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顧客リスト№2 『スライムのぼよんぼよんダンジョン』

人間側 ある冒険者パーティーの探検録

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「よーし、今日はここで稼ぐぞー!」

「おー!」

リーダーの掛け声で、私達はダンジョンに足を踏み入れる。ここは『スライムのぼよんぼよんダンジョン』。なんとも可愛らしい名前だが、内部は余すことなくスライム状の物質で覆われ、結構足をとられる。

ただ、それと、ところどころにあるトラップにさえ気を付けてしまえば基本的に楽なダンジョン。なにせ、ここの魔物は…

「出たよ!小スライムと大スライムだ!」

「ようし、一気に倒しちゃおう! あ、壊さないようにね!」

そう、スライムだけなのである。ぼよんぼよんと身体を震わし迫ってくる彼らの基本戦法は基本体当たりのみ。見つけたら後は簡単。ある程度ダメージを与え…。

「よいしょ!」
ヌプリ
「お!当たり!レアなネックレス入ってた!」

動きが鈍ったところで、回復魔法や状態異常無効の魔法とかを手にかけスライムの中に突っ込む。ここのダンジョンは宝箱が無い代わりにスライム達が宝物を隠し持っているからである。

だからスライムを弱らせる時も注意が必要。強い一撃や爆発魔術などを使ってしまうと中の宝物も壊れてしまうので、慎重に。結構手間ではあるが、戦果は上々。あっという間にバッグは埋まり始めた。


「そろそろ帰るー?」

「まだ!これならもうちょい稼げるし!」

調子に乗って、私達は更に奥地へと進む。と、中々に大きなスライムを見つけた。

「あれは良いもの持ってそう!」

「いくよ皆!」

一攫千金を狙い、総攻撃を仕掛ける。あくまでスライムを倒しきらないように、柔らかな体を崩さないように慎重に…!

「弱ったかな…?」

「ふっふー!じゃあ肝心のお宝を…」

パーティーの1人がスライムの中にヌプリと手を入れ、探る。だが、首を傾げた。

「んー?なんだこれ?」

「宝物ないの?」

「いや、なんか変なのが…」

その子がそう呟いた時だった。


ニュルルルッ!

「えっ!? きゃあっ!」

突然、スライムの体の中から何本もの触手が伸びる。あっという間に手を入れていた子は絡めとられ、ズポンとスライムの中に引きこまれた。

「なにこれ!?」

「助けなきゃ!」

急ぎスライムを倒そうとするが、下手をすれば中に連れ込まれた子を傷つけてしまう。どう攻撃すべきか考えあぐねているうちに…。

ニュルルッ!
ニュルルルン!

またも触手は伸び、私達は次々と捕まってしまう。スライムには体当たりしかないと思ってたし、そもそも弱っているからと安心して近づきすぎた。

「危なっ…!」

間一髪、戦士はいち早く反応し身を躱そうとするが…。

ぼよんっ
「わっ!床が…!!」

柔らかな床に足を取られ、ぐらりと体勢を崩してしまう。その隙に触手は伸び、一人残らずズポンズポンとスライムの中に連れ込まれ…。

「「「ゴボッ…」」」


全員仲良く、窒息死。目を覚ますと、ダンジョン前の復活魔法陣の上。当然アイテムは全ロス、服もスライムでぐちょぐちょに。

「ゲホッ…なんだったのあれ…」

「わかんない…ミミックみたいな触手だった気が…うぇぇ…」

「あんなのがスライムの中に混じっているなら迂闊に倒せないじゃん…!もー…!」

稼ぎ場だと思っていたダンジョンから手痛い反撃。今後暫くはここに入らない―。そう私達は心に決めたのだった。
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