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顧客リスト№18 『ラミアのくねくね洞窟ダンジョン』
人間側 とある女傭兵の潜入
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「こちらスネーク。ダンジョン内に潜入した」
魔法の通信機に一報を入れる。すると、耳に着けた受信機から相棒の返答が帰ってきた。
「了解スネーク。これより、『スネークイーター作戦』を開始する!」
私は冒険者ギルドに所属している傭兵だ。『スネーク』という通り名を持っており、腕利きとして名を馳せている。
今回はとある古馴染みの依頼を受け、『くねくね洞窟ダンジョン』という場所に身を投じている。
その依頼とは、幻の存在『ツチノコ』を捕獲すること。かの存在がこのダンジョンに棲みついているという情報を受け、単身で潜入を果たした。
…だが、寄りにもよってその作戦名は如何なものか。食う気も食われる気もない。まあ、蛇の…特にツチノコの味には興味はあるが。
「しかし…こうも蛇が多いと進むのが難しいな」
このくねくね洞窟ダンジョンには蛇が大量に棲みついている。何も考えずに足を踏み入れたらたちどころに噛まれ、復活魔法陣送りとなる。
歴戦の傭兵である私でさえ、専用の特殊装束と訓練を積み習得した隠密技術がなければ既に終わっていただろう。
幸い、うまく気配を殺すことが出来ている。蛇達は私を敵と認識していない。この調子で奥地まで潜り、任務を完了させるとしようか。
「―!」
この場に接近する何者かの気配を感じ取り、私は即座に身を隠す。このダンジョンは曲がり角という角がなく、ほとんどがカーブで構成されているから少々潜むには辛い。
しかし、こんな時のために秘密兵器を持ってきてある。…これだ。折り畳み可能な、紙を特殊な構造で重ねた箱。どこにでもある、『段ボール箱』だ。
これを被れば…、完璧だ。
冒険者の天敵ミミックから着想を得て使用を始めたものだが、存外相手にバレない。特にこのダンジョンのように道端に壺や箱が置いてある場所では隠密率は100%を超える。
加えて、内部は案外心地よい。安らぎすら感じる。 それにこのまま移動も出来る。まさに万能の存在だ。
僅かに開けた段ボールの穴から外の様子を見る。と、別の道の先から現れたのは―、なんだ、同業者じゃないか。
「うええ…蛇まみれで気持ち悪いぜ…」
「贅沢言うな。上手く蛇皮をゲットできれば幸運のペンダントが作れるんだぞ。それに、行運が良ければあの『ツチノコ』を捕まえられるかも…!」
おっかなびっくり、蛇を踏まないように慎重に歩いてきたのは4人組の冒険者。少し悪いが、彼らに少し囮になってもらうことにしよう。
「ここいらでいいかな。気を抜くなよ!」
少し進んだ先にあったのは、開けたダンジョンのとある部屋。そこで冒険者は一斉に武器を引き抜いた。
瞬間、その場で寛いでいた蛇達はピクッと顔を上げる。そして―。
「「「シャアアア!」」」
一斉に冒険者パーティーへと飛び掛かった。
「ひっ…!?」
「怯むな! 剣をひたすら振れ!」
「痛っ! 噛まれた…!」
「解毒魔法、詠唱します!」
押し寄せる蛇達を必死に捌いていく冒険者達。しっかりヒーラーもいるからか、中々に良い勝負を繰り広げている。
と、そんな時だった。
「あ、あれ?蛇が…?」
「どこ行くんだ…?」
形勢不利と悟ったのか、あれだけ襲い掛かっていた蛇達が突然に逃げ始めた。そして、近くの箱へと身を潜めたではないか。
「それで隠れたつもりか? アレを使うぞ!」
ニヤリと笑ったパーティーのリーダー格は、そう仲間に号令を出す。すると、その内の1人がバッグから何かを取り出した。
「あれは…?」
それは見たことのない笛。気になるな…。魔法の通信機で相棒に聞いてみるとするか。周波数を合わせて、と…。
