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―代表戦、予選―
98話 マーマン族
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「そういえばこのコロッセオってどこなんですか?」
来たる代表戦本戦に向け修行を重ねるさくらだったが、ふと見返した要項に気になることが。開催場所として書かれているのは『アリシャバージルコロッセオ』という聞きなれぬ闘技場名だったのだ。
「魔界だけでなくて、ここにもあるんですね闘技場」
元の世界では世界遺産に登録されているものぐらいしか知らない。そうほいほいあるものではないと思っていたのだが…。
「どこの国にも大なり小なり闘技場はあるんだけど、アリシャバージルのは立派だよ。魔界のほどではないけどね。見に行くかい?」
ということで竜崎に連れられ見学しにいくことに。一緒に練習していたメストとクラウスもついてきた。
王都から馬車に乗り、数十分。着いたのは…。
「わぁ…!ほんとにコロッセオだ…!」
魔界で見た闘技場は新しい建物だったが、ここのは違う。教科書に載ってそうなほど古めかしく、歴史の息遣いが感じられる。それだけで気分は海外旅行、カメラが使えないのが悔しくて仕方ないほどだ。
中に入ると、来たる代表戦に備え整備が行われていた。一行はそれを見下ろしながら観客席に座る。
「代表戦開催日には各国の先生方に加え貴族や大臣、時には王様も来るんだ。意外と一大イベントなんだよ。脅すつもりはないけど、相手も数多くの候補を押しのけて登ってきた代表生徒達だ。先の予選とは次元が違う試合となるだろう。気を引き締めてね」
その言葉にゴクリとつばを飲み込むさくらとクラウスだった。
と、竜崎達に話しかけてくる人物がいた。
「これはこれはリュウザキ先生、今年もよろしくお願いします」
水色の肌をしたその男性はどこかの国の教員らしい。竜崎もまた顔見知りらしく立ち上がり挨拶をした。
「お久しぶりです。お早い現地入りですね」
「いやー、今年の生徒達がこちらでコンディションを整えたいと言って聞かなくて…」
―彼らか?腕はどんなものだ?―
「ニアロン様。えぇ、いい手練れが揃いましたよ。全員やる気満々です」
さくらが少し離れたところをみると、そこには3人の生徒らしき子供達。同じく水色の肌をしている。顔を突き合わせどう戦闘を繰り広げるかの議論を行っているようだ。
「メストさん、あの方達って魔族なんですか?」
「あれは『マーマン族』だよ。亜人は二種類いてね、剛力を持たせるためにとある霊獣の力を組み込まれ作り出された人種『オーガ族』と、水場を支配するために魚の力を組み込まれた人種『マーマン族』がいるんだ。学園にも在籍している子は結構いるよ」
「そうなんですか?」
オーガ族らしき人の姿は学園内でも外でもよく見る。なにせガタイがいい上に頭から特徴的な角を生やしているからわかりやすいのだ。しかし、マーマン族とやらはあまり見たことがない気が…。
「マーマン族は体に鱗やヒレを持っているんだけど、それが乾いちゃうからって水場の付近以外では長袖長ズボンを履いている人がほとんどなんだ。そのせいで意外と見分けにくかったりするんだよ。さくらさんみたいに魔族と勘違いする人も結構いるんだ」
「鱗、ですか」
そう教えられ、さくらは竜崎と話し込んでいる教員の姿を見る。服の端から確かに鱗らしいものが見て取れた。
「…前から思ってたんだけど、お前って色々と変わってるよな。亜人のこと知らないし、変な形の武器使うし。どこ出身なんだ?」
メストとさくらの会話を聞いていたクラウスがそう訝しむ。
「秘密」
「なんだそりゃ」
さくらの回答に彼は顔をしかめたが、それ以上の詮索はしてこなかった。この類の質問をいなすコツを掴んだ気がする。あまり迷わずスパっと答えればいいのだ。まあ自身が異世界から来たことを隠しておく必要はないのだが…クラウスは絶対変に驚いて説明するのが面倒くさくなるタイプだし。
「―それでこの子達が学園の代表生徒です」
竜崎に紹介され、ハッとなったさくらはメスト達に合わせ慌てて頭を下げる。
「よろしくお願いしますね。私達は『海浜国家スキュルビィ』の代表です。数日後に控えます本戦、私達も全力でいかせてもらいますよ!」
