胸元にはクラウスが作り出した槍状の斬撃がクリティカルヒットしていった。
「ぐわぁ!」
「きゃうっ!」
「がふっ…」
次々と倒れていく代表者達。中にはなんとか凌いだ者もいたが…。
「隙あり!」
さくら達はそれを見逃さず次々と仕留めていった。
あっという間に学園代表を取り囲んでいた他チームは全滅。その見事な手際に観客席からは万雷の拍手が送られた。
だが、彼女達は気を抜かない。
「さくらさん、クラウスくん。魔力大丈夫?」
「まだ元気いっぱいです!」
「問題ありません!」
2人の答えを聞き、メストは離れたところで闘う他チームに標的を定めた。
「よし、攻撃に転じよう!まずはあそこのチームからだ!」
無残にも穴が空けられた茨のドームを見て、メストは自分に活を入れ直す。とはいえ剛力を誇るはずのオーガ族の攻撃を防ぎ、他の箇所には傷すらついていない彼女の魔術。竜崎のお墨付きは伊達ではない。
「『限界突破機構』、あの様子だと一長一短だな。他にも持っている奴がいるのか?」
クラウスはそう聞いてくるが、残念ながらわからない。さくらは首を横に振る。
「あぁ、負けた負けた!」
「なあ、学園の。この後どうする気だ?」
むっくりと体を起こしたのはオーガ族。その顔には復讐心や絶望感などなく、さっぱりしている。むしろ学園代表達の行く先を心配してくれるほどだった。
「外の連中、壊すのは諦めたみたいだがずっとお前達を狙っているぞ?」
忠告された通り、外には幾つもの代表チーム達。ただでさえ脅威な相手なのに、全員オーガのチームをいとも簡単に倒したことで一層警戒が増したのだろう。出てきた瞬間倒せるように武器を構え続けていた。
「大丈夫です。作戦はあるんです」
さくらの自信満々な言葉に、彼らは首を傾げた。
茨の中からオグノトス代表達が出ていく。ゼッケンが既にないことをアピールするように両手を挙げながら、さくらの攻撃によって未だ目を回しているもう一人の代表をわっせわっせと運び安全な場所まで移動していった。
それを確認したメストは再度号令を出す。
「少し予定が狂っちゃったけど、計画通りにいこう。2人共準備は良い?」
「「はい!」」
「なんだ?中で何かしているぞ?」
代表の1人が異変に気づく。茨のせいで上手く見えないが、学園代表達が何かを詠唱しているらしい。その言葉で緊張は波及していった。
「ジョージ先生参考、『針鼠』!」
詠唱が終わったクラウスは、魔術が付与された剣を何度も突き出す。すると、一度行う度に槍先のような形の斬撃が空中に残り始めた。さくら達を囲うように設置されたそれが動き出すのを抑えるように、彼は剣に力を籠め待機する。
「よし。さくらさん、お願い」
「はい!『我、汝を解放せん―!』」
メストの合図で、さくらは封印解除呪文を詠唱。ラケットの持ち手上についていた限界突破機構がそれに応えカシャンと開く。そこに手を触れ、魔力を注ぎ込む。
立体魔法陣が起動し、バチバチと音を立て始める。やり過ぎないよう慎重に…。
「…風魔術、準備出来ました!」
「それじゃ、3人それぞれの『奥の手』合わせ技、初披露といこう!」
「出てくるぞ!」
幾重にも絡み合った茨がまた一つ、また一つと崩れるように消えていき、薔薇の花だけが地面に落ちていく。周囲で待機していた他代表達は仕掛ける覚悟を決めた。
そして、最後残った薄い壁が砕け散ると同時に…
「「『青薔薇の舞』!」」
さくらとクラウスの声が響く。その直後。
ゴウッ!!
突風と共に細かな茨と、槍の様な斬撃が彼らを襲った。
「なんで寝坊するんですかナディさん!さくらさんの晴れ舞台だというのに!」
「ごめんなさい!でもタマちゃんも一緒に寝てたじゃないですかぁ!」
「うっ…そうですけど…。ナディさんが寝ぼけて布団に引き込むから…!」
教師寮からコロッセオへの道を駆ける巨大な白い猫。そしてその背には眼鏡の女性。タマとナディである。
竜崎からナディの目覚ましを託されたタマだったのだが、ミイラ取りがミイラになってしまい気づけば試合開始時刻。2人揃って慌てて向かっているという訳である。
コロッセオの前に着き、小さくなったタマを抱きかかえ入場するナディ。階段を駆け上がり、息せき切りながら観客席に顔を出した瞬間だった。
ゴウッ!!
「わっ!」
突如強風が唸る音。流れ弾対策に張られた障壁に遮られ、ビシビシと音が鳴る。反射的に目を瞑った彼女が目を開くと―。
「わぁ…すごい…!」
青い薔薇の花びらが闘技場全体に舞い踊っていた。
メストの魔術が消える前に、さくらが突風を引き起こし茨と花を巻き上げて相手にぶつける。棘は攻撃することしか考えていなかった他代表達の体や顔にものの見事に刺さりまくり、細かな傷をつけていく。
「いたたたっ!」
「う、動けない…!」
花によって視界も奪われ、思わず怯んだ彼らの胸元にはクラウスが作り出した槍状の斬撃がクリティカルヒットしていった。
「ぐわぁ!」
「きゃうっ!」
「がふっ…」
次々と倒れていく代表者達。中にはなんとか凌いだ者もいたが…。
「隙あり!」
さくら達はそれを見逃さず次々と仕留めていった。
あっという間に学園代表を取り囲んでいた他チームは全滅。その見事な手際に観客席からは万雷の拍手が送られた。
だが、彼女達は気を抜かない。
「さくらさん、クラウスくん。魔力大丈夫?」
「まだ元気いっぱいです!」
「問題ありません!」
2人の答えを聞き、メストは離れたところで闘う他チームに標的を定めた。
「よし、攻撃に転じよう!まずはあそこのチームからだ!」
0
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

青少年病棟
暖
BL
性に関する診察・治療を行う病院。
小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。
※性的描写あり。
※患者・医師ともに全員男性です。
※主人公の患者は中学一年生設定。
※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる