【第一部】異世界を先に生きる ~先輩転移者先生との異世界生活記!~

月ノ輪

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―代表戦、予選―

91話 代表戦へのお誘い

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エルフの女王の取り計らいでネリー達は神樹の実をお土産に持たされていた。

とはいえ果物は鮮度が重視。本当は全部自分達で食べきりたかったが、どうせ時間が経って味が落ちるぐらいなら…と皆に配ることにした。さくらはナディやタマに、グレミリオ先生達に、メスト先輩に。更にハルムやエーリカにも渡した。公爵家といえどもエルフの国に行かなければ食べられないものらしく、彼らは目を丸くしていた。


「さくらちゃん達。ちょっと今いいかしら?」

名前を呼ばれて振り返ると、そこにいたのは学園長。

「あ、学園長! 神樹の実、如何ですか?」

「あら、頂いてしまっていいの?アリシャバージルでこれを食べられるなんて変な感じね」


学園長室横応接間。学園長が剥いてくれた実を食べながら話をすることに。

「エルフの女王様から4人にお礼状が来てるわよ。大臣を救ったんですって?」

学園長は手紙を渡す。開いてみると、先の功績を称え、今度は国賓待遇で迎えたいという旨が書かれていた。

「皆のこと、痛く気に入ったみたい。あの方がここまで言うってよほどのことよ。特にネリーちゃんがお気に入りらしいわ」

「ほへっ!?」

実を口に加えたまま驚くネリー。ごくんと飲み込んでから再度驚いた声を出した。

「な、なんで!?」

「さあ…。流石にそこまでは書いていなかったけど、私宛の手紙ではやけにネリーちゃんを推していたわよ。孫みたいだって」

お礼として金品などの高級なものを要求しなかったからか、それとも勇者にも実を分けた気遣いが幸いしたのか、とんでもない気に入られ方をしたネリーだった。




「ところで、さくらちゃん。『代表戦』に興味ない?」

「代表戦?以前学園長が仰っていた『代表生徒』って言葉に何か関係があるんですか?」

「えぇ。この時期、各国の養成施設から代表生徒を募って勝負をさせるという催しがあるのよ」

「それに、私がですか!?」

つまり、世界大会!? さくらは思わずたじろいでしまう。テニス部で出た大会も精々が地区予選止まりだったのに。しかもここは異世界、間違いなく競う内容は「武」。いくら色々と学んでいるとはいえ、いきなりそんな大場所に投げ込まれるのは…

「まずは在校生の中から代表の選出をするのだけど、その試合に参加してみない?」

良かった、流石にワンクッションあるようだ。

「ちなみにそれの開催はいつ頃に…」

「一週間後よ」

急過ぎる。碌に練習をする時間もないではないか。

「私はさくらちゃんを推薦したかったのだけれど、特待生とはいえまだ学園に来て日が浅い子を代表にするのは如何なものかって他の先生方から止められちゃって…。エルフの大臣の一件を伝えたらようやく認めてくれたのよ」

弁解するように学園長は説明してくれる。その口ぶりから察するに、決まったのはつい先程のことらしい。どうしようか迷うさくらだったが、ネリー達が後押しをしてくれた。

「さくらちゃんならいけるよ!」
「きっと勝てると思う!」
「うん、間違いない」

「勿論、無理にとは言わないわ。模擬戦とはいえ危険なのは確かだし。だけど、貴方ならきっと活躍できるわよ?」

友達から、学園長から期待を込められた視線を送られ、さくらはとうとう頷いた。

「や、やってみます!」
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