マーマン族の教師はそう宣言する。その顔はなんとも自信に溢れていた。
来たる代表戦本戦に向け修行を重ねるさくらだったが、ふと見返した要項に気になることが。開催場所として書かれているのは『アリシャバージルコロッセオ』という聞きなれぬ闘技場名だったのだ。
「魔界だけでなくて、ここにもあるんですね闘技場」
元の世界では世界遺産に登録されているものぐらいしか知らない。そうほいほいあるものではないと思っていたのだが…。
「どこの国にも大なり小なり闘技場はあるんだけど、アリシャバージルのは立派だよ。魔界のほどではないけどね。見に行くかい?」
ということで竜崎に連れられ見学しにいくことに。一緒に練習していたメストとクラウスもついてきた。
王都から馬車に乗り、数十分。着いたのは…。
「わぁ…!ほんとにコロッセオだ…!」
魔界で見た闘技場は新しい建物だったが、ここのは違う。教科書に載ってそうなほど古めかしく、歴史の息遣いが感じられる。それだけで気分は海外旅行、カメラが使えないのが悔しくて仕方ないほどだ。
中に入ると、来たる代表戦に備え整備が行われていた。一行はそれを見下ろしながら観客席に座る。
「代表戦開催日には各国の先生方に加え貴族や大臣、時には王様も来るんだ。意外と一大イベントなんだよ。脅すつもりはないけど、相手も数多くの候補を押しのけて登ってきた代表生徒達だ。先の予選とは次元が違う試合となるだろう。気を引き締めてね」
その言葉にゴクリとつばを飲み込むさくらとクラウスだった。
と、竜崎達に話しかけてくる人物がいた。
「これはこれはリュウザキ先生、今年もよろしくお願いします」
水色の肌をしたその男性はどこかの国の教員らしい。竜崎もまた顔見知りらしく立ち上がり挨拶をした。
「お久しぶりです。お早い現地入りですね」
「いやー、今年の生徒達がこちらでコンディションを整えたいと言って聞かなくて…」
―彼らか?腕はどんなものだ?―
「ニアロン様。えぇ、いい手練れが揃いましたよ。全員やる気満々です」
さくらが少し離れたところをみると、そこには3人の生徒らしき子供達。同じく水色の肌をしている。顔を突き合わせどう戦闘を繰り広げるかの議論を行っているようだ。
「メストさん、あの方達って魔族なんですか?」
「あれは『マーマン族』だよ。亜人は二種類いてね、剛力を持たせるためにとある霊獣の力を組み込まれ作り出された人種『オーガ族』と、水場を支配するために魚の力を組み込まれた人種『マーマン族』がいるんだ。学園にも在籍している子は結構いるよ」
「そうなんですか?」
オーガ族らしき人の姿は学園内でも外でもよく見る。なにせガタイがいい上に頭から特徴的な角を生やしているからわかりやすいのだ。しかし、マーマン族とやらはあまり見たことがない気が…。
「マーマン族は体に鱗やヒレを持っているんだけど、それが乾いちゃうからって水場の付近以外では長袖長ズボンを履いている人がほとんどなんだ。そのせいで意外と見分けにくかったりするんだよ。さくらさんみたいに魔族と勘違いする人も結構いるんだ」
「鱗、ですか」
そう教えられ、さくらは竜崎と話し込んでいる教員の姿を見る。服の端から確かに鱗らしいものが見て取れた。
「…前から思ってたんだけど、お前って色々と変わってるよな。亜人のこと知らないし、変な形の武器使うし。どこ出身なんだ?」
メストとさくらの会話を聞いていたクラウスがそう訝しむ。
「秘密」
「なんだそりゃ」
さくらの回答に彼は顔をしかめたが、それ以上の詮索はしてこなかった。この類の質問をいなすコツを掴んだ気がする。あまり迷わずスパっと答えればいいのだ。まあ自身が異世界から来たことを隠しておく必要はないのだが…クラウスは絶対変に驚いて説明するのが面倒くさくなるタイプだし。
「―それでこの子達が学園の代表生徒です」
竜崎に紹介され、ハッとなったさくらはメスト達に合わせ慌てて頭を下げる。
「よろしくお願いしますね。私達は『海浜国家スキュルビィ』の代表です。数日後に控えます本戦、私達も全力でいかせてもらいますよ!」
マーマン族の教師はそう宣言する。その顔はなんとも自信に溢れていた。
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