【第一部】異世界を先に生きる ~先輩転移者先生との異世界生活記!~

月ノ輪

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―ドワーフの国へ―

50話 ドワーフの廃坑ダンジョン④

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「わざわざ先生方が来るとは…上じゃそんな大事おおごとになってたんスね…」


怖ろしき『長』の体内がごそごそと蠢く。何が出てくるかと警戒するさくらとオカムだったが…。


「よいせ、と」


服をまくり上げて出てきたのは…長の身長よりかなり小さい、髪を短く纏め上げたスマートな女性ドワーフだった。





「子供達が行方不明になったってね。何度か兵士が侵入を試みたでしょ?」

「うっス…。でも皆途中で引き返していたんで、理由なんて考えてなかったっス…」

―罠に引っ掛けた喜びが上回ったか。相変わらず治らないな、その癖―


溜息をつくニアロン。竜崎達も渋い顔をしている。 状況がよく呑み込めないさくらは恐る恐る問うた。


「あの~…。どういうことなんですか? この方は…?」






「彼女はロニ・トーニル。学園の卒業生ですのぅ。罠作成のスペシャリストでもあるのです」


ログに紹介され、ロニと呼ばれた女性はぺこりと頭を下げる。そんな彼女に、竜崎は問い直した。


「それで、ロニ。聞きたいことは色々あるけど、まずは子供達をどうしたの?」

「あー…。その…なんというスかね…」



言い淀むロニ。と、それを見た子供達は、『長が怒られている…!』と現状を理解したらしい。彼らは仮面を捨て、ロニと竜崎達の間に割って入った。まるで彼女を守るように。


「長をいじめると許さないぞ!」
「この遊び場を作ってくれたのは長だぞ!」

槍を構え牽制してくる子供達。これには一行も苦笑いするしかなかった。



―こっちの説得が先だな―

ニアロンの言葉に竜崎は頷くと、子供達に視線を合わせるようにしゃがみ込む。そして、気さくに話し出した。


「ううん、長をいじめる気はないよ。あまりにもすごい罠だったからさ、ちょっとお話聞きたくて。君達も一緒に作ったの?」


そう問われた子供達は、ふふん!と力強く鼻を鳴らした。


「そうだよ!落とし穴とか網の罠とか、水の罠とか!あ、トロッコの問題は僕達が考えたんだよ!意外とドワーフじゃない人は知らないでしょ!」


「うん、全部引っかかっちゃったよ。やられちゃった」

「ドワーフである私でも、たっぷり引っかかってしまいましたのぅ」


パチパチと拍手をする竜崎とログ、子供達は得意げにハイタッチをしていた。






「そういえばお腹は空いていないのかい?ちょっとだけだけど食べ物持ってきてるんだ。食べる?」

と、流れるように持ってきた食料等を取り出す竜崎達。彼らからの目配せでさくら達も取り出し、子供達に手渡した。彼らは喜んでもぐもぐと。


「何も食べてなかったの?」

「ううん。時たまに家に帰ってご飯持ってきたの。もちろん長の分も!」


竜崎の問いに、すぐさま答える子供達。どうやら、『たまに家へ帰ってきた子供』は食料調達が目的だったらしい。一つの疑問が氷解した。


「へー。ロニも食べる?」


ふんふんと頷きながら、竜崎は自身の分を差し出す。


「頂きますっス」


ロニはそれを丁重に受け取った。先程までの長とは思えぬ変わりっぷりである。










「ということは専用の出口でもあるのですかの?」


先程の長としての言葉、そして今の子供達の言葉からそう推測するログ。ロニは頷いた。


「ドワーフサイズではありますが、ここへの直通の洞穴を掘ってあるっス」


「それは兵士達に見つかってないのですかな?」


「多分見つかってるっスけど…獣の棲み処のように擬態してますし、入口はかなり狭くしてあるんで。ただ最近は、たまに誰かが声をかけているみたいで変な反響音が聞こえてくるんスけどね」


もぐつきながら、そう答えたロニ。 と、さくらは勢いよく手を挙げた。


「もしかして、ボオオオオボオオオオって音ですか?」


さっきトロッコに乗る前に聞こえた、あの化け物の声みたいのがもしや? そう考えたのだ。 それに対し、彼女の回答は…。

「そうっス。さっきも鳴ってましたっス」


迷いなく肯定。それを聞いたオカムは、ふぅぅぅ…ととても大きな息を吐いた。


「よかった…化け物はいなかったんだ…」


やはり、それが心配で心配で仕方なかったらしい。その反応を見て、ロニは頭を掻いた。


「人を食べる魔物を模して穴の前を飾ってみましたが、やりすぎだったスかね…」


えぇ、本当に。 さくらはそう言いたくてたまらなかった。暗いせいもあるのだが…幾度肝を冷やされたことか…。


一体、なんでこんなダンジョンを…?





「それで、なんでこんな廃坑を改造してたんだい?」


と、今度は竜崎がロニに質問。皆の総意な疑問なのだろう。 すると―。


「だって…」


急に、わなわなと肩を震わす彼女。 だって…?首を傾げる竜崎達に、ロニは勢いよく不満を露わにした。


「だって、罠を仕掛ける機会なんてないんスもん!精々が獣用の罠程度で、侵入者迎撃装置みたいなもの作らせてくれないんス!」






「そりゃそうでしょうのう…危ないですからのぅ…」


ログの感想が正しい。映画とかではよく見る罠群だったが、確かに現実では使われないだろう。そもそも映画の中でも侵入者ぶっ殺してお宝守るやつだし。


誰もいない遺跡とかならいざ知らず、普通の国なのだから兵士が見張れば済むだろうし、そんなもの仕掛けたら絶対に余計な人が引っかかる。



呆れる竜崎達。ロニはたまらなくなったのか、全てを明らかにした。


「本当は私の自己満足で作っていたんス。どうせ放置されてた坑道ですし、ここを潰す話が出たら罠を停止させて去ろうかと…」


要は、秘密基地を作っていたらしい。 ふと彼女は、子供達へと目を移した。


「でも、ここへの直通穴を子供達が見つけてしまって…。あの手この手で家に帰そうとしたんスけど、ここが気に入ってしまったみたいで。いつの間にか『洞窟を棲み処とする部族』みたいな設定作られちゃったんス…」


とほほ、と肩を竦める彼女。 すると、子供達が仲間を売るなと言わんばかりに騒ぎ出した。


「長も、じゃないや…。ロニさんもノリノリだったじゃん! この部屋を改造したり、あんなおっきい衣装作ったり!」


「うっ…!そうっス…。実を言うと結構楽しかったっス…」


図星をぶっ刺され、照れるように身を縮こませるロニであった。









「でもどうしてそんな罠を? えーと…見せかけ?というか…。 後半は楽しめるものでしたし…」

ふと、素朴な疑問を投げかけるさくら。ちょっと気になっていたのだ。


ここまでの罠は擦り傷程度すれども、人を殺せる罠ではなかった。罠の本質は敵を仕留めるものなのに。しかも最後らへんは完全にアトラクションだったし。


「それは、リュウザキ先生から向こうの世界の物語を聞いたんス。罠だらけの遺跡を掻い潜ってお宝探すとか、浪漫あるじゃないっスか! この世界でも、調査隊が稀にやるぐらいっスし」


…どうやら、大元の原因はリュウザキのようだ。さくらがチラリと彼を窺うと、気まずそうに顔を背けた。



それを救うわけではないだろうが、今度はオカムが手を挙げる。

「あの大岩は人を殺せるんじゃないんですか?」


そんな最もな疑問には、ログが答えた。

「あれは軽岩ですの。盛大に音が鳴るように仕込まれてただけの。ぶつかってもそう痛くなかったと思いますぞ」


流石は鉱物学講師ログ。逃げながら気づいていた様子。そういえばあの辺りから、教師陣の適当度合いが増した気がする。


……わかってたのなら、すぐに言ってほしかった。 そんな思いがさくらとオカムの胸中に現れたのは言うまでの無い事である。










「しかし、どう解決すべきですかな…」

「そうですね…。そのまま引き渡すと間違いなく牢行きになりますし…」

―流石にそれはなぁ…―



廃坑の無断占領、子供誘拐(正確には違うが)、兵に怪我を負わせる…。やったことを考えると、流石にロニは無罪放免とならないだろう。

とはいえそれは可哀そうだからと、どうにかならないか模索する竜崎達。そんな中、さくらはあることを思いつく。その確認のため、子供達に問いかけた。



「えっと、皆はこのダンジョンを最初から体験した? 面白かった?」

「うん!冒険してるみたいで楽しかった!」


屈託のない笑顔を浮かべる子供達。さくらは更に続ける。


「これ、他の友達とかも楽しめると思う?」


その質問に、子供全員がウンウンと頷く。それを見て、さくらの考えは固まった。



「竜崎さん、ログさん。一つ思いついたことがあるんですけど…」













「それはいいかも。この世界では新しい発想だね」

「他に良さげな案もありませんし、賭けてみましょうかの」


さくらの発案に賛成する竜崎とログ。総括するように、ニアロンが手をパシンと鳴らした。


―そうと決まればここを出るか。ロニ、一番早く出られるルートはどこだ?―


「なら来た道戻るのが早いっス。リュウザキ先生達は抜け道通れませんし、罠の位置はしっかりメモしてあるから問題なく躱せるっス」



ということで、一行はようやく帰路についたのであった。












―それで、大穴の下まで来たが…―


そしてその道中。石像の仕掛けとトロッコの坂を登り切り、大穴の下。問題の箇所である。

なにせ、完全な絶壁の穴なのだ。手をかけて登ることはとんでもなく難しい。



「本当ならロープを垂らしとく予定だったんスけど…。強度が不安だったんで作り直してたところっス」

ロニは完成したロープの束を手に持ちながらそう説明する。本来はそれで上り下りするらしい。どうりで飛び降りるしか方法がないわけである。




―ま、別に良いだろ。清人の出番だ―


ニアロンは全く悩むことなく、竜崎へバトンを渡す。渡された彼は、少し頭を捻った。


「足場作って維持するのは結構面倒だし、危ないっちゃ危ないし。さくらさんの武器を使うと天井に頭ぶつけそうだな。一斉に吹き上げることも出来るけど…。安全第一で1人ずつ連れていくか」


そう言うが早いか、竜崎は動く。 まず手始めに、ロニを抱え上げた。


「ん?軽すぎない?」

「それ誉め言葉じゃないっスよね…。そりゃ最近篭りっきりであまり食べてないっスけど…」

―製作に没頭しすぎて寝食忘れるのは職人の性だな。ソフィアもひと昔前はよくそうなってた。さて、いくぞ―


ニアロンが足場代わりの魔法陣を張り、それをタンタンと飛び上がっていく竜崎。あっと言う間に穴の上まで到着し、少ししてロープが垂れてきた。そして―。



ヒュウウウウ、スタン!