「あぁ、きっとそれは『蛇使いの魔笛』だね。魔力はかなり消費するけど、ほとんどの蛇魔物を踊らせることのできる優れものさ」
通信越しに返ってきた回答はそれ。私は思わずため息をついてしまった。
「そんなものがあるなら何故教えてくれなかった?」
「君ならナイフと麻酔矢で事足りるかと思って…ごめんよ、スネーク」
「よーし、吹くぞー…」
ポ~♪ペペラァ~♪ピヒャラ~♪
そうこうしているうちに冒険者が笛を吹き始めた。なんとも独特な音楽だ。すると―。
パカッ ニョロッ ニョロッ
箱や壺が開き、中から次々と蛇が身体を覗かせる。ほう、面白いじゃないか。あれならば簡単に蛇を仕留めることが出来る。
そして、ツチノコも簡単に捕獲できるだろう。そうだ、一旦退いて、あの笛を入手してから再度挑むとしよう。
と、私が段ボールを静かに動かし撤退しようとした時だった。
「ぐえっ…!」
聞こえてきたのは冒険者が一人の悲鳴。ピタリと足を止め背後を見やると、とんでもないことになっていた。
4人パーティーの内1人が、箱と壺から出てきた一際長い蛇に絞め殺されているではないか。
「嘘だろ…!? 笛を吹きっぱなのに何故動けるんだ…!?」
驚愕の様子のリーダー格冒険者。他二人も困惑している。なにせ蛇を強制的に踊らさせるはずの魔法アイテムが効かないとあっては、そう固まるのもわかる。
しかし…どこか違和感があるな。あの長い蛇以外は今も音楽に合わせ踊り狂っている。何故あの二匹だけ…? 箱から…
「…もしや、そういうことか!」
私は段ボールから抜け出し、素早く冒険者達の元へ。手にしていた麻酔矢を、長い蛇…もとい触手へと撃ち込んだ。
「お前達、離れるんだ! そいつは『ミミック』だ!」
私の忠告と共に、触手は地面へと落ちる。すると、まるで蛇の抜け殻のようなものが触手からずるりと外れた。
やはりか…。こいつら、蛇に擬態していた…!
「ゲホゲホ…死んだかと思った…」
「いや死んだのですけどね?」
「助かったぜアンタ…あやうく全滅するとこだった」
絞め殺された冒険者も蘇生し、とりあえず一段落。なし崩し的に私もパーティーに参加することになった。未だツチノコは見つかっていない、人手は多い方が良い。
だが、そんな折―。
「侵入者…! 出てけ…!」
このダンジョンの主、ラミア達が幾匹か雁首…もとい鎌首揃えてやってきてしまった。
…正直な話、ラミアの相手は苦手だ。
完全人型ならば、培った近接格闘術でいとも簡単に倒せる。しかし、あの蛇の下半身は実に厄介。関節技が効きにくく、一瞬でも隙を見せればたちどころに拘束されてしまう。
だからこその隠密作戦だったのだが、こうなってしまえば正面突破しかない。チャキッとナイフと麻酔矢を構える私だったが、それより先にパーティーのリーダーが進み出た。
「まあ俺達に任せろ。ミミックを仕留めて貰った今、『蛇使いの魔笛』で!」
ポ~♪ペペラァ~♪ピヒャラ~♪
彼の合図で、笛は再度響き渡る。すると、こちらを睨みつけていたラミア達の顔つきは一転し蒼ざめた。
そして次には彼女達の尾がうねん、手がくねん。腰とお腹を小刻みに振り、妖艶なダンスを踊り出した。
「またその笛…!」
「酷い…!」
シャアアッと細長い舌を出し怒りながらも、ラミア達は華麗に舞い続ける。強制的に踊らされているとは思えないぐらい見事なものだ。
「ヒューッ! 見ろよやつのあの胸を! まるでスイカみてえだ!」
冒険者パーティーの男衆はそんなラミア達に下卑た視線を送っている。節操のない奴らめ…。ん…?
「―あれは!」
ラミア達の一番後ろ。太い胴体をぐねんぐねん動かし踊っている小さい蛇がいる。間違いない、ツチノコだ!
素早く捕えるのが困難なツチノコも、あれならば…!今が最大の好機! 急ぎラミア達の隙間を掻い潜り、捕獲を…!
「おっと!」
ギュルッ!
「…何っ!?」
ツチノコまであと数十センチのとこで、私の身体は何者かに縛られた。馬鹿な…ラミアは全員踊っていた、動ける者はいなかったはず…!
「そぅれっ!」
抵抗間に合わず、私は勢いよくぶん投げられ宙を舞う。なんとか着地に成功したが、冒険者達の元まで戻されてしまった。
「ぎゃあっ…!」
それと同時に、聞こえてきたのは笛を吹いていた冒険者の悲鳴。ハッと見ると、ラミアの一匹がそいつを地面に叩きつけ笛を奪い取っていた。
「待たせたねぇ、ラミアの皆! これでもう大丈夫!」
笛をバキっと折りながら、そのラミアは仲間に呼びかける。身体が自由になった彼女達は一斉に私達に襲い掛かってきた。
「「「「ぐええっ…」」」」
あっという間に冒険者パーティーは絞め殺され全滅。残るは私だけになってしまった。頼みの綱の笛が壊された今、圧倒的不利だ…。
しかし何故だ…? 何故あのラミアだけ音楽鳴り響く中を動けた?せめてその謎を解き明かすまでは死ぬことはできない…!
「くっ…こいつ強い…!」
「ちょこまかと…!」
私の動きに翻弄され、苛立つラミア達。と―。
「私に任せて! さあ、こい!」
しめた。さっきの、音楽の中動けていたラミアだ。こいつだけは仕留めてやろう。攻撃を躱し、ナイフをその胸に…!
「ほいっと!」
な…!? ラミアの上半身が消えた…だと…!?
「こっちよこっち」
その呼び声に誘われ、視線を真下に移す。そこには…蛇の胴体に引っ込み手を振るラミア(?)がいた。
「これで終わり!」
唖然とする私に、ラミアもどきから幾本もの触手が伸びてくる。その触手の形状、見覚えがある。
「お前…上位ミミックか!」
「せいかーい! いい出来でしょこの尾っぽ」
私を縛り上げながら、自らが入った蛇の尾…もとい蛇の尾型の箱?を動かすミミック。まさか…ミミックが箱以外に、しかも魔物に擬態するとは…!
暗めのダンジョン内ということもあるだろうが、ぱっと見では周りのラミア達と違いが良く分からないほど精巧にできている。恐らく、ラミアの抜け殻を使っているのだろう。
尾と身体の接続部も、ラミア達がつけている腰布で隠されている。どれがラミアでどれがミミックはの見分けなぞつかない。恐るべきミミック達だ…。
しまった…縛られた拍子に耳に嵌めていた魔法通信機の受信機が…!
「スネーク…! スネーク…!? スネエエエエエク…!」
相棒の悲痛な呼びかけが聞こえてくるが、もう答えられない。 再会は復活魔法陣でとなるだろう。
任務失敗…GAME OVER SNAKE IS DEAD …。
魔法の通信機に一報を入れる。すると、耳に着けた受信機から相棒の返答が帰ってきた。
「了解スネーク。これより、『スネークイーター作戦』を開始する!」
私は冒険者ギルドに所属している傭兵だ。『スネーク』という通り名を持っており、腕利きとして名を馳せている。
今回はとある古馴染みの依頼を受け、『くねくね洞窟ダンジョン』という場所に身を投じている。
その依頼とは、幻の存在『ツチノコ』を捕獲すること。かの存在がこのダンジョンに棲みついているという情報を受け、単身で潜入を果たした。
…だが、寄りにもよってその作戦名は如何なものか。食う気も食われる気もない。まあ、蛇の…特にツチノコの味には興味はあるが。
「しかし…こうも蛇が多いと進むのが難しいな」
このくねくね洞窟ダンジョンには蛇が大量に棲みついている。何も考えずに足を踏み入れたらたちどころに噛まれ、復活魔法陣送りとなる。
歴戦の傭兵である私でさえ、専用の特殊装束と訓練を積み習得した隠密技術がなければ既に終わっていただろう。
幸い、うまく気配を殺すことが出来ている。蛇達は私を敵と認識していない。この調子で奥地まで潜り、任務を完了させるとしようか。
「―!」
この場に接近する何者かの気配を感じ取り、私は即座に身を隠す。このダンジョンは曲がり角という角がなく、ほとんどがカーブで構成されているから少々潜むには辛い。
しかし、こんな時のために秘密兵器を持ってきてある。…これだ。折り畳み可能な、紙を特殊な構造で重ねた箱。どこにでもある、『段ボール箱』だ。
これを被れば…、完璧だ。
冒険者の天敵ミミックから着想を得て使用を始めたものだが、存外相手にバレない。特にこのダンジョンのように道端に壺や箱が置いてある場所では隠密率は100%を超える。
加えて、内部は案外心地よい。安らぎすら感じる。 それにこのまま移動も出来る。まさに万能の存在だ。
僅かに開けた段ボールの穴から外の様子を見る。と、別の道の先から現れたのは―、なんだ、同業者じゃないか。
「うええ…蛇まみれで気持ち悪いぜ…」
「贅沢言うな。上手く蛇皮をゲットできれば幸運のペンダントが作れるんだぞ。それに、行運が良ければあの『ツチノコ』を捕まえられるかも…!」
おっかなびっくり、蛇を踏まないように慎重に歩いてきたのは4人組の冒険者。少し悪いが、彼らに少し囮になってもらうことにしよう。
「ここいらでいいかな。気を抜くなよ!」
少し進んだ先にあったのは、開けたダンジョンのとある部屋。そこで冒険者は一斉に武器を引き抜いた。
瞬間、その場で寛いでいた蛇達はピクッと顔を上げる。そして―。
「「「シャアアア!」」」
一斉に冒険者パーティーへと飛び掛かった。
「ひっ…!?」
「怯むな! 剣をひたすら振れ!」
「痛っ! 噛まれた…!」
「解毒魔法、詠唱します!」
押し寄せる蛇達を必死に捌いていく冒険者達。しっかりヒーラーもいるからか、中々に良い勝負を繰り広げている。
と、そんな時だった。
「あ、あれ?蛇が…?」
「どこ行くんだ…?」
形勢不利と悟ったのか、あれだけ襲い掛かっていた蛇達が突然に逃げ始めた。そして、近くの箱へと身を潜めたではないか。
「それで隠れたつもりか? アレを使うぞ!」
ニヤリと笑ったパーティーのリーダー格は、そう仲間に号令を出す。すると、その内の1人がバッグから何かを取り出した。
「あれは…?」
それは見たことのない笛。気になるな…。魔法の通信機で相棒に聞いてみるとするか。周波数を合わせて、と…。
「あぁ、きっとそれは『蛇使いの魔笛』だね。魔力はかなり消費するけど、ほとんどの蛇魔物を踊らせることのできる優れものさ」
通信越しに返ってきた回答はそれ。私は思わずため息をついてしまった。
「そんなものがあるなら何故教えてくれなかった?」
「君ならナイフと麻酔矢で事足りるかと思って…ごめんよ、スネーク」
「よーし、吹くぞー…」
ポ~♪ペペラァ~♪ピヒャラ~♪
そうこうしているうちに冒険者が笛を吹き始めた。なんとも独特な音楽だ。すると―。
パカッ ニョロッ ニョロッ
箱や壺が開き、中から次々と蛇が身体を覗かせる。ほう、面白いじゃないか。あれならば簡単に蛇を仕留めることが出来る。
そして、ツチノコも簡単に捕獲できるだろう。そうだ、一旦退いて、あの笛を入手してから再度挑むとしよう。
と、私が段ボールを静かに動かし撤退しようとした時だった。
「ぐえっ…!」
聞こえてきたのは冒険者が一人の悲鳴。ピタリと足を止め背後を見やると、とんでもないことになっていた。
4人パーティーの内1人が、箱と壺から出てきた一際長い蛇に絞め殺されているではないか。
「嘘だろ…!? 笛を吹きっぱなのに何故動けるんだ…!?」
驚愕の様子のリーダー格冒険者。他二人も困惑している。なにせ蛇を強制的に踊らさせるはずの魔法アイテムが効かないとあっては、そう固まるのもわかる。
しかし…どこか違和感があるな。あの長い蛇以外は今も音楽に合わせ踊り狂っている。何故あの二匹だけ…? 箱から…
「…もしや、そういうことか!」
私は段ボールから抜け出し、素早く冒険者達の元へ。手にしていた麻酔矢を、長い蛇…もとい触手へと撃ち込んだ。
「お前達、離れるんだ! そいつは『ミミック』だ!」
私の忠告と共に、触手は地面へと落ちる。すると、まるで蛇の抜け殻のようなものが触手からずるりと外れた。
やはりか…。こいつら、蛇に擬態していた…!
「ゲホゲホ…死んだかと思った…」
「いや死んだのですけどね?」
「助かったぜアンタ…あやうく全滅するとこだった」
絞め殺された冒険者も蘇生し、とりあえず一段落。なし崩し的に私もパーティーに参加することになった。未だツチノコは見つかっていない、人手は多い方が良い。
だが、そんな折―。
「侵入者…! 出てけ…!」
このダンジョンの主、ラミア達が幾匹か雁首…もとい鎌首揃えてやってきてしまった。
…正直な話、ラミアの相手は苦手だ。
完全人型ならば、培った近接格闘術でいとも簡単に倒せる。しかし、あの蛇の下半身は実に厄介。関節技が効きにくく、一瞬でも隙を見せればたちどころに拘束されてしまう。
だからこその隠密作戦だったのだが、こうなってしまえば正面突破しかない。チャキッとナイフと麻酔矢を構える私だったが、それより先にパーティーのリーダーが進み出た。
「まあ俺達に任せろ。ミミックを仕留めて貰った今、『蛇使いの魔笛』で!」
ポ~♪ペペラァ~♪ピヒャラ~♪
彼の合図で、笛は再度響き渡る。すると、こちらを睨みつけていたラミア達の顔つきは一転し蒼ざめた。
そして次には彼女達の尾がうねん、手がくねん。腰とお腹を小刻みに振り、妖艶なダンスを踊り出した。
「またその笛…!」
「酷い…!」
シャアアッと細長い舌を出し怒りながらも、ラミア達は華麗に舞い続ける。強制的に踊らされているとは思えないぐらい見事なものだ。
「ヒューッ! 見ろよやつのあの胸を! まるでスイカみてえだ!」
冒険者パーティーの男衆はそんなラミア達に下卑た視線を送っている。節操のない奴らめ…。ん…?
「―あれは!」
ラミア達の一番後ろ。太い胴体をぐねんぐねん動かし踊っている小さい蛇がいる。間違いない、ツチノコだ!
素早く捕えるのが困難なツチノコも、あれならば…!今が最大の好機! 急ぎラミア達の隙間を掻い潜り、捕獲を…!
「おっと!」
ギュルッ!
「…何っ!?」
ツチノコまであと数十センチのとこで、私の身体は何者かに縛られた。馬鹿な…ラミアは全員踊っていた、動ける者はいなかったはず…!
「そぅれっ!」
抵抗間に合わず、私は勢いよくぶん投げられ宙を舞う。なんとか着地に成功したが、冒険者達の元まで戻されてしまった。
「ぎゃあっ…!」
それと同時に、聞こえてきたのは笛を吹いていた冒険者の悲鳴。ハッと見ると、ラミアの一匹がそいつを地面に叩きつけ笛を奪い取っていた。
「待たせたねぇ、ラミアの皆! これでもう大丈夫!」
笛をバキっと折りながら、そのラミアは仲間に呼びかける。身体が自由になった彼女達は一斉に私達に襲い掛かってきた。
「「「「ぐええっ…」」」」
あっという間に冒険者パーティーは絞め殺され全滅。残るは私だけになってしまった。頼みの綱の笛が壊された今、圧倒的不利だ…。
しかし何故だ…? 何故あのラミアだけ音楽鳴り響く中を動けた?せめてその謎を解き明かすまでは死ぬことはできない…!
「くっ…こいつ強い…!」
「ちょこまかと…!」
私の動きに翻弄され、苛立つラミア達。と―。
「私に任せて! さあ、こい!」
しめた。さっきの、音楽の中動けていたラミアだ。こいつだけは仕留めてやろう。攻撃を躱し、ナイフをその胸に…!
「ほいっと!」
な…!? ラミアの上半身が消えた…だと…!?
「こっちよこっち」
その呼び声に誘われ、視線を真下に移す。そこには…蛇の胴体に引っ込み手を振るラミア(?)がいた。
「これで終わり!」
唖然とする私に、ラミアもどきから幾本もの触手が伸びてくる。その触手の形状、見覚えがある。
「お前…上位ミミックか!」
「せいかーい! いい出来でしょこの尾っぽ」
私を縛り上げながら、自らが入った蛇の尾…もとい蛇の尾型の箱?を動かすミミック。まさか…ミミックが箱以外に、しかも魔物に擬態するとは…!
暗めのダンジョン内ということもあるだろうが、ぱっと見では周りのラミア達と違いが良く分からないほど精巧にできている。恐らく、ラミアの抜け殻を使っているのだろう。
尾と身体の接続部も、ラミア達がつけている腰布で隠されている。どれがラミアでどれがミミックはの見分けなぞつかない。恐るべきミミック達だ…。
しまった…縛られた拍子に耳に嵌めていた魔法通信機の受信機が…!
「スネーク…! スネーク…!? スネエエエエエク…!」
相棒の悲痛な呼びかけが聞こえてくるが、もう答えられない。 再会は復活魔法陣でとなるだろう。
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