【第一部】異世界を先に生きる ~先輩転移者先生との異世界生活記!~

月ノ輪

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―代表戦、予選―

95話 ライバルの少年

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「ふ…わああああぁぁぅ」

朝、学園のとある教室。さくらは思わず大きな欠伸をしてしまう。一緒に来ていたネリーが寝ぼけ眼なまま聞いてくる。

「さくらちゃん、今日やけに眠そうだねぇ。何かあったの?」

「昨日の夜、竜崎さんとちょっとね…」

同じく来ていたアイナがガタッっと体を震わす。

「代表戦選抜に向けての練習だからね」

そう彼女を諫めながら昨夜のことを思い出すさくら。あの後同じく稽古をつけてもらったのだが、当然のことながらメストほど竜崎を動かすことは出来なかった。ある程度剣戟や魔術を交わし、打ち払われ、そのたびに指導を受け…何度か繰り返したところでニアロンからストップがかかった。

―これ以上は明日に響く。本番も近いんだ、体調を崩してしまうと本末転倒だぞ―

せっかくノッてきたところに水を差された形だが、竜崎もそれに同意したため欲求不満のまま解散となってしまったのだ。


「でも、ニアロンさんの言う通りだったなぁ…」

あれ以上練習を続けていたら眠たくて朝起きることが出来なかっただろう。練習後の体の程よい疲労感と寝る前にスマホを弄る癖が無くなったおかげですぐに眠れてしまった。


とはいえ夜更かししたのは事実、欠伸も出てしまうのは致し方なし。またもや出てくるそれを噛み殺しながら授業が始まるのを待っていると…

「そこの…えっと…さくら! …さん」

突然名前を呼ばれる。そこにいたのは昨夜ジョージに稽古をつけてもらっていた少年がいた。

「あ。えっと、おはよう、ございます」

さくらの返事もたどたどしいものになる。なにせライバル視をされていると聞いたばかりなのだ。お互い距離感覚を探っていたが、少年側が動いた。

「俺のこと、覚えている?」

「う、うん。前に模擬戦で闘った…」

「そう!あの時はよくわからない力で負けたけど…気を抜かなければ俺が勝っていたはずなんだ!」

あの敗北がよほど屈辱的だったのか、彼は悔しそうに机を叩いた。

「俺の名前はクラウス・オールーン。ジョージ先生から聞いているだろうけど、予選でお前と戦う相手の1人だ」

覚えておけ、と宣言する彼には悪いが、さくらはそれ以前に聞きたいことが―。
「えっと、そもそもどういう試合をするんだっけ…」



「はあ!?なんでお前そんなこと知らないんだ?代表候補じゃないのか?」

信じられないと言った表情のクラウス。仕方なさそうに教えてくれた。

「まず予選だけど、候補者全員が一斉に闘うんだよ。胸に付けたゼッケンを賭けてな。そしてその中から勝ち残った3人が選ばれる」

「そうだったんだ…」

「そんなことも知らないのか…。なんでこんなやつが俺に勝ったんだ…」

はああと溜息をつかれ、さくらはイラッとする。が、これは恐らく試合要綱に書いてあったはずのこと。読んでいない自分が悪かったと気持ちを抑え、話の続きを聞く。

「その3人でチームを組んで、代表戦本番だ。ここも同じく各国の代表達と一斉に闘うんだ。んで全員がやられたら負けだ。至極簡単だろ?」

やれやれ…これだから素人はと言いたげな手振りをするクラウスだった。


「でも3人選ばれるなら、メスト先輩と私とクラウスくんが選ばれるかも?」

「いや、それはない」

さくらの希望的観測を彼はぴしゃりと否定した。

「? なんで?」

「お前は俺が真っ先に潰すからだ!」

「はぁ!?」

「俺は宣戦布告しにきたんだ!代表戦の試合形式すら知らない、能天気なお前がこの前俺に勝ったのは絶対に偶然だ!あっという間に叩きのめしてやる!」

ビシッと指をさされ、さくらも黙っていられなかった。こっちだってあの時とは違い成長している。今回神具の力は封印しているが、中位精霊が使えるようになっている今、鏡に頼らなくても―!

「絶対負けない!」

「なにを!」

両者一歩も引かぬ睨み合い。ネリー達が場を収めようとする声も彼女達には届かず、担当教師が入ってくるまでそれは続いた。
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