竜崎はヒーロー着地で戻ってきた。





「登れる人はできればロープで上がって。登れない人は私が連れてくよ」


竜崎のお願いに従ったのはログとオカムの二人のみ。子供達は抱っこされて飛び上がるのをワクワクしながら待っていた。


「わぁい!」
「おおおおお~!」
「ひゃっほー!」


楽しげな声をあげて、連れて行かれる子供達。さくらは以前メストにやってもらったことを思い出していた。

もしかして、竜崎さんのこれを、メスト先輩は真似たのかな…? と。




「はい、最後はさくらさんね」


そんなことを考えていた間に、さくらの番に。よっこいしょと抱きかかえられる。 

竜崎は重さを気にする様子なく、軽やかに上まで連れていってくれたが…。軽いと言われなかったのが気になり、少し悶々とするさくらだった。









しかし、まだまだ関門はある。大穴の直後には、大岩があるのだ。



「そういえば…横の通路を通っていくんですか?」

スカートを履いて来たため、ちょっと気にしてしまうさくら。一番最後に行くしかないと覚悟していたが…ロニが自信ありげに首を振った。


「大丈夫っス!」







「「あれ、岩が…!?」」


驚くさくら達。なんと、あの大岩は既にそこになかったのだ。何の障がいもなく、降りてきた坂道が見通せる。


「ここはトロッコ並みによく出来たと自負があるっス。穴の下にある扉を開けると、連動して石が戻るようになっているんス!」

ここの隠しスイッチでも戻せるっスよ、と胸を張る彼女。すると、竜崎が興味を示した。



「へえ、どれどれ…!」

彼は単独で坂を登り、ボタンを踏む。 すると―。



ドスゥウン… ゴロゴロロ…!



あの時と同じように大岩が落下、転がってくる。竜崎はある程度逃げた後に、それを手で押さえてみる。

「お。本当に軽い…!」

あまり力を入れてなさそうなのに、岩は簡単にピタリと止まった。それを確認したロニは、壁に隠されていた何かをいじる。



瞬間、どこからともなくパシュッと何かが射出される音が聞こえる。次にはひっついた音。


そして…岩が坂の上に引っ張られるように戻り、天井にガコンと格納された。ロニは鼻高々。


「軽いから、こうやって紐にくっつけて引っ張りあげてるんス!」



ますます大掛かり。そしてこれを彼女1人で作ったとは…。恐るべし技術力。









これにて難所は終了。後はこまごまとした罠のスイッチを避けながら、ようやく入口付近へと。


すると、正面からおっかなびっくり進んでくる調査隊隊長たちが。どうやら、ようやく岩をどけたらしい。


「ご無事でしたか!! こちらは謎の怪しい穴を見つけたので、声を叫び入れてみたりしてたんですが、何も出てこず…。先程機動鎧が到着したんで入ってこれました」


即座に報告をする隊長。どうやら道中の異音は、彼らの声が反響したものだったらしい。幽霊の正体見たりである。



「では、調査を! ……あれ?その子達は…? そちらの女性は…?」


勇んだように奥へ進もうとする隊長たち。そこでようやく、竜崎達の後ろについてきていた子供達とロニに気付いた様子。


「万事解決しました。とりあえず拠点に戻りましょう」


竜崎にそう言われ、彼らの口はポカンと空いたまま塞がらなかった。






「調査隊の皆様、有難うございました。こんなすぐに解決してくださるとは…!」


拠点にて、兵長が頭を下げお礼を述べる。その隙を逃さず、竜崎はあるお願いをした。


「王様に事の詳細をお伝えしたいのですが、お時間を設けて頂いてよろしいでしょうか?」













場所は変わり、ドワーフ王宮。他の国のとは違い、そこは絢爛豪華というよりは質実剛健。鉱物を主に取り扱う種族らしくがっちりとした造りをしていた。


各所に飾られているものも、花瓶や絵よりも鉱物原石やドワーフ産の武器防具など、彼らなりの自慢の一品が置かれていた。




「リュウザキ様、ニアロン様、ログ殿。そして調査隊の皆様、ご協力感謝いたします」


クイズの正答通りに、金色の髭を腹まで伸ばし綺麗に結んだ老ドワーフが竜崎達を労う。彼がドワーフの国の王様らしい。竜崎達は揃ってうやうやしく頭を下げ返した。





「―なるほど、そう言う事でしたか。ならば、彼女は暫く独房に入ってもらいます。あの廃坑もすぐに潰しましょう」


事の仔細を聞いた後、先に連れてゆかれたロニに、処罰を宣告するドワーフ王。やはりこうなってしまった。


だが、そんな王の決断に、竜崎は待ったをかけた。



「陛下。無礼を承知で、ひとつお願いを申し上げます。どうか私の教え子の献策に、御耳をお貸しくださいませ」




問題を解決してくれたメンバーの1人…いやそれ以前に、救世の英雄である竜崎からの申し出を無視するわけにはいかない。王はすぐさまに聞き入れてくれた。


場を作った竜崎は、さくらに目配せを行う。彼女は緊張で胸をうるさいほどに鳴らしながら、出来る限りの声を張った。



「学園所属のさくらと申します! ロニさんの処遇で、おひとつ具申させてください!」

「なんですかな?」


学園の生徒と聞き、興味を持つドワーフ王。さくらは、自らの発案を口にした。


「あの廃坑をアトラクションにするのはどうでしょうか?」







「行方不明の子供達は自分の意思で入り、ロニさんに改造された坑内を楽しんでいました。あの子達から聞きました、すごく面白かったって。勿論、私も…! あれを残せば、皆さん楽しめると思います!」


元の世界の校長先生やスピーチをしてくれたよくわからない肩書の人達よりも、確実に偉い王様相手に意見を申す。とんでもなく緊張したが、さくらはどうにか噛まずに喋りきれた。




ほっとした瞬間手汗ぐっしょり、そして未だ心音収まらぬ彼女と交代するように、今度は竜崎が進み出た。


「あの廃坑に仕掛けられていた罠、私達はそのほとんどを体験いたしました。どれもこれも死人はおろか、大怪我人を出さぬよう配慮されており、危険性は極めて低いものと思われます」


最も、未知なる罠へ勇気を持ち相対した兵士諸氏の傷は名誉なるもの。彼らの健闘なくして、解決への道は繋がらなかったでしょう。 そう付け加え、彼は話し続ける。


「また、大規模な改造が施されているというのに、坑道内は堅牢そのものでした。崩れることはなく、浸水やガスの噴出もございません。流石はドワーフの職人芸と、舌を幾度も巻きました」


ドワーフ達の技巧を褒め称える竜崎。さしもの王も、表情を緩ませた。 そこへ彼は、再度繰り返した。



「故に…。先に彼女さくらが申し上げた通り、あの場を皆の楽しめるアトラクションとするのを進言いたします」






「これは決して、荒唐無稽なご提案ではございません。私が別の世界から来た事は周知の事実ですが…その世界にも、似たような遊具施設が幾つも存在するのです。 即ち前例があり、喜ばれる保証があるということでもあります」


ほう…!と聞き入るドワーフ王。そこで竜崎は、話の核へと進めた。


「そこで私達が提言いたしますのは、彼女…ロニ・トーニルを総監督に据え、怪我が起きないように罠や謎解きを調整。出口や安全管理役等を設置し、運営することにございます」



自らの金髭を撫でつつ、ドワーフ王は興味深そうな表情を浮かべる。竜崎はここぞとばかりに畳みかけた。


「私達が体験した難易度であれば、子供だけではなく、大人まで楽しめる遊具施設として充分に対応でき、集客も望めます。 また、子供達の危険把握能力や思考力を鍛えるため、他の種族の方々へドワーフの実力を知らしめるため、うってつけの施設になること間違いなしでしょう」





むむむと唸りだすドワーフ王。 と、更に後押しをするように、ログが口を開いた。


「彼女の師であった私達が保証いたしましょう。当時から彼女の技術は並ぶものなしでしたのでな。上手くいけばドワーフの国の名物となりましょう」


そこで一旦話を切った彼。そして、少し洒落を交えた。


「これはある意味、金鉱のようなもの。 上手く掘り出しさえすれば、今回の調査隊派遣代、及び怪我をした方々への医療費等諸々はその利益から容易く払え、国庫も潤うことでしょう。 我らドワーフの技術と力があれば、危険なく運営ができると思いますぞ」





「うむむむむ…」


ドワーフ王は頭を悩ませ続ける。竜崎とログ、そしてさくらの提案に心は動かされた者の、事件の幕引きとしてそれでいいのか考えている様子。



が、その悩みは…。その会話を影でこっそり聴いていた王の孫の一言で解決した。


「僕も探検してみたいです!お祖父様、是非作らせてください!」


「うぅむ…わかった、とりあえず計画を聞いてみましょう。彼女を牢から出してやれ」



鶴の一声、孫の一声。 なにはともあれ、策は成功と相成ったのであった。


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